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    熊本・南阿蘇「地獄温泉 青風荘.」|熊本地震や豪雨乗り越え再開。3兄弟が守り続けた山の中の湯治場が新たな時代を迎える

    温泉ソムリエが探る!くまもと温泉ものがたり#01

    ぴちこ

    熊本の温泉ソムリエ・第一号の「ぴちこ」が熊本県内の温泉宿にまつわる、歴史や人、風景、食など、訪ねた人にしか感じられない魅力を発信します!

    2016年の熊本地震、その後の豪雨による土砂災害…。

    大きな被害を受けたものの2021年4月に全面再開し、早くも3年がたった南阿蘇にある「地獄温泉 青風荘.」

    そこには、力を合わせて温泉を守り続けるオーナーの河津3兄弟とその親族の姿がありました。

    次男の謙二さんに、今思うこと、そしてこれからについて、お話を聞きました。

    目次

    3兄弟が守り続ける江戸時代から続く湯治場

    地震前の「すずめの湯」
    熊本地震前の「すずめの湯」。左の建物が男女別の脱衣所と内湯、右が混浴露天風呂。奥には社員寮がある

    南阿蘇村にある「地獄温泉 清風荘(現青風荘.)」は、江戸時代に湯治場(とうじば:治療が目的の温泉)として産声を上げ、約200年という長い歴史を持つ温泉宿です。

    長い間、多くの人々がわざわざ通った目的は、足元から湧出する混浴露天風呂「すずめの湯」をはじめとした温泉や、囲炉裏料理やフランス料理などの選べる食事でした。

    大自然に囲まれた秘湯で過ごす非日常の時間は、多くの人々を癒やしてきました。

    私自身も幼い頃に祖父母と訪れたり、車の免許を取った時に友人とドライブに出かけたり…。そして取材にも幾度か訪れたことのある、思い出深い温泉施設の一つです。

    民家の間を抜け、山道を進み、温泉らしい硫黄の香りが漂ってくると、「もうすぐ地獄温泉だ」とスイッチが切り替わり、心がOFFになれる場所です。

    南阿蘇の秘湯宿を切り盛りする3兄弟

    青風荘.オーナー
    右から長男・河津誠さん、次男・謙二さん、三男・進さん

    そんな温泉宿を切り盛りしているのは、河津3兄弟です。

    長男・誠さんはフランス料理、三男・進さんは日本料理、次男・謙ニさんはアメリカや福岡でホテルマネジメントを学ぶなど、それぞれがその道のプロフェッショナルとして力を蓄えた後、地元に戻り、先代の思いを受け継いで秘湯宿を切り盛りしていました。

    地震前の「元湯」
    熊本地震前の「元湯」。男女別の内湯でとにかく湯温が熱い!

    熊本地震で孤立状態に、さらに豪雨も

    3人に大きな壁が立ちふさがったのが、2016年4月の熊本地震でした。

    地震によって道路が分断され、宿は孤立状態になり、取り残された宿泊客や従業員がヘリで救助される様子は、全国ニュースでも流れました。

    さらに、その年の6月の豪雨により起きた土砂災害では、広い敷地内に点在する建物に土砂が流入し壊滅的な状態に…。

    それは、誰もが宿の再開は絶望的だと思うほどでした。

    ボコボコと湧く奇跡の湯

    自噴する温泉
    湯船の底・足下から自噴する「すずめの湯」

    「奇跡が起きたんです。『すずめの湯』は土砂に埋まることなく、ボコボコとお湯が湧いていました。この温泉を守れば、地獄温泉は再生する!そう復活を確信しました」(次男・謙二さん)

    そこで3人が考えたのが、「宿を元に戻して再開するだけではなく、災害前からの課題も解決しよう」ということ。

    「どんなに温泉が素晴らしくても、建物は古く、経営は厳しい状態でした。歴史がある分、変化することが難しかったんです。しかし、地震を機に、200年以上の歴史を守りつつ新しいことにもチャレンジしてみよう!と、前向きにとらえ、ワクワクしました」

