先日、数十年ぶりにあるシンガー・ソングライターのライブに出かけました。華やかなステージは、数十年前の公演とは全く趣の違った迫力のある演出でした。ただ、そこでふと感じた違和感。それは歌やパフォーマンスが、われわれ世代の人間にとって何か限界を感じてしまう、悲痛な叫びのようにも聴こえたことでした。

最近、吉田拓郎(76)の年内芸能活動終了や井上陽水(73)の個人事務所社長の辞任、加山雄三(85)のライブ活動の引退など、一つの時代を作り上げてきたミュージシャンが、次々と自らその引き際を語り出しています。「歌えなくなってやめるより、歌えるうちにやめたい」(加山雄三)という話は、たくさんの曲を作り、歌い、パフォーマンスをしてきたアーティストにとって、最後の選択として避けることができないことを物語っています。テレビCMで矢沢永吉(72)が語っている「年を取るってことは細胞が老けることであって、魂が老けることじゃない」との言葉。音楽と共に生きていくことの難しさと大切さをこの言葉から学び、勇気づけられたような気がします。

そんな中、11年ぶりにアルバムを発表したのが山下達郎(69)。彼が音声だけとはいえ、いろいろなメディアで音楽に対する思いを語る中に、冒頭、私が感じた違和感の答えのような言葉を残していました。「自分の昔の価値観や経験則にこだわり過ぎるとたちまち時代に取り残される。それを避けるためには必死に自己変革や学習を続けるしかないのです」。今回はこの山下達郎のニューアルバムから一曲を紹介します。

イラスト・松田アツコ

※今回紹介したレコードは7月19日(火)放送のFM791「昭和名曲堂コモエスタ辛島町」(16時~18時55分)で放送する予定です。

しまだ・のぶあき/1951年生まれ、熊本市出身。東京のデザイン会社でコピーライターとして社会人デビュー。帰熊後、広告代理店でコピーライター&プランナーとして活躍。現在はFM791「昭和名曲堂コモエスタ辛島町」(火曜・16時~18時55分)、同「ミッドナイトコモエスタ」(水曜・0時~1時=全国コミュニティFM番組)、RKKラジオ「昭和歌謡大作戦」(日曜・20時~20時55分)の選曲家、パーソナリティーを務め、幅広い年齢層に昭和の曲を届けている。