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不妊治療 検査や治療の流れを知ろう

不妊治療 検査や治療の流れを知ろう

目次

女性の医療シリーズ(2)

「女性の医療シリーズ」2回目は「不妊治療」についてお伝えします。不妊の原因は女性に限ったものではありません。しかし、治療のゴールとなる妊娠・出産は女性にしかできないものです。カップルが理解・協力していくための情報をお届けします。

(編集=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)

はじめに

「不妊症かも…」と悩みながら受診を迷う方に

不妊治療とは、妊娠を希望しているにもかかわらずなかなか赤ちゃんができないカップルに子どもが授かるよう行う治療です。昨年4月に不妊治療の保険適用が拡大されたことは大きなニュースとして取り上げられました。

不妊治療についてある程度ご存じの方がおられる一方、不妊症かもしれないと悩みながらも、検査や治療について分からないことが多いため、不妊治療に対して不安を感じ、なかなか受診に踏み切れない人もいらっしゃるかもしれません。

今回は不妊治療を行う際に必要な検査や治療の流れについて解説します。

不妊症とは

1年以上妊娠しない場合に診断

図1 妊娠の様子

妊娠とは、月に1度卵巣から排卵された卵子が卵管の中で精子と出合い、受精卵(胚)となって子宮内に着床することです(図1)。この過程のどこかに異常があると妊娠は成立せず、不妊症となる可能性があります。

不妊症は、特に病気のない健康な男女が妊娠を希望し、避妊をせず夫婦生活(性交)を営んで1年以上妊娠しない場合に診断されます。ただ、女性の年齢が35歳以上の場合には妊娠しない期間が1年未満でも、より早期に検査と治療を開始した方がよいと考えられています。

また、女性では無月経や月経不順などの症状がある人や子宮内膜症と診断されたことがある人、男性ではうまく射精できないなどの症状がある場合には、早めに産婦人科や泌尿器科を受診することが勧められています。不妊症の診断は決して珍しいことではなく、日本では約5.5組に1組の夫婦が不妊治療を受けたことがあるという報告があります。

不妊症の原因

協力して男女ともに検査を

女性では子宮、卵巣、卵管、あるいは免疫系などに、男性では精巣、精子の通り道、性機能などに何らかの異常があると自然妊娠に至ることが難しい場合があります。不妊症は、多くの因子が絡み合っており、カップルのどちらにも原因があるケースがあります。検査をしても原因がはっきりしないこともありますが、協力して男女ともに検査を進めていくことが大切です。

不妊症の検査は、男女それぞれ不妊に関わる問診を行った上で、女性では血液検査、超音波検査、子宮卵管造影検査などを実施。排卵がうまくいっているかどうか、精子や卵子がうまく卵管を通過できるかどうか、着床する子宮の環境はどうかなどを調べます。

男性は精液検査で精子の数、運動率や奇形率を評価し、必要に応じて泌尿器科での精査を行います。これらの検査の結果を踏まえて、治療方針を決定します。

不妊治療

検査の結果で治療法を選択

図2 不妊治療の流れ

不妊治療は①一般不妊治療(タイミング法、人工授精)と②生殖補助医療(体外受精・胚移植、顕微授精など)の2つに大きく分かれます。

通常は不妊症検査を行ったのちタイミング法を開始し、人工授精、生殖補助医療とステップアップします。検査の結果によっては、初めから人工授精や生殖補助医療をお勧めする場合もあります(図2)。

また、治療の過程で子宮鏡や腹腔鏡などによるさまざまな手術療法が必要となることもあります。

①一般不妊治療

タイミング法は、排卵日を超音波検査や内分泌検査により予想した上で性交のタイミングを指導する方法です。

1周期(生理開始から次の生理の開始前まで)当たりの妊娠率は妊孕能(にんようのう・妊娠する力)が正常な女性で17~20%、不妊症の女性では0~5%とされます。タイミング法によって、約90%が6周期以内に妊娠するといわれています。タイミング法で妊娠が見られない場合、5~6周期をめどにステップアップを検討します。

人工授精は、タイミング法でなかなか妊娠しない場合や運動精子が少ない場合などに行う方法です。採取した精液を遠心分離機にかけ、運動性の高い精子を回収して子宮内に注入します。1周期あたりの妊娠率は40歳未満では5~10%、40歳以上では3~5%です。

いずれの治療も排卵が適切に起きていない場合は排卵誘発剤や黄体ホルモン製剤などを併用します。

②生殖補助医療

現在の日本では新生児11.6人に1人が生殖補助医療で誕生しています。

体外受精は、排卵誘発剤で卵胞をたくさん発育させた後に採卵し、回収した卵子と採取した精子を体外で受精させる方法です。小さな皿のような容器内で卵子に運動精子を直接ふりかけて受精させる方法と、運動精子が極端に少ない場合などに顕微鏡下に細いガラス管を用いて1つの精子を卵子内に注入する顕微授精という方法があります。

体外受精で得られた受精卵は後日子宮内の適切な場所に戻します(胚移植)。妊娠率は年齢にもよりますが、一般不妊治療より高くなります。しかし、加齢による卵子の質の低下によって、体外受精や顕微授精を行っても必ず妊娠できるというわけではありません。

[MEMO]費用負担の軽減図る保険適用

2022年4月から人工授精などの一般不妊治療や体外受精・顕微授精などの生殖補助医療について保険が適用されるようになりました。

これにより、①治療費が3割負担で済む②高額療養費制度(※)が利用できる③手術給付金がある民間の医療保険で給付金の対象になる場合がある―ことから、費用負担が軽減されたといわれています。

一方で、それでも15~20万円程度の費用はかかるため、これまでの不妊治療費に対する公的助成がなくなったこと、保険適用外の診療と混合診療ができないことから、以前と比べて逆に経済的負担が増えるケースもあるようです。

生殖補助医療については不妊治療開始時が43歳未満と年齢制限や回数の制限もありますので、詳しくは産婦人科の医療機関にご相談ください。

※保険診療で払った治療費が、所得や年齢により決まった1カ月の上限額を超えた場合に、その超えた差額分が支給される制度

おわりに

不妊治療専門の医療機関の受診を

不妊症は、家族や友人など親しい間柄の人にもなかなか相談しづらく、検査や治療を受けた方がよいのか迷ったり悩んだりするかもしれません。

まずはカップルで相談し、不妊治療専門の医療機関を受診することをお勧めします。

執筆者

熊本大学大学院生命科学研究部 産科婦人科学講座 医員 中村 美和さん

熊本大学大学院生命科学研究部 産科婦人科学講座 医員 中村 美和さん

・日本産科婦人科学会専門医

次回予告

1/26号では、「脳梗塞」 についてお伝えします

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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この記事を書いた人

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