クマモトは住みよいまち? 聞いてみました 外国人のホンネ
県内に住む外国人は2万人を超えており、そのうち熊本市は約9000人。前年から約1700人も増えています(2023年末時点、市統計情報室より)。普段の生活の中でも外国の人を見かけることは珍しくなくなりました。そんな外国人の皆さんにとって、熊本は暮らしやすい土地なのでしょうか? 同じ地域に暮らす一員として、外国人のホンネに耳を傾けてみませんか。
つながる!広がる! KUMAMOTO LIFE!!
出身国も年齢もさまざまな熊本県内在住の外国人3人に、移り住んだ理由や暮らしぶり、地域に溶け込むコツなどを本音で語り合ってもらいました。
在熊外国人 座談会
―まずは熊本にやって来たきっかけを教えてください。
ジェイソン(以下、ジ) ALT(外国語指導助手)として来日し、派遣先が熊本でした。
邱 夫の勤め先が熊本の企業だったので、移り住むことになりました。
コリーナ(以下、コ) フィリピンで出会った日本人男性との結婚を機に、熊本に来ました。
―住んでみた印象や気に入っている点は。
ジ 食文化かな。妻の実家の家庭菜園で作る野菜が新鮮でおいしいし、価格が安いのも魅力です。肉じゃがなどの家庭料理や熊本名物の馬刺しも好きですよ。
コ 水がおいしくて豊か。フィリピンでは開発が進むにつれて水が足りなくなり、水道水が出なくなることが時々あるんですよ。
邱 私が住んでいた台中市は大都市なので、熊本に来た時は、高層ビルが少なく、生活のリズムがゆったりしていると感じました。何より空気がとてもきれいなのがいいですね。
―逆に、ストレスを感じたことは。
コ 熊本に来て、肩凝りがひどくなりました。熊本の冬が寒いからか、異国の地でストレスを感じているからなのか。フィリピンには、肩凝りの人はほとんどいないですよ。
邱 ちょっと出かける時でも化粧をしないといけないのが大変です。台湾の女性は、基本的にあまり化粧をしません。日本では化粧をしていないと、「元気がないですね。病気ですか?」と必ず聞かれます(笑)。
ジ 自家用車がないとあちこちに行けない不便さがあります。また、アメリカの道路と比べて、信号機が多いと感じます。
―熊本の人たちの「人柄」はどうですか。
邱 台湾で日本語を勉強していたので、言葉の面ではそれほど困らないと思っていたけど、熊本弁は全く分からなかった! それでも、熊本に来た当初から、進んで地域に溶け込むようにしたら、皆さんとても親切にしてくれました。
ジ 日本で働く外国人にとって最初の難関は、部屋探し。でも家族や親戚でもないのに保証人を名乗り出てくれた人がいたおかげで、借りることができました。今でも彼は大切な友人です。人の温かさも熊本の良さの一つだと思います。
コ みんな親切にしてくれます。でも私が熊本に来た頃はまだ、外国人に対する差別や偏見がありました。私も「なんで(肌が)黒いの?」と言われたり、道を尋ねても「他の人に聞いて」と避けられたり。でも諦めず自分から進んで声をかけたら、たくさん友達ができました。
―「保証人」の話が出ましたが、他に手続きなどでの苦労やガッカリしたエピソードは。
邱 外国人にとっては面倒で難しいことが多いですね。例えば確定申告もそう。でも、自分で頑張って調べてできるようになると、なぜ日本がそういう制度にしているのかも分かるし、自国との違いも理解できます。今では、夫より私の方が税金について詳しいですよ(笑)。
コ 私も、分からないことは自分から進んで尋ねるようにしています。インターネットはできないし、漢字も読めないから、直接会って聞きます!
