ななみ先生と浦田先生が答えます! 住まいと暮らしのQ&A[2023 秋]
「お金」は、私たちの生活と切っても切り離せない存在。できるだけ、上手に、賢く付き合っていきたいものです。本紙「家計簿チェック」コーナーでおなじみの佐藤ななみさんと浦田幸助さんに、知っておきたい、住まいと暮らしのお金の情報について聞きました。
ファイナンシャルコーチ
佐藤ななみさん
「お金ともっと仲良く!」を合言葉に、家計・住宅資金・保険・資産運用・終活に関する個別相談業務やセミナーを展開中。YouTubeチャンネルでもお金の情報を分かりやすく発信。
https://financialcoach.jp/
ファイナンシャルプランナー
浦田 幸助さん
浦田幸助FP事務所所長。個別相談への対応やセミナー開催など、活動は多岐にわたる。ファイナンシャルプランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャルプランニング技能士。
https://www.sfpmoney.jp/
都道府県別の「最低賃金」が改定 引き上げの背景や影響にも注目を
日常生活に関わるさまざまな物の値上がりが続く中、10月、全国の地域別の最低賃金が改定されました。熊本県の最低賃金は898円で、前年比45円プラス。増加率は5.28%となりました。5%を超えて増加したのは、この20年を振り返っても初めてのことです。また上昇幅は、金額・率とも全国で5番目に高い結果となりました。
最低賃金とは法律で定められた1時間あたりの賃金の最低額で、産業や職種などにかかわらず、あらゆる労働者に保証されるものです。金額は、各都道府県に設置されている最低賃金審議会による審議を経て、毎年改定されます。
最低賃金は、日本経済や企業経営、働き方などに大きな影響を与えるといわれています。賃金の動向だけでなく、最低賃金が引き上げられる社会背景や影響などにも目を向けたいものです。
1 | 住宅ローンの金利上昇に不安 「固定」に借り換えるべき? |
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2 | 祖父名義の土地を父から相続 使わなくても登記は必要? |
3 | 中古住宅の購入を検討中 事前に確認すべきことは? |
4 | 県内の地価が上昇傾向 今後も値上がりは続く? |
住宅ローンの金利上昇に不安 「固定」に借り換えるべき?
Q.
変動金利の住宅ローンを返済中です。まだ先は長く、いつか金利が上がるのではと、漠然と不安になりました。早いうちに固定金利に借り換えておくべきでしょうか。今からできる対策を教えてください。
A.
昨年来、長期金利の上昇を受けて同様の声を時々耳にします。
ところで、変動金利ローンの適用金利は、日本銀行が政策に基づいて決定する短期金利に連動します。一方、長期金利は債券市場の動きに連動しており、双方は異なる要因で動くことをまずは押さえておきましょう。
そして現状、日銀は「金融緩和を継続する」との方針を変更しておらず、近々の激変は考えにくいとの見方が大勢かと思います。しかし、完済までの長い期間で、いつ、どのように金利が動くのか、確定的なことは誰にも分かりません。備えておくことは大切ですね。
お考えの固定金利への借り換えも、一つの選択肢になり得ると思います。ただ、現状の借り入れ条件などによっては、少々ハードルが高い話になるかもしれません。一例として、10月のフラット35(借換融資/最頻)の金利で試算してみました(表参照)。先々、これ以上は金利が上昇しない代わりに、直ちに負担が増えることが分かります。
そこでご提案したいのは、「借り換えたつもり家計」です。金利が上がった場合の返済額を想定し、実際の返済額との差額を「住宅ローン用」としてあらかじめ積み立てておく作戦です。そしていつか本当に金利が上がった時には、たまったお金で繰り上げ返済します。残高を減らすほど金利上昇の影響を和らげることができます。
毎回返済額が増加した分は積み立て分の枠を充てることで後の家計収支への影響を調整できます。
(佐藤)
祖父名義の土地を父から相続 使わなくても登記は必要?
Q.
祖父が持っていた土地を父が相続し、その後、父から私が相続しました。特にその土地を使うわけでもなく、登記は祖父名義のままです。相続登記が来年4月に義務化されますが、私の場合も登記しないといけませんか。
A.
