夜中にジャムを煮る

著者:平松洋子

たしかタイトルに引かれて買ってしまった記憶がある。「夜中にジャムを煮る」、なんてすてきな言葉だろう。少しの後ろめたさがありながらも、ニコニコして丁寧に煮込む姿が浮かんでくるようだ。絶対にいい本に違いない。

エッセイスト平松洋子が食に対する異常なまでの情熱をリズミカルにつづった本書は、私の期待を軽々と超える。ふくよかに描き出される多種多様な料理。特に韓国旅行での食事の描写が好きだ。食欲を刺激されるというより、文章が胃袋を満たしていき、なんだか満腹になったような幸福な錯覚を覚えるほど。

そんな著者の食べ物への愛情は、自らの料理へも向けられる。電子レンジを捨てる、せいろで蒸す、七輪を使う…。求めるおいしさのためならどんな手間も惜しまない。料理が苦手で、しかも面倒くさがりの私にとっては、こういう姿勢に憧れはするが、まねるのはかなり厳しい。しかし毎日食べるものに少しは真面目に向き合いたいと思わせてくれる一冊だ。

価格 737円 文庫判 新潮社

紹介するのは

蔦屋書店熊本三年坂
榮 詳平さん

映画と音楽と、楽しい酒のために働く書店員