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「見える」で日々の充実を【医療従事者によるリレーエッセー】

「見える」で日々の充実を【医療従事者によるリレーエッセー】

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慈愛の心 医心伝心 vol.134

眼科医の駆け出し時代から10年ほど、フィットネスジム通いを続けました。そこで知り合った方のお母さまの白内障手術を任せていただく機会がありました。90代で膝が悪く車椅子をお使いでしたが快活な性格で、病院スタッフや他の患者さんらと笑顔で話されていたのが印象的でした。

手術から2年後、お母さまが亡くなられたことをジムで聞きました。「最期まで『家族の顔がよく見える。白内障手術をして本当に良かった』と言っていました」と。

90代での白内障手術は、患者も執刀する側も簡単ではありません。その後の2年間とても充実していたと伺うことができ、この仕事を頑張っていて良かったと涙が出るほどうれしく思いました。

加齢性白内障は例えるなら目の白髪のようなものですが、発症時期や程度にはかなり個人差があります。かすみ目や光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)感から始まり、徐々に視力が低下します。進行して見えにくくなれば根本治療は手術です。

技術が進歩し、外来手術で「あっという間に終わった」と体感されることが増えていますが、年齢や進行具合、目の特性によっては2時間近くかかることや、複数回の手術が必要な場合があります。

シニア層の社会的役割が増え、仕事や運転を続ける人が多い昨今、早めに白内障手術を検討するケースが増えているように感じます。年齢を重ねても楽しく充実した日々を送るために「QOV」(Quality of Vision=視覚の質)を保つことはとても重要です。私の仕事が誰かの日々の充実の一助になれるよう、これからも頑張りたいと思います。

熊本大学大学院 生命科学研究部 眼科学講座  助教 福島 亜矢子さん
熊本大学大学院 生命科学研究部 眼科学講座
助教 福島 亜矢子さん

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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