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熊本の葬儀のしきたり

あなたはどれだけ知っている? くまもとの葬儀のしきたり

葬儀や法事には全国各地でさまざまな風習・しきたりなどが存在し、熊本県にも独特の風習があるようです。そこで、県内各地に受け継がれている、昔ながらの葬儀のしきたりを紹介します。故人や遺族への心遣いを感じられるような風習が多いので、ぜひ楽しく学んでください。

目次

これ何? 教えて! くまもとの葬儀の風習 Q&A

葬儀は宗教・宗派によってさまざまですが、日本で最も多い仏教式について、熊本ならではの風習を紹介。その意味や由来などを県内の事情に詳しい専門家に聞きました。

「故人を大切にする思い」受け継ぐ

熊本には昔から、組内(くみうち)や葬式組と呼ばれる相互扶助組織がありました。これは、葬祭時に儀式がスムーズに進むよう近隣住民で手伝うものです。近年は葬儀を行う場所も自宅から斎場などへと移り変わり、組内が葬儀を手伝うケースは減ってきていますが、今でも農村部を中心に残っている慣習です。葬送儀礼を地域で共有しよう、地域の文化を大切にしようと考える県民性の表れともいえるでしょう。

離れた地域から移住してきた人は、その土地のしきたりに戸惑うことがあるかもしれません。しかし、いずれも故人を大切にする思いから受け継がれているものです。「郷に入っては郷に従え」で、その地域の風習を尊重し、それに倣うのがよいでしょう。

教えてくれたのは

葉山稔洋さん
熊本県葬祭事業協同組合 理事長
葉山稔洋さん

葉山葬祭(人吉市)代表。葬祭ディレクター1級、終活カウンセラー

Q 「目覚(めさ)まし」と書いて通夜にお菓子やお酒を持参するって本当?

「目覚(めさ)まし」と書いて通夜にお菓子やお酒を持参するって本当?
A 今は食べ物からお金に変わってきています

県内に広く浸透している風習として、通夜の「目覚まし」があります。現在はお金を包むのが一般的ですが、昔はお酒や食べ物などに「目覚まし」と書いて持参していました。地域によっては今もその形を受け継いでいる所があるようです。遺族が一晩中お線香を絶やさず夜を過ごす中で、何か食べて目を覚ましていてほしいという差し入れの意味や、故人に再び目を覚ましてほしいと願う気持ちを表しています。組内が葬儀を手伝う地域では、通夜に皆で食べられる、すしやサンドイッチ、缶詰、菓子類、飲み物を持参する「夜伽(よとぎ)見舞い」の慣習もあります。

Q 熊本ではなぜ「友引」でも葬儀を行うの?

熊本ではなぜ「友引」でも葬儀を行うの?
A 浄土真宗の一般的な慣習によるものです

六曜の一つである「友引」は「あの世に友を引く」と連想させることから、葬儀は行わず、火葬場を定休日に設定している地域は少なくありません。しかし、熊本県内の火葬場はほぼ毎日稼働しており、友引でも葬儀を行うことが一般的です。それは、県内で最も信者数が多いのが浄土真宗で、六曜など「日の吉凶」を占うという考え方自体がないためです。

Q ある地域では出棺の時に男性がひつぎを担いで3度回す風習があると聞きました

ある地域では出棺の時に男性がひつぎを担いで3度回す風習があると聞きました
A あの世へ送る儀式で一部地区で残っています

自宅葬が多かった時代には、よくある光景でした。ひつぎを回すことで故人の方向感覚を狂わせ、魂が家に戻ってこないようにするためだと考えられています。葬儀が斎場などで行われるようになり見られなくなりましたが、上球磨地域では今も似たような風習が残っています。ひつぎを担いで回すのではなく、お坊さんの後ろに遺族が列をつくり、ひつぎの周りを3度回ります。現代式ですが、この世に未練なく旅立ってほしいと願う遺族の気持ちは同じです。

Q 昔、祖父から聞いた出棺時の「茶わん割り」の目的は何?

昔、祖父から聞いた出棺時の「茶わん割り」の目的は何?
A 魂が家に戻らぬよう愛用品を壊します

出棺の時、霊柩(れいきゅう)車にひつぎを乗せると同時に、故人が愛用していた茶わんを割る風習があります。これは、主に浄土真宗以外の宗派の葬儀で行われるものです。「あなたに出すご飯はありません」という意味を表し、故人の成仏を願って行われてきました。

Q 天草のある地域ではひつぎをチャーター船で運ぶって本当?

天草のある地域ではひつぎをチャーター船で運ぶって本当?
A 離島の御所浦に戻り葬儀を行うためです

離島である天草市御所浦町では、天草上島・下島の病院で亡くなった場合、ひつぎを病院に持参して納棺し、そのまま港へ向かいます。家族はチャーター船を呼んで、ご遺体と共に自宅に帰り葬儀を行います。この地域は葬儀の際も昔ながらの葬送行列の道具を使います。また、近所の人たちが葬儀を手伝い、公民館などで「たち飯(精進料理)」を作ります。四十九日(忌中)の間、喪家は精進料理だけを食べるなど昔ながらの葬儀のしきたりを守っています。

読者に聞いた地元の葬儀 あれこれ

(熊本市・4人の母)

45年ほど前の祖父のお通夜の時、親戚が祖父をふんどし一枚にして体を拭いていました。中学生だった私は、もし自分が死んだら親戚の前で裸にされるのかとショックでした。

(益城町・うまむすめ)

私の住む地域では、葬儀社での通夜の後は故人を自宅に連れて帰り、葬式には自宅から葬儀社に向かうそうです。そんな風習があるなんて知りませんでした。

(熊本市・みづみづ)

伯父の初盆で、墓地に盆ちょうちんをいくつも持ち寄っていたので、何をするのかと思ったら灯油をかけて着火。私の住む地区にはないことで、びっくりしました。

(玉名市・anue)

私の故郷は玉名市で、主人は天草出身です。数年前、主人の祖母の葬儀の最後に赤飯が振る舞われたので、とても驚きました。主人に聞いてみると、天草の風習なんだそうです。

教えて!「お盆」の正しい過ごし方

熊本市をはじめ県内の多くの地域では8月盆が主流です。8月13日から迎える「お盆」の正しい過ごし方をお坊さんに教えてもらいました。

生前の好物供え 思い出話に花を咲かせて

お盆の正式名称は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」です。お釈迦様の弟子である目連が、餓鬼道に落ちて苦しむ母親の魂を救うために授かった教えが、「(旧暦)7月15日に飲食を盆に盛り大勢の人を供養する」ものだったことから、現在のお盆の風習が始まったとされています。私は、檀家さんたちが分かりやすいよう「お盆は年に一度のあの世の休みで、この世に帰ってくる日。だから癒やしてあげましょう」と話しています。

ご先祖の霊が行き来する乗り物として、キュウリとナスを使い馬や牛に見立てて作る「精霊馬」と食事を盆棚や仏壇に供えます。お盆の間は、家族と同じ食事や、亡くなられた方の生前の好物などを供えるといいですね。お墓をきれいに掃除して供え物をするのも、地域のお祭りで盆踊りをするのも供養になります。故人との思い出を家族で話して懐かしんだり、ご先祖に思いをはせたり、そんな時間を過ごすことをお勧めします。

教えてくれたのは

小川大心さん
浄土宗 大宝山 來迎(らいこう)院(熊本市) 副住職
小川大心さん

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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この記事を書いた人

熊本市を中心に31万部戸別配布のフリーペーパー「くまにち すぱいす」がお届けする、熊本の暮らしに役立つ生活情報サイトです。

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