ななみ先生と浦田先生が答えます! 住まいと暮らしのQ&A[2023 春]
春は、生活環境の変化などに伴い、お金の変動が生じやすいシーズンでもあります。家計の見直しを考えている人も少なくないでしょう。本紙「家計簿チェック」でおなじみの佐藤ななみさんと浦田幸助さんに、住まいと暮らしに関する、知っておきたい“お金”の情報について聞きました。
ファイナンシャルコーチ
佐藤ななみさん
「お金ともっと仲良く!」を合言葉に、家計・住宅資金・保険・資産運用・終活に関する個別相談業務やセミナーを展開中。YouTubeチャンネルでもお金の情報を分かりやすく発信。
https://financialcoach.jp/
ファイナンシャルプランナー
浦田 幸助さん
浦田幸助FP事務所所長。個別相談への対応やセミナー開催など、活動は多岐にわたる。ファイナンシャルプランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャルプランニング技能士。
https://www.sfpmoney.jp/
子育て施策は徐々に手厚く… 支援制度を生活にうまく取り入れて
厚生労働省によると、2022年に生まれた子どもの数は77万人前後となる見通しです。これは、過去最多だった1949年の269万人と比べて3分の1にも満たない少なさです。2016年に初めて出生数が100万人を割り込んでからも減少に歯止めがかからず、少子化はますます加速しています。その要因の一つとして、育児費や教育費に対する不安が挙げられます。
こうした不安を解消しようと、出産費や子ども医療費の助成、児童手当の増額、保育料・高校授業料の無償化、大学等の学費減免など、行政の施策は年々手厚くなってきています。新年度を控え、まさに対応に迫られている家庭もあると思います。収支バランスの見直しはもちろん、必要な情報をしっかり捉え、活用できる支援制度などもうまく取り入れながら、賢く乗り切っていきたいものですね。
1 | 子どもが賃貸アパートに入居 保険への加入は絶対必要? |
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2 | 賃貸物件に引っ越すことに 手続きで気を付ける点は? |
3 | マイホーム新築を計画中 補助金を利用したいけど… |
4 | 住宅ローンや資産運用 金利が上がった時の影響は? |
5 | 今秋始まるインボイス制度 主婦である私への影響は? |
6 | 省エネリフォームを検討中 使える補助金制度はあるの? |
子どもが賃貸アパートに入居 保険への加入は絶対必要?
Q.
子どもが大学進学のため、県外に引っ越します。賃貸アパートの契約にあたり不動産業者から保険に加入するように言われました。これは絶対に必要なものでしょうか。
A.
賃貸住宅の入居にあたっては、損害保険への加入を条件としていることが一般的ですね。
これは、入居者の過失により物件に損害が生じたときに、原状回復してもらう財源を確保したいという大家さんの意向を担保することが最大の目的です。こうしたリスクを補償する保険を「借家人賠償保険」といいます。
保険の有無にかかわらず、入居者が物件に損害を与えてしまった場合には、大家さんへ賠償の義務が生じます。このとき、もし保険がなかったら、預貯金や借入金などで補償しなければならず、莫大な負担となることも十分にあり得ます。これは、賃借人にとっても非常に重要な保険だといえます。
賃貸住宅向けの保険商品には、このほかに「家財保険」や「個人賠償責任保険」がセットされているのが一般的です。
家財保険は、火災や自然災害などで自身の家財に損害が生じた際に補償されます。盗難や破損・汚損、また住戸外に持ち出し中の家財を対象としている場合もあります。一方、個人賠償責任保険は、日常生活における損害賠償責任について補償する保険です。階下へ水漏れ事故を起こしてしまった場合などの住まいに関するトラブルのほか、自転車に乗っていて人や物にぶつかった、飼い犬が通行人にかみ付いた―など、住まいと直接的に関係がないシーンでも役に立ちます。
いざというときに頼れる味方として、内容をしっかり把握し加入しておかれることをお勧めします。
(佐藤)
賃貸物件に引っ越すことに 手続きで気を付ける点は?
Q.
仕事の関係でこの春転勤が決まり、賃貸マンションに引っ越すことになりました。手続きで特に気を付けるべきポイントはどんなところですか。
A.
