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SNS通して発信される 若者たちの「SOS」【となりのあの子Web版 Vol.30】

親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

最近の若者たちは、SNSや配信アプリなどデジタルでのつながりがすごいですね。ネットの中に一度も会ったことのない友達や、時には恋人がいるのも当たり前の世の中になってきました。

以前は家や学校、職場といった、自分が所属する物理的な居場所が人間関係のベースだったように思います。そして昔はきっとこの居場所が、たくさん、しかもいろんな形で存在したのではないでしょうか。

しかし今では、家と学校以外の人間との関わりが年々減り、身近に自分のことをよく知り、話を聞き、助けてくれる大人の存在はもはや絶滅危惧種と化しています。

物理的な居場所が減った現代社会で、ネットの世界に居場所を見いだす若者が少なくありません。

多くの若者たちはネット上で相談したり、恋愛をしたり、時にはSOSを出したり。中には日ごろのたわいもない話は対面で会う友達として、実際に自分が困っていることや起きているトラブルについては会ったことのないネット友達にしか話さない、という若者もいます。

対面で関係がある人に話すと気まずくなるとか、迷惑を掛けるからとか、理由はさまざまですが、物理的に関係がある相手には言えないが、SNSの友達にはSOSを出せる、という場合もあります。

実際にトナリビトではSNSからシェルターにつながる若者もいます。しかも多くは別の若者がSNS上でSOSを発信している子を見つけて「どうにかできない?」と相談してくるのです。以前相談してきた子に「SOSを出してきたその子は元々知り合いなの?」と聞いてみたところ、その子は「ううん、一回も会ったことない。でも泊るところなくて困ってるから、どうにかしてあげたい」と答えました。

そして実際につながった子に話を聞くと、「他に相談できるところがなかった」と言います。周りに相談できる大人がいなかった、と。もしくはコミュニケーションを上手にとることができずに諦めた、という声も度々聞きます。

SOSを出す前に、相談できる大人が近くにいたら、どんなに良かっただろう、と思うこともあります。

ネット上のつながりは、リスクが高いとか、本当の関係じゃない、と言われることも多いですが、こうやって顔の見えない関係からSOSをつないでいく若者たちの姿を見ていると、このSOSを出してもらえる大人になるにはどうすればいいのだろうかと、改めて考えさせられました。


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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この記事を書いた人

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。

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