【セカンドライフ熊本2024】相続の基礎知識
「セカンドライフを心豊かに過ごしたい」。そんな意欲的な人たちと、その子ども世代に向けて、今を楽しむコツと未来に備える方法をテーマごとに伝えるシリーズ「セカンドライフ特集2024」。第3回は「相続の基礎知識」です。
知っておきたい 相続の基礎知識
「相続」は一生のうちで何度も経験することではなく、詳細を把握している人は少数派ではないでしょうか。制度を理解し事前準備を心掛けることで、トラブル防止やスムーズな手続きにつながります。知っておきたい相続の基本について専門家に聞きました。
相続は遺言書の確認から 法改正や登記義務化にも注意
相続は家族などが亡くなった際、財産や権利義務を引き継ぐ手続きです。相続が始まったら、まず遺言書の有無を確認しましょう。遺言書は自宅だけでなく、公証役場や法務局に保管されている場合があるため照会をかけるケースがあります。遺言書があれば家庭裁判所に検認の申し立て(※)をし、完了後に遺言書に基づいて手続きを進めます。ない場合は法定相続人を確定し全員で遺産分割協議を行います。
相続税が課税される場合、相続の開始があった(亡くなった)ことを知った翌日から10カ月以内に申告と納税を行う必要があります。相続する財産には借金などの「マイナス財産」も含まれます。プラスの財産よりマイナス財産が多い場合、自分が相続人になったと知った時から3カ月以内であれば「相続放棄」などを選択することができます。
最近、相続に関連する法律の改正が相次いでいます。「生前贈与」は有効な相続税対策として知られています。2023年度の法改正で生前贈与の加算期間が3年から7年に延長されました。これにより相続税の対象として加算される期間が長くなり、税負担が増える傾向がみられます。相続税対策をしたいなら早めに生前贈与の活用を検討しましょう。
また、24年4月から不動産を相続した際の相続登記が義務化されました。放置した場合、過料の対象となることがあり、忘れずに手続きを進めましょう。
※公正証書遺言や法務局で保管する遺言書は家庭裁判所での検認は不要
教えてくれた人
相続の準備は認知症が進むなどしたら難しくなります。早めに取り掛かりましょう
[MEMO1]思いや意図を伝える遺言書 相続時の混乱防ぐ助けに
- 法定相続人以外に財産を渡したい
- 特定の人に多くまたは特定の財産を渡したい
- 遺産分割協議でもめる可能性がある
―といった場合は特に遺言書の作成が望ましいです。遺言書には法的拘束力はないものの、「付言」という形で家族への感謝の気持ちや分配の意図などを記載することもでき、相続時の混乱やトラブルを防ぐ助けになります。
[MEMO2]親世代にオススメ! エンディングノート活用を
相続手続きには亡くなった人の財産把握が必要です。財産目録を作成して、その保管場所を家族に伝えておくと良いでしょう。最近では法務省や自治体が提供するエンディングノートがあり、HPからダウンロードできます。財産だけでなく、介護や終末期医療、葬儀についての要望なども記入することもできます。生前にそれらのことを家族で話し合えるとより安心です。
相続Q&A
知っておきたい生前贈与や相続に関する法改正について福永紗織弁護士に聞きました。
- 相続税対策として生前贈与が有効と聞きました。
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亡くなる前に贈与し円滑な資産移転を
相続税対策としてすぐに始められる方法に「生前贈与」があります。亡くなる前に家族に財産を少しずつ贈与。相続時の財産を減らすことで相続税を軽減できる可能性があるなど、メリットがあります。
生前贈与では贈与を受けた方が贈与税を支払う必要がありますが、暦年(1月1日~12月31日の1年間)の贈与額が110万円以内なら非課税になる「暦年課税」という制度があります。少額を毎年贈与することで、贈与税の非課税枠を利用しながら将来的な節税につなげることが可能です。ただ、生前贈与を行った被相続人が亡くなった場合、一定期間内の贈与分が相続税の対象として加算されるので注意が必要です。前ページでも触れた通り、2023年度の法改正でこの加算対象期間が3年から7年に延長されました。 - 生前にまとまった金額を贈与したい場合、利用できる制度はありますか。
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「相続時精算課税制度」の活用を検討
生前贈与を促進させる目的で創設された「相続時精算課税制度」があります。2500万円まで贈与税が非課税で、子や孫が受け取ることができます。贈与を受けた額は、相続時に相続財産に加算して相続税が算出されます。23年度の法改正で年間110万円までの基礎控除が新設されました。相続時にはこの基礎控除分を差し引いた額を相続財産に加算して相続税が算出されます。この他、子や孫に教育資金をまとめて贈与する場合に、1500万円以下であれば贈与税が非課税となる「教育資金の一括贈与」もあります。
