ななみ先生と浦田先生が答えます! 住まいと暮らしのQ&A[2024 夏]
ライフプランを考える際、切っても切り離せないのが「お金」という存在。できるだけ上手に付き合っていきたいものです。本紙「家計簿チェック」「お金の話」講師の佐藤ななみさんと浦田幸助さんに、知っておきたいお金の情報について聞きました。
今月から「定額減税」スタート 給与明細“しっかり見る”契機に
サラリーマンの皆さん、給与明細はご覧になっていますか? ペーパーレス化で給与明細も電子配布される時代。「口座に振り込まれた手取り額しか見ていない」という人も少なくないようです。
さて、毎年6月は新年度分の住民税の徴収が始まる月です。特に社会人2年目の人にとっては、初めて住民税が差し引かれ、例年なら、手取り額の減少に衝撃を受けるかもしれません。しかし今年は、定額減税の施行により、一部の高額所得者を除いて手取り額の増額が期待されます。6月給与分からは住民税は徴収されず、所得税も結果として天引きされない人が多いのでは。個別には「定額減税分」として明記されます。
給与明細にはこのほか、厚生年金や健康保険など社会保険料も記載されており、これがなかなか高額な負担です。しっかり確認して、納付意識を持つことが重要ですね。
(佐藤)
親の援助で住宅購入を検討 贈与税の特例について教えて
- 住宅を購入する際、自己資金の一部について親から贈与を受けたいと考えています。「住宅取得等資金贈与の特例」という制度があると聞きましたが、制度のポイントや利用する際の注意点を教えてください。
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26年12月31日までの贈与に適用 最大1110万円まで非課税
この特例は、子や孫が住宅を購入する際に父母または祖父母が援助した資金に対し、一定の金額までは贈与税が課されないというものです。2023年までの特例でしたが、24年度税制改正で3年延長となり、26年12月31日までの贈与に適用されることになりました。このほか、非課税限度額1000万円の「良質な住宅」に関して、新築住宅の省エネ性能要件が「ZEH水準」(断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上)と厳しくなりました。
贈与税は基礎控除110万円が設定されており、1年間の贈与額が110万円以内であれば課税されません。従って、住宅取得等資金贈与特例の1000万円と、暦年課税の基礎控除額110万円を合わせ、最大1110万円までの贈与が非課税になります。
ちなみに、非課税枠は贈与される側に対するものです。祖父や父など複数の人から贈与を受ける場合は、合計額が1100万円以内となる点に注意を。また相続開始前の最長7年以内の贈与は、本来は相続財産とみなされ、基礎控除の110万円を含め相続税の課税対象になりますが、この特例部分の贈与は相続財産に含まれず相続税の課税対象になりません。
(浦田)
「住宅取得等資金贈与の特例」のポイント
贈与者 直系尊属(父母、祖父母、曽祖父母など) 受贈者 その年の1月1日現在、18歳以上の直系卑属
その年の合計所得2,000万円以下の者に限る(新築等をする住宅用の家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、1,000万円以下)控除額(非課税枠) (1)省エネ・耐震性・バリアフリー住宅…1,000万円
・省エネ要件:断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上であること
・耐震要件:耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免振建築物であること
・バリアフリー要件:高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること
(2)上記以外の住宅…500万円相続発生時の相続財産への加算 非課税の特例のため、相続財産への加算なし 適用期限 2026(令和8)年12月31日までの贈与 ※赤字が改正点
「円安」の意味が分からない 良くない印象も受けるが…
- 円安が続いているそうですね。「1ドル○円」の数字が大きくなるほど安いということが、今一つピンときません。報道などで、あまり良くない印象を受けますが、円安は悪いことなのでしょうか。
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物価が上がり 消費生活は厳しく 輸出主体の企業などには追い風
外国の通貨と日本円を交換する比率のことを「為替相場」といいます。為替相場は外国為替市場における需要と供給のバランスで刻々と変動しています。
為替相場について、米ドルと日本円の交換比率で考えてみましょう。例えば、1ドルが150円から155円になった時に「円安」といいます。見かけの数字が大きくなったのに「安」とは混乱してしまいますね。しかし、落ち着いて見てみると、高くなったのは「1ドル」の値段です。ここは「円安」を「ドル高」と捉え直すと、分かりやすいかもしれません。
また、裏返すと1ドル150円の時、100円と交換するには0.666ドルが必要ですが、1ドル155円になると100円の対価は0.645ドルです。円は確かに安くなっていますね。
為替変動は、善悪で語る問題ではないと思います。食料や資源を輸入に頼るわが国では、円安で輸入品の価格が上がり、波及的に物価が上昇しています。消費生活の面では確かに厳しいですね。半面、海外から見ると、日本の優良な商品・サービスを安く買えるため、輸出や外国人旅行者による売り上げが増加し、関係企業は利益を大きく伸ばしています。円安も円高も、立場によって影響が異なるということです。要は程度の問題ということでしょうか。
(佐藤)
知っ得情報
変動相場制と固定相場制
外国為替市場において、貨幣の需給バランスで為替相場が変動する方式を「変動相場制」といいます。対して、一定のレートに固定するのが「固定相場制」です。
円ドルの交換レートは、第二次大戦後~1973年まで固定相場制を敷いており、その大半の期間で、1ドル360円でした。変動相場制となって以降、円は徐々に値を上げ、最も円高となったのは2011年の1ドル75.32円。大きな幅で動いた歴史が垣間見えますね。
(佐藤)
「金利が上がる」と聞いたが… 家計への影響や対策は?