    2度の災害を乗り越え、一歩ずつ理想に近づける

    再開後のすずめの湯
    「すずめの湯」の露天風呂は地震前のまま復活

    屋号を変え、すずめの湯を再開

    2019年4月、宿名を「清風荘」から「青風荘.」に一新し、希望の湯「すずめの湯」の日帰り入浴を再開しました。

    災害を機に、以前から考えていたという屋号を変更。理由を長男の誠さんに尋ねると…。

    「『清』の文字に違和感があったというのが大きな理由です。3つの源泉が湧き出る恵まれた地でありながら、昔から飲料水の確保に苦戦し、創業以来、水に苦しめられていました。そして、今度は大雨による土石流。水の被害と苦労がなくなるよう『清』の『氵』を外し、一つの区切りとして最後に『.』を付けました」。

    すずめの湯
    看板には、温泉の水素イオン濃度を示すpH1.7という文字が!熊本随一の酸性の温泉で殺菌・抗菌力が強いと言われている

    「すずめの湯」は、それまで裸で利用していた混浴露天風呂から、湯浴(ゆあ)み着や水着の着用を義務付けることで、老若男女が集いやすい温泉に

    さらに、25℃未満の冷たい温泉「冷鉱泉」のプールを設け、温冷交互浴が楽しめるスパのような場所に生まれ変わりました。

    たまごの湯
    おしゃれに生まれ変わった「たまごの湯」
    たまごの湯・露天
    「たまごの湯」の露天風呂は、以前からある「仇(あだ)討ちの湯」の姿のまま(男湯が見えるとしてそう呼ばれていましたが、のぞけません、笑)

    2019年の秋には男女別の浴場「元の湯」「たまごの湯」を再開

    翌年4月にはフロント棟とレストランが完成しランチも再び始めました。

    静かだった山の中の湯治場に、人々の笑い声が響く日々が戻ってきました。

    コロナ禍でレストランが休業に

    レストラン
    レストラン「山竈処(yamakudo)」。現在はカフェのイートインスペースと宿泊者用のレストランとして運営

    ところが2020年のコロナ禍で、再開したレストランは休業を余儀なくされます。

    「2020年9月に離れをオープンし宿泊者の受け入れを再開すると、厨房スタッフの数が足りない状態に…。食事に力を入れている当宿だからこそ、レストランは休業することにしました」と謙二さん。

    ※レストラン(ランチ)は現在も休業中です。

    曲水舎
    元々食事処だった「曲水(きょくすい)庵」は歴史を感じる梁(はり)を活かした湯治宿「曲水舎」に生まれ変わった

    2020年11月には湯治宿を備えた「曲水(きょくすい)舎」もオープン。

    そしていよいよ迎えた全面再開

    「2021年4月に本館もオープンしたのですが、やはりコロナ禍ということで、大々的にというよりは粛々と全面再開を果たしました。今となっては、コロナ禍は徐々に再開するための研修期間としてちょうどよかったのかなと思っています」(謙二さん)

    続きはno.2へ

    地獄温泉 青風荘.

    住所阿蘇郡南阿蘇村河陽2327
    TEL 0967-67-0005
    Webサイトhttp://jigoku-onsen.co.jp
    営業時間10時〜17時(15時受付終了)
    休業日火曜(祝日の場合は営業)
    駐車場複数あり

    H_NNTO COFFEE

    住所阿蘇郡南阿蘇村河陽2327
    TEL070-4095-9555
    Webサイト https://www.instagram.com/h_nnto_coffee
    営業時間10時〜17時
    休業日火曜(祝日の場合は営業)
    複数あり
    駐車場複数あり

    記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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    この記事を書いた人

    温泉ソムリエ&温泉ソムリエアンバサダー・熊本第一号。熊本愛強めのフリーランスのエディター&ライターです。コロナ禍をキッカケに愛犬とのキャンプにハマり、「温泉×キャンプ」を楽しむ日々を送っています。

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