ジ ガッカリしたのは、トイレの場所や施設内の注意書きなどを張り紙で済ませようとするところかな。多言語対応を全部張り紙で済ませようとすると、どうしても読むものが増えるし、店や施設の見た目も損なわれます。また、外国人と話したくないのかなと感じてしまいます。もっとコミュニケーションを大事にしてほしいと思います。
―”異国の地”で地域になじむためのコツなどは。
ジ 日本人しかいないコミュニティーに入ってみること。例えば、アメリカで野球をしていたなら早朝野球のチームに入ってみるとか、着物教室に通うとか。そこで、日本語が上達するし、友人も増えると思います。
邱 とにかく熊本の風土や文化、習慣を経験することですね。海外での生活には”心の柔軟性”が必要ですから。
コ 私も2人と同じ! だって住んでいるのは、自分の国ではなく日本(熊本)だから。
―最後に、受け入れる側の熊本の人たちにアドバイスを。
ジ 英語を話せないからと、コミュニケーションを取るのを避けようとする人が多い。意思疎通はお互いの責任だから、私たちも「聞こう(分かろう)」と努力します。もっと自信を持って話しかけてきてほしいですね。
邱 外国人や、その人の出身国への先入観をなくしてほしい。例えば、台湾積体電路製造(TSMC)は世界的な企業なので「社員の給料が高い、お金持ちが多い」というイメージがあり、「高い商品でも売れる」と勘違いされがちです。台湾人は、たとえお金持ちでも意外とケチですよ(笑)。もっと相手のことを知れば、より分かり合えるようになります。
コ 私たちが日本や熊本に慣れるのに努力したように、外国の言葉や文化を勉強してもらえるとうれしい。何か分からない時はすぐにヘルプしますよ!
熊本の生活&観光情報 WEBで発信 台湾人在熊本的生活
外国人の困り事はさまざま 違い認め 寄り添うことが大切
気軽に始めた情報発信でしたが、熊本に来る台湾人の皆さんから多くの反応や問い合わせがあり、驚いています。通訳の依頼はもちろん、部屋探しやその際の保証人探しなどを手伝ってほしいという依頼も増えています。
今後発信してほしいと要望が多いのが、医療機関や、外国語対応が可能なタクシー会社、緊急時の防災などの情報です。
サイト運営を通じて、あらためて「外国で暮らすことの大変さ」を知り、受け入れる側の私たちも違いを許容し、寄り添うことが大切だと感じています。
お話を聞いたのは
台湾人向け生活情報発信サイト「台湾人在熊本的生活」を運営。在熊台湾人の困り事などにも対応している。
熊本市在住外国人のためのお役立ち情報
熊本市では、在住の外国人のために各種相談窓口を設けたり、WEBサイトや冊子を通じて生活情報を発信したりしています。もし、あなたの身近で情報を必要としている外国の方がいたら、ぜひ教えてあげてください。
窓口・WEBサイト
・熊本市外国人総合相談プラザ/TEL:096-359-4995
外国人の在留手続きや雇用、医療、福祉、出産・子育て・教育など
生活全般について相談できます。soudan@kumamoto-if.or.jp
・外国人のための生活便利ブック
市の窓口業務や制度、生活に関する情報などを紹介。やさしい日本語のほか、英語、韓国語など、6言語に対応しています。
https://www.city.kumamoto.jp/hpkiji/pub/detail.aspx?c_id=5&type=top&id=34278
・地域日本語教室(市内5区で開催)/TEL:096-359-2121
ボランティアと一緒に日本語を勉強できます。会話をしながら日本の文化やルールなどを学べます。nihongo@kumamoto-if.or.jp
※生活日本語支援ボランティア募集/地域日本語教室で、生活に必要な日本語コミュニケーションの支援をするボランティアを募集しています。外国人住民との交流に興味がある方は問い合わせてみてください
冊子
・あんしんノート
災害時や避難に関する情報を掲載した多言語防災カード「あんしんノート」(写真)。市国際交流会館のほか、市役所や各区役所、公民館などの窓口で配布しています。