- 日銀がこの春、「マイナス金利」を解除しましたね。これにより金利が上がるという話を最近、聞きました。家計にどういった影響があり、どんな対策が必要ですか。
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銀行預金や住宅ローンなど影響 資産運用は選択の幅広がる
日銀は3月にマイナス金利政策を解除、金利を0.0%~0.1%の範囲になるよう引き上げると発表しました。これに伴う家計への影響を考えてみます。
- 銀行預金の金利が上昇、生命保険料は下落…実際に多くの銀行で普通預金金利を年0.001%から0.02%に引き上げ。一方で、生命保険料は下がる傾向にあります。
- 住宅ローン金利(固定型)が上昇…長期金利の影響を受ける「固定型」の金利は、引き上げが始まっています。一方、銀行が企業に融資する際の基準金利となる「短期プライムレート」は変化していないため、その影響を受ける「変動型」は上昇していません。
- 株価が下落…金利の引き上げは、理論的には景気を落ち着かせる効果があります。ただ、株価は金利だけでなく、企業の業績や日本経済の動向見通しにも左右されるため、必ず下落するとも限りません。
マイナス金利解除で、これまで長く続いた金利のない時代から、金利のある世界へと徐々に変わっていくと思います。これから住宅ローンを組む人は、変動型にするか固定型にするか。また月々の返済額だけでなく、その他にかかる出費についても慎重にシミュレーションすることが大切です。資産運用に関しては、金利引き上げにより、投資方法や銘柄などの選択の幅が広がるため、金融商品の知識を身に付けることが、より重要になると思います。
(浦田)
知っ得情報
金利上昇 為替レートにも影響
金利上昇の影響には「為替レート」もあります。現状では、日銀と、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のスタンスの違いから「円安」が続いています。しかし、日銀がさらに金利を引き上げ、米国のインフレ率が落ち着いて、FRBが利下げに転じれば、「円高・ドル安」が進むかもしれません。ただ現時点では、日銀が利上げをしても、緩やかなペースにとどまると見込まれています。
(浦田)
住宅ローン減税の優遇 子どもがいなくても対象に?
- 住宅の新築を計画中です。住宅ローン減税について、子育て世帯には優遇があると聞きました。子どもはまだいませんが、数年内に希望しています。わが家のような世帯は優遇を受けられるでしょうか。
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若年者の年齢条件満たせばOK 今年に限り控除限度額の特例
新築住宅に関する住宅ローン減税の特例は、「19歳未満の扶養親族がいる子育て世帯」もしくは「夫婦のいずれかが40歳未満の若年者世帯」が対象です。お子さんはこれからとのことで、若年者の年齢条件を満たしておられるのであれば、対象となり得るかと思います。
住宅ローン減税は、一定の住宅ローンを返済中の人について、年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税から(控除しきれない場合は住民税からも)税額控除するものです。新築の場合、環境に配慮した住宅は取得から13年(一般住宅は10年)、中古住宅だと10年にわたり税が軽減されます。
控除対象となる住宅ローン残高には、入居時期や住宅性能で、異なる上限が設けられています(表参照)。2024、25年の上限額は、22、23年と比べて抑えられる予定でしたが、子育て・若年者世帯は24年も引き続き、前年までの基準が適用されることになりました。
住宅ローン減税を受けるには、
- 対象者の合計所得金額が2000万円以下
- 対象物件の床面積が50㎡以上
- 住宅ローンの償還期間が10年以上
―などの要件を満たす必要があります。このうち(2)について、合計所得金額1000万円以下の人(年齢不問)が24年末までに建築確認を受けた場合、「40㎡以上」に緩和されることも併せてご紹介しておきます。
(佐藤)
住宅ローン控除上限額(新築の場合)
住宅の種類 対象者 2022・23年 2024年 2025年 認定長期優良住宅
認定低炭素住宅若年・子育て
上記以外5,000万円 5,000万円
4,500万円4,500万円 ZEH水準省エネ住宅 若年・子育て
上記以外4,500万円 4,500万円
3,500万円3,500万円 省エネ基準適合住宅 若年・子育て
上記以外4,000万円 4,000万円
3,000万円3,000万円 一般住宅 若年・子育て
上記以外3,000万円 なし※ なし※ ※一般の新築住宅のうち、2023年末までに建築確認を受けたもの、または24年6月末までに建築されたものは、限度額2,000万円(控除期間10年間)