引っ越しが決まったら、さまざまな手続きをする必要があります(表参照)。そこで、手続きや費用面で、気を付けておきたいポイントをいくつか挙げてみました。
賃貸住宅の場合、まず大家さんや不動産会社に連絡を。敷金精算を巡るトラブルや家賃の二重払いなどを防ぐため、契約内容をよく確認しましょう。
借り主の故意・過失による部屋の破損は、入居時に払った敷金で修繕されますが、敷金が不要な物件や、払った敷金以上に修繕にお金がかかる場合は、追加費用を払うことになります。ただし、経年劣化による破損は貸主負担となり、敷金から払う必要はありません。修繕費を払った敷金の残りは、退去後に返還されます。
次に、引っ越し業者の選定です。料金は荷物の量や距離、引っ越す時季などで大きく変わります。業者によっても異なるため、複数の業者に見積もりを依頼されることをお勧めします。
引っ越しの際に出る粗大ごみの処分費も抑えたいところですね。再利用できそうなものはリサイクル業者へ、その他の大型ごみは、熊本市なら「ごみゼロコール(TEL 0570・00・5374)」に連絡して処分すると、安価に抑えられます。
(浦田)
引っ越し手続きの大まかな流れ
(1)引っ越しが決まったら
・賃貸の場合は大家さんや不動産会社に連絡
・持ち家の場合は売却・賃貸などどうするかを検討
・子どもがいれば学校に連絡
・引っ越し業者に見積もりを依頼
・荷造り用ダンボールの収集
(2)引っ越し2週間前~前日
・使用頻度の低いものから順に荷造りを開始
・役所への転出届の提出
・電気・ガス・水道・スマートフォンの住所変更
・郵便局の転送手続き
・家賃の精算
(3)前日
・冷蔵庫、洗濯機の水抜き
・手持ち品の確認
(4)当日
・引っ越し作業員と打ち合わせ、作業内容を確認
・引っ越し料金の精算
・転居先でのあいさつ
知っ得情報
火災保険解約
引っ越しをする場合、引っ越し前の住宅で加入していた火災保険の解約を忘れないようにしましょう。
火災保険は保険会社によって若干の差がありますが、解約した時期に応じて残りの期間の解約返戻金が支払われます。おおよそですが、前払いしている保険料月割りにして、残っている期間の分が返ってくるという理解で大丈夫でしょう。ちなみに、地震保険も解約返戻金を受け取ることができます。
(浦田)
マイホーム新築を計画中 補助金を利用したいけど…
Q.
マイホーム新築を計画しています。昨年の「こどもみらい住宅支援事業」は既に終了してしまったそうで、残念に思っています。これから新築する私たちも利用できる補助金制度は他にないでしょうか。
A.
「こどもみらい住宅支援事業」は、昨年11月28日をもって終了しました。
本年度は、昨年比約2.7倍の規模に相当する1500億円の予算が組まれ、「こどもエコすまい支援事業」が制定されています。内容は「こどもみらい―」とかなり似通っており、「ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」基準を満たす住宅の新築や購入で一戸当たり100万円、基準を満たすリフォームを行うと最大60万円の補助を受けられます。
対象となる世帯は、新築の場合、(1)2004年4月2日以降に出生(※1)した子がいる世帯、または(2)夫婦のいずれかが1982年4月2日以降出生(※2)の世帯です。一方、リフォームの場合は、発注者世帯の年齢は問いませんが、(1)(2)の子育て・若年世帯に該当する世帯については、補助上限額が引き上げられています。
補助金の予約・申請から受領に関する一連の手続きは、この制度の登録事業者(施工・販売業者)を通じて行います。よって補助金を利用するには、登録事業者を通じて住宅を購入するか工事を依頼する必要があります。
新築、リフォームのいずれも、昨年11月8日以降に着工されたものが対象です。交付申請は今年3月下旬に開始予定で、遅くとも11月末までに予約、12月末までに申請する必要がありますが、その前であっても予算額に達した時点で締め切られます。
詳しくは、国土交通省「こどもエコすまい支援事業」ホームページ(https://kodomo-ecosumai.mlit.go.jp/)を参照してください。
(佐藤)
*今年3月末までに着工する場合は、(※1)2003年4月2日以降出生 (※2)1981年4月2日以降出生が条件
住宅ローンや資産運用 金利が上がった時の影響は?
Q.
最近、金利が上がっていると聞きます。実際どうなのでしょうか。もし上がっているのなら、住宅ローンや資産運用にはどのような影響があるでしょうか。
A.
