親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

10代から20代の思春期の若者たちを支援をする上で避けて通れないのが恋愛事情。

今どき多いのは、インターネットを通じた出会いです。好きなゲームを通じて他のプレーヤーと個人的にやり取りするようになったとか、アプリでつながった人とオンライン上で付き合い始めたとか…。
「ネットの出会いなんて危険だ」と思われるかもしれませんが、今の若者たちにとってはごくごく日常的なことになりつつあります。

心配になることはたくさんあります。

親や家庭に事情を抱えた若者たちは愛情に飢えていたり、自分を受け入れてくれる存在に極端に依存したりすることがあるからです。
出会ったばかりの相手と付き合い始めたかと思えばすぐに別れたり、よく知らない相手と深い関係になってしまう…なんてこともよくあります。

あまりに展開の早い若者たちの関係に、びっくりすることもあります。

その背景には、愛着障害が関わっている場合も多くあります。

愛着障害とは主たる養育者との適切な愛着関係が形成できなかったことによる障害といわれますが、その定義や考え方はさまざま。
一般的には、育つ過程で母親など一番近しい立場にある特定の人と1対1の愛着関係が結べなかったことによって、他人との信頼関係や精神的安定性に影響を及ぼすといわれています。

親や家庭に事情を抱えた若者の中には、さまざまな理由で育ての親から十分に愛情を感じることができなかった子や、虐待など直接的に被害を受けて育った子たちがいます。

そんな若者の中には、他の人との接し方や距離の取り方がつかめなかったり、なかなか信頼できなかったりと、安定した人間関係を築くのがすごく難しいと感じるケースが少なくありません。

イラスト/さいき ゆみ

そのため、他人からの愛情を信じられず不安定になったり、逆に一度愛情表現をされると過度に依存してしまったり、体の関係でしか安心感を保つことができなかったり…。1対1の関係の中で、自分を大切にすること、そして相手を大切にすることがどういうことか分からないまま、自身の恋愛感情に振り回されてしまうと、若者たちはさらに傷つき、自分を大切にできなくなっていきます。

若者たちから恋愛相談を受けるとき、支援者はどうしても関わる若者たちに傷ついてほしくないと願うあまり、「取り返しのつかないことになる前にどうにかしなきゃ」と考えがちです。

でも大事なのは、彼らの感情を軽んじず、同じ目線で向き合うこと。

本来、人を好きになること、誰かと一緒にいたいと願うことはすてきなことですよね。
確かに親や家庭とさまざまな事情を抱えた若者たちは、人間関係や恋愛関係の中でたくさんの失敗や傷を重ねることがあります。
若者たちが大事だからこそ、いい恋愛をして、幸せになってほしいと願うのは当たり前のことです。

でも私たち大人がそんな若者たちの一つ一つの感情を否定せず、どう寄り添うか―。
結局はそれが一番「自分と相手を大切にする」というメッセージを伝える近道だと思うのです。


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/