手当ては癒やしの原点【医療従事者によるリレーエッセー】

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慈愛の心 医心伝心 vol.131
熊本地震を機に父の故郷である熊本へ東京から移住し、鍼灸(しんきゅう)院を開業しました。女性はホルモンの影響を受けやすく、身体やメンタルの不調を少なからず抱えているケースが多いため、女性専用の鍼灸院としました。
鍼灸は「古臭い感じがする」「痛そう」などのイメージを持つ人がいるかもしれませんが、WHO(世界保健機関)が適応疾患を示して医療的効果を認めた治療法であり、民間療法ではありません。
全身にあるツボの数は361といわれています。鍼灸の刺激によって、自律神経が支配する臓器の働きが反射的に調節される仕組みを利用し、治療を続けることで体調の改善を図ります。
ある患者さんが「治療に行った日は家族にいつも『機嫌が良いね』と言葉をかけられるのよ」と、うれしそうに話してくれました。仕事や子育て、介護など毎日が忙しく、来院は月2回程度。「自分で鍼(はり)ができたらいいのに」「気分が上がって元気が湧く」と言われるので、手軽にできる頭のツボ押しをお教えしました。できれば湯船に漬かりながら、触って「痛気持ち良い」ところを押すように提案しました。すると後日、「体がポカポカして温泉旅行からリフレッシュして帰ってきた気分になった」とのこと。
ツボ押しは古くから人々が用いてきた手当てです。それは「癒やしの原点」でもあると、その患者さんの表情を見て改めて気付かされました。
湯船に漬かりながらのツボ押しは誰にもできることです。自らの「手当て」で、より健やかに過ごすことができるよう、ぜひお試しを。


神崎 貴子さん