温泉天国・台湾!台北から日帰り可能「北投温泉」の魅力と温泉施設を現地記者が紹介【台湾ってこんなトコVol.16】

この記事を書いたのは


NNA台湾記者・張成慧
NNA台湾編集部に勤める30代の台湾人女性。大学時代に交換留学生として日本に約1年間滞在して以来、日本が恋しく年に2回のペースで各地を訪ねています。旅やアート作品などを通じて、自身の感性が磨かれるものごとを見つけるのが好き。
日本統治時代に発展した「北投」の温泉と歴史を満喫!


沖縄より南に位置する台湾。
南国のイメージが強いと思いますが、北部は亜熱帯気候に分類され、冬には気温が1桁台まで下がる日もあります。
加えて湿気が多いことから、体感的な寒さは日本の冬にも引けを取らないと思います。
こんな時、温泉に漬かることができたら最高ですよね!
ユーラシアプレートとフィリピン海プレートが接する台湾は環太平洋火山帯に位置し、北から南まで多くの温泉があります。
台北の北投温泉、宜蘭の礁渓温泉、台東の知本温泉、台中の谷関温泉、台南の関子嶺温泉などは台湾人にとって人気の観光地です。
今回、すぱいすの読者の皆さんに紹介する北投温泉は台北市内にあり、台北捷運(台北MRT)で簡単にアクセスできます。
温泉だけではなく、「新北投車站」や「北投温泉博物館」、「北投文物館」、北投の泉源の一つである「地熱谷」などの観光スポットも訪れ、日本統治時代に発展した北投の歴史も振り返ります。
まずは北投の歴史を知りましょう
北投温泉博物館を見学
北投温泉博物館の展示資料によると、1895年に日本が台湾の統治を始めた後、北投温泉を気に入り、ここを軍人が療養する拠点としたそうです。
1896年には日本人の平田源吾氏が開設した「天狗庵」が開業し、それ以降、北投の温泉業は次第に発展。温泉旅館が次々と開業しました。1913年には当時の台北庁長の井村大吉氏の計画で、公共浴場が完成しました。
当時の東アジア地域で最も大きく、最も豪華な公共浴場だったそう。
今は北投温泉博物館として活用されています。




観光スポット「新北投車站」北投一帯の歴史資料も展示
温泉客が訪れやすいよう、1916年には北投から温泉エリアまでの鉄道の支線ができました。
この路線は「浴場線」と呼ばれ、これに伴い、新北投駅が誕生しました。
現在の台北MRT新北投駅の1番出口そばにある「新北投車站」はかつての駅舎を修復し、組み立てたもので、北投一帯の歴史を紹介しています。




最高級温泉宿「佳山旅館」は戦後「北投文物館」に
交通面の整備に伴い、温泉旅館の産業は大きく発展し、1935年までに北投には28軒の温泉旅館ができました。
1921年には日本の吉田一族が当時、北投で最も高い場所に、最高級の「佳山旅館」を建てました。
建築様式には書院造りを採用。60畳の大広間もあったそうです。
旅館と料亭を営んでいましたが、別館と茶屋も増設しました。
戦後、吉田一族は旅館を政府に売却しました。
一時、外交部(外務省)の職員宿舎として使用されましたが、政府は、木造建築は維持・保護するのが困難なことから民間に売却します。
台湾の企業家と民俗文物収蔵家が共同で建物を借り受けて博物館として利用することとし、1984年に「台湾民芸文物之家」を創設します。
1987年には台湾民芸文物之家は今日の「北投文物館」に改称しました。
建物は佳山旅館時代の構造をとどめ、館内では台湾文化に関する展示などを行っています。
台湾の漢民族と先住民に関する文物約5,000件を収蔵し、日本文化に関連する展示も開催。
日本式のレストランもあり、茶道や和菓子などの体験講座なども開かれています。






