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伝わる喜びと分かるうれしさ【医療従事者によるリレーエッセー】

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vol.114

「伝えたいことが伝わった」「言われたことが分かった」というときは本当にうれしいものです。言葉のやりとり、コミュニケーションには「話せる言葉」と「聞いて分かる言葉」が必要です。人は一般に、聞いて分かる言葉の方を、話せる言葉よりたくさん持っています。

私は障がいのある子どもたちの医療に20年以上携わってきました。言葉やコミュニケーションの難しい子ども、話し言葉が十分でない子どもも、話せる言葉以上に聞いて分かる言葉をたくさん持っています。

ある時、話せる言葉は片言ですが、病棟スタッフの名前と顔は全部分かっている入院中のAちゃんに、隣のベッドに新しくBちゃんが来ることを伝えようと思いました。4人部屋の病室で人形などを使い、「これはAちゃんで、ここはAちゃんのベッド。今隣のベッドにCちゃんがいるけれど、Cちゃんははす向かいに行って(とCちゃん人形を移動)、今度隣にBちゃんが来るよ(とBちゃん人形を置く)」と伝えました。

“初めて”が苦手なお子さんも多いため前もって説明しておこうと考えたのは私の自己満足に過ぎないと思っていました。しかし私の話を聞くとAちゃんは「新品、新品」と言い出したのです。きっと「新人」と言っている、理解してくれたと、勝手な解釈ですが「伝わった」という、うれしい気持ちになりました。

言葉の理解が難しいと思われる子どもや障がいのある人にも、分からないと決めつけないで、説明は大切だなと実感した出来事でした。

くまもと江津湖 療育医療センター 小児科 医師 山田 みどりさん

くまもと江津湖 療育医療センター 小児科 医師

山田 みどりさん

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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