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【猫部長の業務報告⑦】Q太郎の白黒い過去

Q太郎

熊本県上天草市の離島・湯島で、約250匹の猫たちの健康管理に奔走する「湯島猫部」の部長・林愛子さんが、島猫にまつわるさまざまなエピソードをつづるブログです。

ライブカメラの前で、毎日のようにベンチに転がって爆睡しているぽっちゃり猫がいます。2021年生まれの雄猫「Q太郎」。父親の名前が「オバケ」だったのでこの名前がつきました。

みんなと仲良しで、穏やかな“ゆるキャラ”Q太郎ですが、以前はとんでもない問題児でした。父親がボス猫級の大きな猫だったこともあり、幼い頃から体格がよく、若干1歳にして島中で喧嘩を売って回っていました。

1歳の頃のQ太郎

人間にだって、思春期に悪さしてみたりイキってみたり、そんな時期はありますが、Q太郎の場合はちょっと違うタチの悪さがありました。

なぜか、白黒の猫ばかりを狙うのです。

普通、猫同士の喧嘩には、相手が縄張りを侵してきた、とか「理由」があって、睨み合い、威嚇から始まり、場合によっては取っ組み合いに発展する、というふうに「段階」もあります。

ところが、Q太郎の場合、白黒が視界に入った途端に走り出して追い回すのです。

白黒猫たちはいい迷惑です。いつもの場所で普段どおり、平和に過ごしていたら、いきなりでっかい茶白のやつが突進してくるのです。

一体、白黒に何の恨みがあるというのか。

Q太郎の父親オバケには、コテツという白黒の、宿敵のような存在がいました。

まさか、親の怨恨がQ太郎の血に流れているのだろうか…

何はともあれ、対策をしなければなりません。とはいえ、とりあえず去勢して攻撃性が収まることを期待する、くらいしかできません。

他の手術予定もあったので、とりあえず1カ月後にQ太郎の手術を入れることにしました。その間も、Q太郎は西から東へと「白黒狩り」の範囲を広げていきました。

執行猶予1カ月、おタマ没収が先か、東のボス級白黒猫にぶっ飛ばされるのが先か…。しかし1週間後、堪忍袋の緒が切れたのは、白黒猫たちのお世話をする人間たちでした。急遽、手術の予定を繰り上げることになりました。

幸い、その後Q太郎はすっかり落ち着き、白黒猫を追い回すことはなくなり、港には平和が戻りました。その代わりなのでしょうか、船着場近くに定住し、観光客からおやつをもらう、という新たな趣味を見つけ、ぽっちゃり愛され猫になりました。

Q太郎の父親は、最後まで人馴れすることはありませんでしたが、とても子煩悩なイクメンでした。Q太郎は、そんな父親の優しいところもしっかりと受け継ぎ、よく子猫たちの遊び相手になってくれます。

時々テンションが上がり、巨体で寝技に持ち込むので、「にぃに、重たいよー!!」と子猫にピーピー泣かれます。「あ! ごめんね!」と気まずい顔をして身を起こし、すかさず飛んでくる子猫のねこパンチを甘んじて顔面に受けているQ太郎を見ていると、こんなにも変わるもんだなぁと感慨深く、嬉しい気持ちになります。

Qちゃん、愛されるって、幸せだね。

時々調子に乗りすぎて先輩からお説教されることも

はやし・あいこ=1978年生まれ、熊本市出身。2019~2024年に湯島地区の地域おこし協力隊として活動し、湯島に移住。「人と猫との共生」を目指して、島内外のメンバーと「湯島猫部」を立ち上げ、猫の名簿作成、避妊・去勢やワクチン接種等の健康管理などさまざまな取り組みを続けている。

インスタグラム@cat_island_yushima.nekobu

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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