【猫部長の業務報告⑧】湯島のケビン・コスナー

熊本県上天草市の離島・湯島で、約250匹の猫たちの健康管理に奔走する「湯島猫部」の部長・林愛子さんが、島猫にまつわるさまざまなエピソードをつづるブログです。
東岸の湯島第二漁港に面した部長宅には、専属の警備担当兼ボディガードが常駐しています。
2021年春生まれの黒白の雄猫「レン」。母親は左右の目の色が異なるオッドアイの白猫「キティ」。3兄妹で、他の2匹はオッドアイとブルーアイの白猫で、母親譲りの神秘的な美しさを放つ中、レンは唯一平凡な見た目でした。


親兄弟は、オッドアイというその見た目の珍しさから、よくメディアにも取り上げられ話題になるのですが、私は実はレンこそ“類いまれな猫”だと思っています。
レンは、縄張り意識がとても強く、他エリアの猫が侵入してくると、激しく威嚇して追い立てるのですが、私が保護してきた猫は無条件で受け入れます。飼い主への絶対的な忠誠心は、ほぼ「犬」です。
さらにレンは食べることが大好きなのですが、知らない人の手からは決して食べようとしません。観光客の差し出すオヤツにわらわらと群がる他の猫たちを、警備員くらいの距離で見ています。こうなるともう「よく躾けられた番犬」のレベルです。
3年前、事情があって乳飲み子を引き取り育てていた時期があったのですが、レンは、自身がまだ1歳になったばかりでしたが、全力で子育てをサポートしてくれました。
私が子猫たちと散歩に出ると、まだ外の世界に戸惑う子猫たちを、「さぁ! にぃにの胸に飛び込んでおいで!」と言わんばかりに、文字通り両手を広げて出迎え、ボディガードのように同行してくれました。途中、急用が入った時、「レン、ちょっと見といて!」と言うと、写真のように瞬きもせずにじっと「見て」いました。(笑) あまりの律儀なその姿は、“忠犬”ならぬ“忠猫”と呼びたくなるものでした。


毎年、何かしらの事情を抱えた猫たちが集まってくる、難民キャンプ化している部長宅での警備は何かと気苦労も多いはずですが、文句も言わず、誇りを持って任務に就いているレン。つい最近も母猫とはぐれた子猫たちがやってきたのですが、ごはんやら薬やら持ってバタバタしながら「レンにひとこと言っとかないと!」と思っていたら、既に子猫たちの横でスタンバイして、私が口を開くのを制するように「分かってますよ。」と目配せをしてきました。
4歳になってすっかり大人になったレンが、映画「ボディガード」のケビン・コスナーに見えてきた今日この頃です。
はやし・あいこ=1978年生まれ、熊本市出身。2019~2024年に湯島地区の地域おこし協力隊として活動し、湯島に移住。「人と猫との共生」を目指して、島内外のメンバーと「湯島猫部」を立ち上げ、猫の名簿作成、避妊・去勢やワクチン接種等の健康管理などさまざまな取り組みを続けている。
インスタグラム@cat_island_yushima.nekobu