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加工した写真に写るのは ありのままの自分かな?【となりのあの子Web版 Vol.27】

親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

若者と一緒に過ごしていて、よくすることの一つがスマホで一緒に写真を撮ること。でも使うのは普通のカメラではなく、必ずと言っていいほど「加工アプリ」です。

若者を中心に「盛れる(実際より良く写る)」「映える(見栄えがよい)」ことが重要な今、普通のカメラで写真を撮ろうとするとブーイングです。「加工なしでとるけんヤダ。撮ってもいいけど絶対に人に見せないでよ」なんて言われてしまいます。

先日は自分の写真を見せたときに、「うわー、この写真のキエさん、事故ってるね!(見栄えが悪い・失敗してるね)」と言われ、「事故ってないわい、これが普通だし!」と言い返したこともありました。

最近の加工アプリは、目が大きすぎるほど大きく、顔はほっそり。チークや口紅がついたり、動物のかわいいお耳やヒゲがついたり、顔面全体にラメがついたりと、もはや原形をとどめていません(笑)。

別人のような写真を撮っては、「これ最強に盛れた!」と言って見せてくる若者たち。「おー、いい感じに盛れたね。かわいいやん」と一緒に盛り上がりつつも、ときには「いや、誰やねん!」と突っ込みをいれてしまうことも。

そうやって加工アプリに慣れている若者たちは、普通のカメラで写真を撮ると、「げー、きも!」とか「ぶっさいく、まじ無理」とか、自分の写真に対して酷評の嵐。「いやいや、これがいつものあなたよ」と言いたくなることもあります。

でも実は私も10代の頃、写真加工ソフトにはまって、自分のSNS用の写真は全部加工してアップしていました。それは少しでも奇麗になりたいという気持ちだったのか、背伸びしていたのか、加工する作業が面白くてはまっていたのか、自分でもよく分かりません。

でも結果的にその加工にはまったことが転じて、一眼レフでのポートレート撮影やポスター制作、さらには動画制作などに趣味やスキルが広がっていったので、加工癖も捨てたものではありません。

若者たちの「好き」「楽しい」が育っていくと、新しい興味やスキルにつながったり、大人には考えつかないような世界が生まれていくきっかけになるかもしれません。

若者たちの加工写真を見ながら、もっとありのままの自分を好きになってほしいとか、もっと自信をもってほしいとか、思うこともあります。でもこれも若者たちの日常の一つ。若者に負けじと盛れる写真を研究してやろうと思う最近です。


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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この記事を書いた人

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。

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