いよいよ北投温泉を巡ります!
北投温泉の泉質は三つ「白コウ泉」「青コウ泉」「鉄コウ泉」
北投の歴史を紹介したところで、次は温泉の時間ですよ!
北投の温泉は成分によって大きく三つに分けることができます。
白コウ泉(コウ=石へんに黄)と青コウ泉、鉄コウ泉です。
白コウ泉はお米を水で洗った時のような色をしていて「牛乳の湯」とも呼ばれます。弱酸性(pH3~4)で、北投の大多数の温泉旅館はこの白コウ泉です。
青コウ泉は地熱谷を泉源とし、色は透明に近い青緑色をしています。pHは1~2。硫酸塩鉱物と微量のラジウムを含みます。
熱気がゆらゆらと立ち上る「地熱谷」を散歩
地熱谷の面積は約3,500平方メートルに及びます。場所は大屯火山群地熱帯の南西部に位置し、谷から湧き出る温泉の温度は90度以上に達します。
長期間にわたる沈殿作用により、新北投地域を流れる北投渓の河床の岩塊表面で結晶化し、これが世界で唯一、台湾の地名から命名された希少鉱物「北投石」となりました。




北投はかつて台湾先住民のケタガラン族の集落があった場所で、北投という地名はケタガラン族の「PATOU」という言葉に由来しているといわれます。PATOUは「女巫(魔女)」を意味し、温泉の湯気は神秘的なものを感じさせることから、こうした名前が付けられたそうです。
地熱谷の周辺には歩道が整備され、ゆらゆらと立ち上る熱気に触れて歩くと、肌がつやつやしたような気分になります!


ゴージャスなお風呂時間を体験 三つの温泉施設をご紹介
新北投周辺の地図を開いてざっと数えると、リーズナブルなものから豪華なものまで20余りの温泉ホテルがあります。多くが入浴のサービスも行っています。日帰り旅行でも温泉を楽しむことができます。
続いて皆さんにご紹介するのは、豪華な大浴場を備えた「Villa32」、親子で一緒に楽しむのにお勧めの「春天酒店」、歴史ある日本式浴場の「瀧乃湯」という趣の異なる三つの温泉施設です。
豪華な大浴場を備えた「Villa32」
まずは地熱谷に比較的近いVilla32を訪れました。


Villa32に入ると、緑豊かな光景が目に飛び込んできました。マーケティング・PR担当の丁さんによると、「泉、木、樹、石」はVilla32が重視する四つの要素だそうです。


Villa32は2004年の設立。「松、櫻、碧、玉、晶」という五つの日本式と西洋式の客室を備え、宿泊料金は1晩2万~4万台湾元(約9万~18万円)。宿泊せずに温泉のみの利用を予約することができます。




八つの温泉とサウナに加え、館内にはラウンジや仮眠室、禅室も
Villa32の大浴場は前棟と後棟に分かれ、前棟は毎月1~15日が女湯、後棟は男湯となり、毎月16日に入れ替わります。毎月第2月曜日はお休みで、清掃が行われます。
前棟、後棟ともに室内と屋外に八つの温泉とサウナなどがあります。温泉は白コウ泉と青コウ泉があり、一度に両方の泉質を楽しむことができる北投でも珍しい場所です。




温泉施設以外に、前棟と後棟ともにラウンジや仮眠室、禅室も備え、館内の浴衣を着用して休憩を取ることもできます。






「Villa32」の大浴場の営業情報
営業時間 | 10:00~23:00 |
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休業日 | 毎月第2月曜日 |
利用可能年齢 | 16歳以上 |
予約 | 宿泊と入浴にかかわらず、電話やメールなどで事前予約が必要。 |
入浴料金 | 平日1人1,980元、休日2,580元 |
利用時間 | 4時間で、入場は1回限り |
普済寺の「湯守観音」
地熱谷のそばから坂を上っていくと、100年余りの歴史のある「普済寺」に到着します。寺には「湯守観音」と呼ばれる石像があります。




親子連れにぴったり「春天酒店」
続けて紹介するのは親子連れに優しい施設です!
春天酒店は二十数年の歴史を持ち、北投で最も大きな露天風呂を備えています。
露天風呂は男女混浴のため、水着とスイムキャップを着用して入ることが義務付けられています。


