作品はいったい誰のもの? 封印を解かれたヒット曲

先日、熊本在住の歌手・坂本スミ子さんに、番組に出演していただいた時の話です。元々、日本のラテン歌手の草分けとして、紅白歌合戦やTV番組等で活躍していた方なのですが、ある年代以上の人には、「夢で逢いましょう」や「たそがれの御堂筋」などのヒット曲の方がおなじみかもしれません。

番組では、ラテン歌手としてのおスミさんの楽曲をメインに紹介したのですが、そこで「歌謡曲を歌い出したころ、ラテン歌手であるという気持ちが先行して、あまり歌謡曲を歌うことは好きではなかった」というお話が出てきました。

私がその話を聞いた時に思い出したのが、歌手・大橋純子さんのインタビューでした。今回ご紹介する彼女のヒット曲「たそがれマイ・ラブ」は歌謡路線の曲。しかし彼女も元々、歌謡曲の歌手ではないというプライドが邪魔していたのでしょう。一時期、ライブなどでは、この曲を封印していた時期があったそうです。

ところがある時期から、この曲を再びステージで歌い始めたのです。それはなぜだったのか? あるインタビューで「ヒット曲は自分のものだと思っていたけれど、聴く人の耳に届いた時に、それはもう自分のものではなく、その曲を愛してくれている人たちのものになっている」と言っていたのです。歌に限らずいろいろな作品も、作り手の手を離れた時から、それはもう一人歩きを始めていると感じた瞬間でした。今年、食道がんと診断され活動を休止している彼女の、一日も早い復帰を祈っています。

※今回紹介したレコードは10月23日(火)放送のFM791「昭和名曲堂コモエスタ辛島町」(16時~18時55分)で放送する予定です。

しまだ・のぶあき/1951年生まれ、熊本市出身。東京のデザイン会社でコピーライターとして社会人デビュー。帰熊後、広告代理店でコピーライター&プランナーとして活躍。現在はFM791「昭和名曲堂コモエスタ辛島町」(火曜・16時~18時55分)、RKKラジオ「昭和歌謡大作戦」(日曜・20時~20時55分)の選曲家、パーソナリティーを務め、幅広い年齢層に昭和の曲を届けている。