貸し借りが1年以内の金利を短期金利、1年を超えるものを長期金利といいます。長期金利の代表である新発10年物国債金利は、1年前と比べて0・35%程度上がっています。対して短期金利は、日銀の政策で低く抑えられています。
住宅ローンについては現状、10年固定や全期間固定は上昇している一方、変動金利は変わらないところがほとんど。セオリー通りに考えると、金利上昇期には固定金利で借り入れるべきですが、金利の低さで、変動金利も魅力的です。
固定金利は変動金利より金利負担が増しますが、それは金利上昇に対する保険料のようなものです。つまり総返済額の差を保険料として払ってもよいという人は固定金利を選ぶといいでしょう(図)。変動金利を選ぶ人は、金利が上がってもある程度返済可能な範囲で借入額を決めておき、日銀の政策決定に関心を持っておく必要があると思います。
資産運用については、金利が上がれば債券価格も株価も下がるというのが定石ですが、全ての銘柄に当てはまるわけではありません。例えばハイテク株などの成長株は売られ、景気に敏感な株や銀行株は買われたりします。運用する限りリスクはつきものです。自分が保有している金融商品の特性をよく確認しておきましょう。
(浦田)
知っ得情報
個人向け国債
金利上昇期に向いている低リスク商品としては「個人向け国債変動金利型10年満期」がお薦めです。
個人向け国債は元本割れがなく、最低金利0.05%(年率)も保証される商品です。1年経過すると中途換金もでき、1万円から購入可能。満期3年と5年、10年があり、変動金利型は10年だけです。1月の募集時の金利は0.33%ですが、今後金利が上がれば、それに合わせて上昇することも考えられます。
(浦田)
今秋始まるインボイス制度 主婦である私への影響は?
Q.
今年の秋から「インボイス」という制度が始まるそうで、消費税の何かが変わると聞きました。まだ内容をよく理解できていませんが、主婦の私にとってどのような影響がありますか。
A.
10月から、消費税の申告・納付に関するルール改正が行われます。これにより新たに導入される方式を適格請求書等保存方式(通称インボイス制度)といいます。
私たちが買い物をするとき、お店には商品価格に8%または10%を加算した金額を消費税として支払っています。お店はこのお金をいったん預かり、1年分をまとめて申告・納税しています。その際、お店は消費者から預かった消費税分の総額を単純に合計して納付しているわけではありません。消費税は最終消費者が負担する税であることを前提に、仕入れなどの際に事業者が負担した消費税分は預かり分から差し引いて納税します。ここで差し引く金額を、仕入れ税額控除といいます。
消費税の申告において、9月分までは、どの業者との取引でも消費税分について仕入れ税額控除を適用できますが、10月以降は原則として、登録された適格請求書発行事業者が発行した請求書などに基づく支払い分に限りこれを認める(経過措置あり)というのがおおむねの方向性です。
そういうわけで、インボイス制度によって何らかの影響を受けることになるのは、法人・個人を含めた事業を営む人たちです。一般消費者の立場においては、直接的な影響や、必要となる手続きはありませんので、ご安心ください。
(佐藤)
省エネリフォームを検討中 使える補助金制度はあるの?
Q.
住宅を省エネリフォームすることを検討していますが、予算をなるべく抑えたいです。現状、リフォームに活用できる補助金制度はありますか。
A.
省エネリフォームに関しては、今年から3つの新しい補助金制度が始まります。この3つは併用可能で、一般世帯で245万円まで受け取れます。
一つ目は「こどもエコすまい支援事業」です。高い省エネ性能を有する住宅で、子育て世代や若者夫婦の取得が対象です。リフォームの場合は、その他の世帯でも利用できます。二つ目が「先進的窓リノベ事業」です。既存住宅の住宅所有者が、内窓・外窓やガラスを交換(断熱改修)するリフォーム工事を対象にしています。三つ目が「給湯省エネ事業」。これは、家庭のエネルギー消費で大きな割合を占める給湯に対し、高効率給湯器の導入を支援するものです。
先進的窓リノベ事業と給湯省エネ事業は求められる性能が高いため、補助金も高く設定されています。
なお、高性能の住設機器を使ってリフォームをする場合は、こどもエコすまい支援事業で申請するよりも個別に申請した方が補助額が大きくなるため、注意してください。
いずれの事業も、補助金の交付申請を含む全ての手続きは、登録された住宅省エネ支援事業者が行います。
(浦田)
知っ得情報
インボイス制度 導入の背景
消費税のルールで、年間売り上げ1000万円以下の業者は、申告・納税を免除されています。免税業者が消費税の名目で受領したお金は、事業者の利益となっていたのが実情で、俗に“益税”と呼ばれています。
こうした状況を是正しようと導入されるのがインボイス制度で、事業者間の取引において、登録された課税業者のみが消費税を請求できる方向へ誘導する狙いがあります。
(佐藤)