春天酒店の露天風呂は親子向けをはじめとする8つの温泉と岩盤浴があります。温泉は白コウ泉で、陽明山南西の「龍鳳谷」を泉源としています。


春天酒店には個室の風呂や客室の風呂もあり、このうち個室の風呂はリーズナブルなので、お一人様から人気を集めているそう。


会員制クラブには半露天の大浴場やプール、ジムなどもあり!
このほか、春天酒店には会員制クラブがあります。半露天の大浴場やプール、ジムなどの施設を備え、非会員でもその都度料金を支払えば入場でき、当日は時間制限なしで利用できます。




「春天酒店」の営業情報
営業時間 | 露天風呂は9:00~22:00 個室風呂は24時間営業 |
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休業日 | 年中無休 |
入場料 | 露天風呂:大人800元、子ども550元、110センチ未満は無料。宿泊の場合は無料で利用可能。 個室風呂:大人600元、子ども400元。110センチ未満は無料 |
利用時間 | 個室風呂:1時間 |
客室の風呂 | 利用時間は2時間で3,300~3,900元 1部屋の基本使用人数は2人で、1回2時間まで |
備考 | 個室風呂と客室の風呂は事前予約は受け付けておらず、ホテルにて利用を申し込む |
日本統治時代にルーツを持つ「瀧乃湯」
最後に紹介するのは「瀧乃湯」です。
瀧乃湯の歴史は日本統治時代にさかのぼります。
かつては旧日本軍の療養に使用され、戦後は台湾政府が引き継ぎ、1950年代に台湾の林家によって受け継がれました。現在は林佳慧さんと姉妹の計3人が共同で経営しています。




林家が経営を引き継いだ後、女湯を増設し、瀧乃湯は近所の人たちが毎日やってくる公共浴場となりました。


瀧乃湯は2016年に大規模な修復を行いました。翌年完工後に新たな装いで再び営業を始めました。
林さんによると、修復後は観光客が増えたといい、現在は入浴客のうち、地元の常連客と観光客が半々になっているとのこと。
近隣住民の中には瀧乃湯に半世紀近く通っていて、新たに瀧乃湯を利用する人にマナーなどを伝授する人もいるそう。
瀧乃湯は常連客のニーズに合わせて、お湯の温度は42~45度に設定しています。林さんは、この温度は日本人には少し高めであまり慣れないかもしれないと指摘します。
もし高めの温度に慣れなければ、瀧乃湯には個室風呂もあるので、水で割るなどして温度を調節することもできます。


瀧乃湯には足湯施設「瀧萱坊」も!
瀧乃湯では足湯施設「瀧萱坊」が2021年に開業しました。林さんによると、日本を旅行した時にインスピレーションを得たそうです。






「瀧乃湯」の営業情報
大浴場 | 個室風呂 | 瀧萱坊 | |
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営業時間 | 6:30~11:00、12:00~17:00、18:00~21:00。各時間帯とも営業終了の1時間前を最終入場時間とする。 | 12:00~18:00。最終入場時間は17:00。毎日6:30から電話で予約を受け付ける。 | 毎週木~日曜日の14:00~19:00 |
利用者 | 6歳未満は利用できない。6~11歳は大人同伴必須 | 安全面への配慮から1人での使用は不可。11歳以下の子どもは大人2人による同伴が必要。 | |
料金 | 平日・休日ともに1人1回150元 | 2人用は1時間2人で400元、家族向けは1時間2人で600元(1人増えるごとに50元を加算)。6歳未満の子どもは利用無料。 | 40分で100元。ドリンク1杯付き。 |
備考 | タオルなどは準備するか、カウンターで購入する | 事前予約可能。毎年6~9月は営業を停止。 | |
休業日 | 毎週水曜日 | 毎週水曜日 |
以上が北投温泉の特集でした。
まずはアクセスしやすい北投温泉から始めて、台湾各地でお気に入りの温泉を探してみてくださいね!