暦年課税と同様、早い時期から計画することが相続税対策として効果的です。家族で話し合い、将来に備えて早めに贈与計画を立てることが、スムーズな相続と相続税対策につながるでしょう。
- 不動産の相続登記の義務化について教えてください。
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相続登記は3年以内に
24年4月から相続による不動産の登記が義務化されました。これにより、土地や建物といった不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。もし相続登記を怠った場合、10万円以下の過料が科されることもあるため注意が必要です。
今回の義務化は相続登記がされないまま、所有者不明で放置される土地が増加している問題への対策として導入されました。24年4月より前に相続した不動産も対象です。親世代で相続登記しないと、例えば祖父の不動産がさらにその子どもや孫まで含めた多くの相続人で登記手続きする必要が出てきます。相続登記を早めに行うことで、後々のトラブルや相続人の負担が減る効果も期待できます。
首都圏で強盗事件が多発 高齢の親のことが心配… あなたの家は大丈夫? 防犯対策
首都圏を中心に住宅を狙った強盗事件が多発しています。同居の有無にかかわらず、高齢の親を持つ世代にとって心配に思う人も多いのではないでしょうか。日常生活で取り入れたい防犯対策について熊本県警察に聞きました。
日頃の行動見直しで効果発揮 防犯機器の活用もおすすめ
防犯対策は日常的に取り組むことが大切です。
まず意識したいのが行動による防犯対策。例えば
- 在宅時でも必ず施錠する
- 帰宅時、ドアを開ける前に周囲の状況を確認する
- 来訪者があった際、すぐにドアを開けず、誰か確認する
―など。特に費用をかけなくても大きな効果を発揮します。家族みんなで実践しましょう。
首都圏で多発している強盗事件では、リフォームなどの飛び込み営業を装って住宅に上がり込み、資産状況などを把握する「下見」が行われていた可能性があります。来訪者がどのような相手なのかについては、身分証を見せてもらうなどして慎重に対応。不審に感じたら、ためらわずに警察へ通報してください。自宅に必要以上の現金を保管しないことも防犯上大切なことです。
防犯機器の活用もおすすめです。センサーライトや防犯カメラ、窓の補助錠、窓用防犯ブザーなどの設置も有効です。どれを導入すべきか迷うときは「一般社団法人熊本県防犯設備協会」へ問い合わせるのも一つの方法でしょう。この団体は各種防犯設備のプロ集団。熊本県警察と連携して防犯の啓発活動を実施しており、防犯上のさまざまなアドバイスを行っています。
地域で防犯意識を高めることも非常に重要です。ご近所同士であいさつを交わし、声を掛け合うことは、互いの家を見守る「地域の目」として大きな防犯効果をもたらします。地域全体で協力し、安心して暮らせる環境をつくりましょう。
熊本県防犯設備協会事務局
TEL | 096-234-7531 |
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教えてくれた人
家族やご近所同士で声を掛け合い、防犯対策をお願いします
[CHECK]防犯電話機購入支援キャンペーン実施中
自宅の固定電話に「個人情報を聞き出す電話」がかかってくる可能性も考えられます。それを避けるためには、自動通話録音機能が付いた防犯電話機を設置し、犯行を断念させて電話を切らせることが大切です。熊本県警察では、補助要件を満たして防犯電話機を購入した人に最大5000円をギフトカードで補助するキャンペーンを実施しています。この機会に安全安心な電話機の購入を検討しませんか。
応募期間 | 2025年3月10日(月)まで ※補助金額上限に達し次第、終了 |
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問い合わせ | 096-288-4011 (防犯電話機購入支援キャンペーン事務局) |
[TOPIC]すぐに取り入れたい! 日常生活での防犯習慣
SNSなどでの情報漏えいに注意
SNSに家族構成や資産状況、生活リズムなどを発信することは、第三者に不要な情報が漏れる原因となり、犯罪のリスクを高めます。特に自宅の様子や旅行などの外出情報を公開することは避けましょう。
県内の犯罪や不審者情報をチェック
熊本県警察が提供する「ゆっぴー安心メール」で、県内で発生した犯罪や不審者情報、防犯に役立つ情報などを把握し、防犯対策に活用するのも◎。地域の最新情報を迅速にキャッチできるため、防犯意識の向上や安全確保に役立ちます。