親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

先日、親を頼れない若者たちの生の声を知ってもらおうと、「若者の声を聴く」というイベントを開催しました。児童養護施設などを卒業した県内外の若者3人に、「親を頼れなくて苦労したこと」や「大人に伝えたいこと」などについて座談会形式で思いを語ってもらいました。

印象的だったのは「自立ってなんだ?」という話。「自立って、そんなシンプルな定義では片付けられないよね」という話から、「自分で決めることなんじゃないか」とか「自分を保つ方法を人とのつながりの中で見つけていくこと」とか「SOSを出す力」まで、いろいろな声が出てきました。

ほかにも、これまで周りに相談したり気持ちを吐き出したりしたときに、話を聞いてもらえなかった、または否定された。
「○○に比べたらまだましだよ」としんどさを勝手に比較されてきつい思いをした。
このようなことを繰り返す中で、だんだん話すことを諦めていってしまうという話もありました。

「まずはジャッジせずに話を聞いてほしい」「大人は嘘をつかないで」「おもろい大人がいい」「子どもの声が大人に止められてしまってはいけないと思う」など、若者たちの率直な意見がてんこ盛りでした。

イラスト/さいき ゆみ

イラスト/さいき ゆみ

当日、作文で自分の思いを語ってくれた一人の若者の発表を紹介します。
(本人に公開許可をもらっています)

私は、2歳~18歳まで、児童養護施設で生活していました。
施設を出て約1年と数カ月が過ぎましたが、この1年は感じることの多いとても濃い1年だったと思います。この1年で特に私が感じたことは、常に私のことを想い励ましてくださり、心を開いて何でも話せる大人が近くに居ることのありがたさです。

施設で生活している以上、職員と子どもという関係から信頼できる大人が誰なのか、私のことを理解してくれる大人は居るのだろうかという疑問から、なかなか施設の職員を頼れずにいました。子どもの意見はどうせ通らない、私が発言することで職員を困らせたり逆に私が怒られたりするなら言わないでおこうと自分の本音の気持ちを留めてきたことも多くありました。また、自分の夢や目標を諦めざるを得ない場面も多くありました。

このような経験から私は、大人と子どもという立場から大人にすべての権限があってはならないと強く感じています。子どもは1人1人思っていることも違えばそれぞれ描く夢も違うと思います。私はその1人1人の思い、夢すべてが尊重されるべきだと思います。それを大人の力によって止められてしまったり発言する場を失ってしまったりする子どもが居るのであれば、それはおかしいと思います。私が現在こうやって自分の気持ちが発言できるのは、今、近くで見守り支えて下さる方々や、私のことを遠くから励まし応援して下さる方々のおかげです。

私自身、卒園してすぐに知らない土地で生活することはとても寂しく、不安なことばかりでした。料理や洗濯、携帯、仕事、何もかもが新しいことばかりで、本当にきつく、大変だったちょうど1年前が昨日のことのように感じています。施設に居た時に、当たり前だと感じていたことが実際離れてみれば当たり前じゃなかったこと。周りにたくさんの仲間がいたことのありがたさを実感しました。どんな場面でも手を差し伸べ励まし寄り添ってくださる大人が今近くにいることで、この1年私は救われることが多く、周りの方々へのありがたさも実感しています。

特に私が落ちこんでいる時、困っている時に、とある大人の方がかけてくださった「あなたは一人の人間として愛される価値があるんだよ」という言葉に、自分自身ものすごく背中を押され、私を自信へと導いてくださっている気がします。言葉1つ1つには人を動かす大きな力があると実感しています。

だから私は強く言いたいことがあります。それは子どもの言葉一つ一つに向き合い寄り添ってほしいということです。うまく励まそうとしたりやさしい言葉をかけてあげたりしようなんて思わず、大人のありのままの気持ち、大人の意見を尊重しつつ、子どもの気持ちをまず理解し、尊重してあげてください。それが今、私が一番伝えたい思いです。

今回このような場面を作っていただき、自分の気持ちを伝えることができていますが、当事者の声、子どもの声を聴く場面は、もっと増やしていくべきだと思います。私自身も施設についてあまり知らない人や、今子どもと関わる仕事をしている方々へ、当事者として自分の体験からの思いを伝えていこうと思ってます。児童養護施設で生活している子どもへも、今やっておいた方が助かることや同じ施設で育った先輩として、良いアドバイスやメッセージを発信できればなと思います。私自身まだまだきつく辛いことも多くあり、自分自身の本来の考えから気持ちがそれてしまったり、自分自身を責めてしまったりすることも多くあります。そんな時は、今、支えてくださっている多くの方々へ感謝の気持ちを持ち頼りながら解決していこうと思います。また、自分の目標や夢を強く持ち堂々と胸を張れるよう頑張っていきます。

イベント後は、きつい気持ちも含め、ありのままの本音トークをしてくれた若者たちに感謝でいっぱいになりました。大人も子どもも、明日が少しでもベターになっていくために、もっとたくさん語り合っていきたいなぁ。


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/