数値の前提条件には注意が必要 方向性にかなうデータの採用を【知りたい!お金の話】
【今回のスタディー】統計値の取り扱い
お尋ねします。①「あなたは、老後を夫婦2人で暮らしていく上で、日常生活費として月々最低いくらぐらい必要だとお考えですか。(※)」②「経済的にゆとりのある老後生活を送るには、今お答えいただいた金額のほかに、あといくらぐらい必要だとお考えですか。(※)」
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(2022年)」によると、①②の合計額は、平均37.9万円だそうです。この数値は、個人年金保険など老後資金づくりを目的とした金融商品の募集資料などでよく用いられており、触れたことがある方もおられるでしょう。
ところでこの調査は、18~79歳(うち約6割が50代以下)を対象に、冒頭①②の質問に対する回答を集計した値であることはご存じでしょうか。つまり、現に老後生活を送っている世帯の実績値を集計した金額ではなく、幅広い年齢層の人たちが「これぐらいかしら?」と想像している金額の平均値だということです。
ちなみに「月37.9万円の生活費」を現役世代に置き換えると、少なくとも年454.8万円の手取り収入が必要で、これをサラリーマンの税込み年収に換算すると、570万~600万円程度に相当します。この金額をどう思いますか。そして現役世代の多くは、手取り年収の中から、日常生活費のほか、住宅ローンの返済や育児費の負担、教育・老後資金などの蓄えにも同時に取り組んでいるものです。資力が許せば、老後生活費にいくら費やすのも自由ですが、この意識調査の値は、決して「ねばならない」数値ではないことは押さえておくべきでしょう。
統計データを生活設計の参考にするのは有益なことですが、数値の前提条件には十分注意を払う必要があることを知っておいてください。内容を精査し、あなたの方向性にかなうデータを参考に、自身の希望や考えを軸とする姿勢が重要です。
※生命保険文化センター「生活保障に関する調査(2022年)」より引用
平均値と平均像
例えば、「100万円の貯蓄を持つ100人の集団」がある場合、この集団の平均貯蓄額は100万円ですよね。また、「100人のうち1人が1億円を持っていて、残り99人が貯蓄ゼロの集団」があったとすると、こちらも平均貯蓄額は同じく100万円となります。平均値は同じでも、構成員の平均像はまるで異なることが分かりますね。
少々極端な例えでしたが、平均値とはこのように、他の多くから極端に離れた数値を含んでしまうと、平均像からかけ離れた数値を示す傾向があり、生活設計の参考とするには違和感が残ります。平均像を捉えたいのであれば、多くの人の傾向を示す「中央値」に注目してみることをお勧めします。
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