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脳梗塞は速やかな受診・治療が大切

脳梗塞は速やかな受診・治療が大切

脳梗塞は「急に起きる」「後遺症が残る」という印象があるのではないでしょうか。どうして起きるのか、発症したらどうすればいいのか、治療や予防法などについてお伝えします。

(編集=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)

目次

はじめに

脳卒中の6~7割占める脳梗塞

脳の血管が急に詰まったり破れたりすることによって、神経症状が起こる病気を「脳卒中」と言います。

脳の表面の太い血管が破れて脳の周りに血液が広がるのが「くも膜下出血」、脳内部の細い血管が破れて脳の内部に血の塊ができるのが「脳(内)出血」です。これに対して、血管が詰まって脳の一部が壊死してしまう病気が「脳梗塞」です。

かつて日本では脳出血の方が多かったのですが、血圧治療の進歩や食生活の欧米化によって、現在では脳梗塞が脳卒中の6〜7割を占めるようになりました。

脳梗塞の分類

大きく分けて3タイプ 心臓疾患か動脈硬化が原因

脳梗塞には、大きく分けて3つのタイプがあります。

一つ目は、心房細動という不整脈によって心臓にできた血の塊が、脳血管に詰まって重とくな脳梗塞を起こす「心原性」というタイプ。二つ目は、首や脳の太い血管の動脈硬化により内部にアテローム(脂肪成分などの塊)ができて血管が狭くなり、そこに血栓ができて詰まったり、血栓が飛んで下流の血管が詰まったりする「アテローム血栓性」というタイプ。

三つ目は、脳内の細い血管が動脈硬化によって詰まる「ラクナ」というタイプです。

つまり脳梗塞のほとんどは、心臓か動脈硬化のどちらかが原因ということになります。

特徴的な症状

急に起きる「片側のまひ」 言葉や意識の障害も

半身のまひ、言葉の障害、意識の障害などで急に発症することが多く、そのほか片方の目が見えにくくなる、片側の視野が欠ける、といったものもあります。

まひは基本的に体の片側に起こり、両手とか両足ということはありません。急に片手に力が入りにくくなった、酔っぱらったようにろれつが回らなくなった、などという時は要注意です。

急に良くなったり悪くなったりすることもあります。症状が出て数分間で完全に良くなってしまうものを「一過性脳虚血発作」と呼びますが、これは脳梗塞が起こりかけている、いわば崖っぷちともいうべき危険な兆候です。

脳梗塞かな?と思ったら

救急車を呼ぶか専門病院を受診

「症状が軽いから」「良くなったから」といって様子を見ていると、治療の時期を逃してしまい重い後遺症が残ることがあります。「もしかしたら」と思ったら、すぐに救急車を呼ぶか、急いで脳卒中専門病院を受診するようにしましょう。発症した本人は症状に気づかずに、周りの人が気づくこともあります。

たとえ症状が自然に良くなる「一過性脳虚血発作」であっても、引き続き本物の脳梗塞を発症することが多いため、油断はできません。必ず専門病院を受診してください。

脳卒中の専門病院は、日本脳卒中学会のホームページや熊本県の「くまもと医療ナビ」から調べることができます。日頃からどこに病院があるか確認しておくとよいでしょう。

急性期の治療

発症後なるべく早く治療を開始

以前は治らない病気だった脳梗塞ですが、現在では早く適切な治療を受けることにより、ある程度は後遺症を軽くすることができるようになりました。

主な緊急治療としては、tPAという点滴薬で血栓を溶かす「血栓溶解療法」と、カテーテルというストローのような細い管を挿入し脳血管に進めて、詰まった血栓を取り出す「血栓回収療法」があります。これらの治療を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要がありますが、とにかく大切なのは時間です。発症してからの時間が早いほど、治療できる可能性や、後遺症が軽くなる可能性が高いのです。

緊急治療だけでなく、その後の点滴治療、リハビリテーション、栄養管理や合併症対策も大切です。脳卒中専門病院では、看護師、リハビリテーション療法士、放射線技師、臨床検査技師、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなど、多くの職種が一丸となって治療に取り組んでいます。

予防するには

重要な禁煙、血圧管理

脳梗塞の発症には、加齢や遺伝(体質)的な側面も影響しますが、食生活や運動習慣などの生活習慣が大きく関わっています。脳卒中予防十カ条(図1)を参考にして、しっかり脳梗塞を予防しましょう。中でも禁煙と血圧管理は特に重要です。

また、心房細動という不整脈が脳梗塞の原因になることは、あまり知られていないかもしれません。自分の脈が乱れていないか、時々手首(親指側)を軽く押さえて、調べてみましょう(図2)。最近では、不整脈を検知できる腕時計(スマートウオッチ)や血圧計もありますので、活用してください。

脳卒中予防十カ条

MEMO

脳卒中・心臓病の各種相談に対応

熊本県では、行政と医療機関が協力して、脳卒中や心臓病の患者と家族を支援する取り組みを始めています。

2022年に熊本大学病院で脳卒中・心臓病等総合支援センター(通称:リリーフ・シェアくまもと)が始動し、「脳卒中・心臓病相談支援
窓口」が開設されました。

県内の主な医療機関にも同様の相談窓口が少しずつ設置され始めています。脳卒中や心臓病に関する生活や就労の困りごと、リハビリテーションに関する相談などに対応できるよう、準備が進められています。

熊本県 脳卒中・心臓病等総合支援センター(リリーフ・シェアくまもと)

熊本県 脳卒中・心臓病等総合支援...
熊本県 脳卒中・心臓病等総合支援センター 熊本県 脳卒中・心臓病等総合支援センターとは 医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、リハビリテーション専門職、薬剤師、管理栄養士、臨床心理士など多職種が連携・協力...

執筆者

熊本大学病院脳神経内科 特任教授 中島 誠さん

  • 日本脳卒中学会専門医・指導医
  • 日本神経学会専門医・指導医
  • 日本内科学会総合内科専門医

次回予告

2/23号では、「睡眠」 についてお伝えします

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

脳梗塞は速やかな受診・治療が大切

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この記事を書いた人

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