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良質な眠りで健康に

良質な眠りで健康に

一日の中で長い時間を占める睡眠。よく眠れたかどうかは日中の活動に影響し、心身の健康に関わってきます。3月18日の「春の睡眠の日」を前に、睡眠問題に詳しい熊本大学大学院の青石恵子教授に話を聞きました。

(取材・文=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)

目次

はじめに

5人に1人が睡眠に悩み

私たちは通常、日中に学んだり働いたりする活動をし、夜間に眠る生活をしています。職種や働き方によってそうでない場合もありますが、多くはその生活パターンで動いています。

その中で、睡眠に関して悩みがあるという人が、日本では約5人に1人いるといわれており、女性に多い傾向が見られます。

睡眠に関する課題は多様で個人差が大きく、子ども、成人、高齢者と年齢によっても異なります。今回は成人の睡眠について、健康を維持・増進させるための情報をお届けします。

睡眠の役割

適切な「眠り」が心身を整える

睡眠はどんな役割を果たしているのでしょうか。体を休めるのはもちろん、嫌なことも「一晩眠れば忘れられる」と言う人もいます。それは一体どうしてでしょう。

睡眠は、(1)自律神経やホルモンバランスの調整(2)記憶の整理、定着(3)免疫機能の増強(4)脳の老廃物の除去ーなどの機能を果たしています。

適切な睡眠が成長やアンチエイジング、気持ちの安定に関わったり、学習効果を高めたりするのです。 逆に、睡眠の質や量に問題がある状態が続くと、うつ病などの精神疾患、糖尿病などの生活習慣病、感染症、認知症などの発症リスクが高まるといわれています。

睡眠障害とは

生活に支障を来す原因が睡眠に

「元気に活動する」生活のベースとなる睡眠。それが十分に得られていないという自覚があり、日常生活に支障・影響が出ている状態を「睡眠障害」といいます。

睡眠障害は総称で、その中にはいろいろなものが含まれます。一般的によく聞くのは「不眠症」ですが、ほかにも睡眠時無呼吸症候群などの「睡眠関連呼吸障害」、睡眠を取る時間が一定でないことなどから睡眠のリズムが崩れる「概日リズム睡眠・覚醒障害」などがあります。また、眠れないだけでなく、眠り過ぎてしまう「中軸性過眠症」も睡眠障害の一つです。

「元気に活動する」生活のベースとなる睡眠。それが十分に得られていないという自覚があり、日常生活に支障・影響が出ている状態を「睡眠障害」といいます。

「不眠症」は4タイプ

睡眠障害の中で最も訴えが多いのが「不眠症」です。不眠症には以下のようなタイプがあります。

入眠障害

布団に入ってもなかなか寝付けない、眠るまで1時間以上かかる

中途覚醒

眠っても夜中に目が覚め、その後なかなか寝付けない

早朝覚醒

予定した時刻よりかなり早く目覚めてしまい、その後は眠れない

熟眠障害

睡眠時間は十分なはずなのに、ぐっすり眠った満足感(熟睡感)がない

不眠症があると、うつ病、高血圧を発症するリスクが約2倍に、2型糖尿病発症のリスクは2~3倍になるという調査結果もあります。

不眠症には、身体的原因、生理学的原因、心理学的原因、精神医学的原因、薬理学的原因といった要因が関わっていると考えられます(図)。一つの大きな原因がある場合や、いくつかの要因が少しずつ重なっている場合もあります。

不眠症には、身体的原因、生理学的原因、心理学的原因、精神医学的原因、薬理学的原因といった要因が関わっていると考えられます

良い眠りとは

入眠直後の深い眠りが大事

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023(案)」には、成人に対し「適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」と記載されています。また、午後10時から午前2時までは眠っておかなければと、眠る時間帯にこだわる傾向が見受けられますが、大事なのは、入眠直後にいかに深い睡眠を取れているかです。
朝、気持ちよく起きられていれば、良い睡眠が取れていると考えていいでしょう。しかし、日常的に朝起きられなかったり、日中に強い眠気が襲ったりする場合は、睡眠に問題があるかもしれません。今は睡眠の質を測定する無料のアプリもあります。このようなツールを利用して、自分の睡眠を「見える化」するのもお勧めします。

自分なりの入眠習慣や環境づくりを

健康のベースとなる良い眠りを得るために、生活習慣や寝室の環境を見直すことも良い方法です。下表を参考に、自分なりの快適な睡眠へのルーティンや環境を作りましょう。

表:快適な睡眠のための心掛け
  • 就寝・起床時間を一定にする
  • 日中に適度な運動をする
  • 寝具や香りなど快適な寝室環境を整える
  • 寝る前のパソコンやスマートフォンの使用はほどほどにする
  • 寝る前の飲酒・喫煙を控える
  • 寝る前にリラックスする時間を持つ
  • 就寝中は明かりを消す(常夜灯も)
  • 起きたらカーテンを開け、外の光を感じる

相談から医療機関につなぐ仕組みも

こういった取り組みをしても思うように睡眠が取れない場合は、何らかの疾患が背景にあることも考えられます。お住まいの自治体の保健センターなどに相談してみましょう。県と熊本市には精神保健福祉センターがあります。また、「睡眠サロン」や「睡眠相談」などの活動が行われている自治体もあります。いずれも、相談を受け、必要があれば医療機関につなぐ仕組みです。

病院への受診を考える場合は、精神科や心療内科で「睡眠相談」を掲げているところが良いでしょう。そこから呼吸器内科や代謝内科などを紹介されることもあります。

おわりに

睡眠の満足感が幸福感に

「ぐっすり眠れた」「疲れが取れた」と感じる“睡眠休養感”を得られることは心身の健康にとって、とても大事です。睡眠の満足感と幸福感は比例するというデータもあります。

仕事に加え、家事や育児、介護などを担う世代においては、睡眠時間の確保は二の次になりがちです。睡眠を軽く考えず、誰かに負担が偏らないよう会社や家庭で話し合い、協力し合うことをお勧めします。

Information

「睡眠相談」(無料)が受けられます

産業保健を主に保健分野の活動・研究やコンサルティングを行う熊本産業保健研究所では、3月18日の「春の睡眠の日」にちなんで3月18日~3月22日に「睡眠キャンペーン」を実施。睡眠相談を無料で受け付けます。

◎受付時間/9時~17時
◎相談形態/対面
◎会場/熊本産業保健研究所(熊本市中央区新市街1‐28 THE PLACE花畑ビル6階)
◎対応者/保健師、公認心理師、睡眠健康指導士

【お問い合わせ・ご予約】

熊本産業保健研究所

TEL:096-211-3524
E-mail:him@kumasan-serv.com

次回予告

3/ 22号では、「腰椎の疾患」についてお伝えします

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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この記事を書いた人

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