登記する必要があります。
所有者不明の土地は全国的に増加しており、国土交通省の調査では国土の約22%に及ぶそうです。こうした土地は、公共事業や復旧・復興事業を円滑に進める上での妨げになるほか、空き地として長い間放置されると、雑草が生い茂ったり、ごみが投棄されたりして管理不全状態となり、周辺住民の生活に悪影響が及ぶ恐れがあります。
所有者不明の土地が増える原因の大半が「相続登記の未了」といわれます。この未了は、高齢化の進展に伴う死亡者数の増加などにより、今後ますます増えていくのではないでしょうか。
そこで、これまでは任意だった相続登記が来年4月1日から法律で義務化されることになりました。
これは、相続人が相続する財産に、土地や建物があると「知った時(一般的には被相続人が亡くなった日)から」3年以内に相続登記をすることが義務付けられるものです。現状、「登記費用がかかるから」「売らずに住み続けるから」などの理由で相続登記をしていない人も登記が義務付けられます。
また、過去に相続した不動産についても、さかのぼって相続登記の義務化の対象になるため注意してください。
もし、正当な理由がなく3年以内に相続登記をせずに放置した場合、罰則として「10万円以下の過料」に処されます。
(浦田)
知っ得情報
「相続人申告登記」制度
相続登記の未了が多いのは、煩雑な手続きになるケースが少なくないことが原因といわれます。そこで、登記の負担を軽減させるために「相続人申告登記」という制度がつくられました。
これは、(1)相続が開始した旨と、(2)自らがその相続人である旨を、必要書類を用意し3年以内に登記官に対して申し出ることで、取りあえずの申請義務を果たしたとみなされるというものです。
(浦田)
中古住宅の購入を検討中 事前に確認すべきことは?
Q.
マイホームの購入を検討中です。新築を希望していましたが、建築価格高騰の折、中古物件にも目を向け始めています。中古住宅購入時に確認すべきことを教えてください。
A.
中古住宅を購入する際、まず気になるのは物件そのものの状態でしょう。外観や内装、各種設備の動作などは自分でもある程度確認できると思いますが、柱や基礎、屋根など表からは見えない部分に問題が潜んでいないか心配ですよね。
こうした不安をクリアするために「既存住宅売買瑕疵(かし)保険」付き物件を選ぶのも一つの方法です。この制度では、建物の「構造耐力上、主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」の欠陥が保証されます。建築士による検査に合格した物件に付帯され、物件の引き渡し後に欠陥が見つかった場合、補修費用が保険金として支払われます。
住宅ローン減税を受けられるのは、昭和56年以降に建てられた物件です(築年数以外にも要件あり)。ただし、新築では年間最大控除額が35万円(13年間)なのに対し、中古は21万円(10年間)となります。
火災保険においては、築年数の浅い物件だと割引を受けられることも多く、また、一定の耐震基準を満たしている物件については、地震保険料の割引があることも参考にされてください。
マンションの場合は、管理費や修繕積立金の滞納がないかも確認を。万一滞納があれば、物件と一緒にそれらを納付する義務も引き継ぐことになります。
(佐藤)
知っ得情報
ホームインスペクション
住宅の状態に関して、建物に精通した専門家が第三者の立場から点検する作業を「ホームインスペクション(住宅診断)」といいます。
建物の劣化状況や、補修が必要な時期や規模などの目安を把握した上で取引できれば、より安心ですよね。
宅建業者には、ホームインスペクションについて説明を行うことが義務付けられています。詳細は、媒介契約の際にしっかり確認されてください。
(佐藤)
県内の地価が上昇傾向 今後も値上がりは続く?
Q.
子どもが大きくなり、戸建ての新築を考えています。県内の地価が軒並み上昇傾向にあると聞きましたが、本当でしょうか。今後も値上がりは続くのでしょうか。
A.
土地の価格は、国や地方自治体、売主、買主の必要に応じて5つの価格が付けられています(表参照)。私たちが購入する際に関係してくる価格は実勢価格で、その基準となるのが公示価格や基準地価です。
その中で、公示価格の住宅地の動向を見てみます。
公示価格は、国土交通省の土地鑑定委員会が、全国の都市やその周辺地域から選んだ標準地について毎年1月1日時点の適正価格を調査、3月に公表しているものです。最新の公示地価は、国土交通省が運営するサイト「土地総合情報システム」で確認できます。
2023年の住宅地の地価の全国平均は前年比で1.4%上がり、2年連続で上昇。上昇率も拡大しました。東京圏、大阪圏、名古屋圏の三大都市圏はもちろん、地方圏平均でも同じ傾向が見られます。コロナ禍が落ち着いて経済活動が活発になり、その傾向は顕著になりつつあるようです。
熊本県も同様に上昇しており、23年の住宅地の平均価格は5万5321円で、前年比103.8%となっています。ちなみに上昇率が最も高かった場所は、菊陽町津久礼石坂2172番25で、前年から120.81%上がりました。これは、世界的半導体メーカーの台湾積体電路製造(TSMC)進出に伴うものとみられます。
一方で、前年から下がった場所もあり、一律に値上がりするわけではありません。上昇が続くかどうかは、その場所の周辺環境の影響によるところが大きいと思います。
(浦田)