「台湾美食展」で各地の逸品を見つけた【台湾ってこんなトコVol.13】
この記事を書いたのは
NNA台湾記者・張成慧
NNA台湾編集部に勤める30代の台湾人女性。大学時代に交換留学生として日本に約1年間滞在して以来、日本が恋しく年に2回のペースで各地を訪ねています。旅やアート作品などを通じて、自身の感性が磨かれるものごとを見つけるのが好き。
台湾美食展で見つけた台湾各地の「味」を紹介します
毎年夏休み期間中に台北市で開かれている食品見本市「台湾美食展」。
今年は8月2~5日に開かれました。
会場では台湾各地の特産品や最新のグルメ情報が紹介されただけでなく、台湾の北から南まで各地にある有名レストランの看板料理も集結し、訪れた消費者がグルメを満喫しました。
今回は、すぱいすの読者の皆さまに、今年の台湾美食展で見つけた台湾各地の「味」を紹介したいと思います!
台湾でも日本酒を造るの?
台湾には有名な台湾ビールやウイスキーの「カバラン」がありますが、実は日本酒や焼酎を造っている醸造所もあります!
その中で代表的なのが台中市霧峰区にある酒蔵「霧峰農会酒荘」です。
台中市霧峰区は米どころで、800ヘクタール余りの水田で「益全香米」を主に生産しています。
霧峰農会酒荘のホームページによると、益全香米は「台農71号」とも呼ばれ、日本の「キヌヒカリ」と、タロイモの香りのする台湾の品種「台梗4号」を組み合わせてできたもので、濃厚なタロイモの香りがするそうです。霧峰農会酒荘はお酒造りに益全香米を使っています。
日本酒ファンとして、台湾美食展で初めて台湾で造られた清酒と焼酎、梅酒を飲みました。台湾人のわたしが言うのはちょっと申し訳ないように思いますが、個人的には日本の本場の味に引けを取っていないように感じました!
霧峰農会酒荘のブースにいた担当者によると、台湾の消費者に最も人気があるのは「ライチハチミツ酒」だそう。
ただ、わたしが試飲をして気に入ったのはアルコール度数38%の焼酎「初霧」と、台湾中部の南投と南部の高雄のウメを使い、焼酎をベースに造った梅酒でした。
どちらも食事と一緒に楽しむのにぴったりなお酒だと思います!
おいしくて、希少な「台湾コーヒー」
今回の台湾美食展の会場では台湾コーヒーが注目を集めていました。
コーヒー好きの人は「阿里山コーヒー」を知っているかもしれませんね。
今回の見本市では南部・嘉義の阿里山のコーヒー園が出展したほか、高雄の先住民地区や北部・桃園の山間部で採れたコーヒーも並んでいました。
温泉宿を経営していた夫婦が始めた「一山沐カヒ屋」
「一山沐カヒ屋(カ=口へんに加、ヒ=口へんに非、コーヒーの意味)」は高雄の先住民地区の「多納地区」で、コーヒー豆の栽培から焙煎、販売まで手がけています。
多納地区一帯はかつて温泉地として知られていましたが、2009年8月に発生した水害により温泉が土砂で埋まってしまいました。一山沐カヒ屋はもともと温泉宿を経営していた夫婦が始めました。
台湾の南北に延びる中央山脈の南麓にある多納地区の気候条件は、コーヒーの成長に適しているそうです。
まずは「ティピカ」の栽培から始め、その後、「パカマラ」や「SL28」などの品種を導入し、現地での栽培に成功しました。
阿里山の有名なコーヒーブランド「卓武山カヒ農場」
阿里山にある「卓武山カヒ農場」は2001年、市場の飽和傾向を理由に、従来の茶栽培をやめ、コーヒー豆の栽培に切り替えました。
それから20年余りの間、コーヒーのコンテストで優れた成績を残し、阿里山の有名なコーヒーブランドになりました。
焙煎や講座の運営を手がける「達文西カヒ」
コーヒーの焙煎やコーヒーに関する各種講座の運営を手がける「達文西カヒ」は近年、台湾コーヒーの普及に力を入れています。
阿里山や北部・桃園の山間部にある復興郷などのコーヒー園で採れた豆を仕入れ、自家焙煎し、販売しています。
達文西カヒの従業員は「台湾コーヒーは希少だが、小規模農家が次々と栽培に参入しており、台湾のコーヒー産業は少しずつ発展してきている」と教えてくれました。
「リュウガン干し」で作った各種食品
台南市の「山頂壮円」は、果物のリュウガン(龍眼)をリュウガンの木でいぶして作ったドライフルーツ「リュウガン干し(中国語では龍眼乾と書きます。桂円とも呼ばれます)」で事業を発展させました。
桂円を使って各種の食品を開発し、ブランドを確立させています。
山頂壮円のブランド創業者によると、桂円の歴史を調べていると、日本が台湾を統治していた時代、日本人が台湾で桂円のようかんを作っていたことが分かったそうです。
この創業者は当時の味を復活させることを決意し、岩手県のようかんの老舗と協力し、桂円味のようかんを開発しました。
山頂壮円はこのほかに、桂円を入れて醸造した黒豆しょうゆや、桂円を材料に蒸留したお酒のジンなどの製品も開発。
このうちしょうゆは、お年寄りがしょうゆだれで肉を煮る際、桂円を加えることに着想を得たそうです。
ジンは、台湾の米酒(もち米などで作った蒸留酒)をベースに、桂円やジンに欠かせない材料のジュニパーベリーなどを加えて蒸留させたものです。燻製の風味が感じられました。
ちなみにこのジンは、7月に台南市で行われた日本と台湾の会合で提供され、好評を得たそうです。
そして最も人気なのが冒頭で紹介したドライフルーツの桂円です。この商品は熊本県向けに輸出する予定だそうです。
世界で認められた台湾チョコレート
台湾南部・屏東県の「御巧可可巧克力坊(DiRaja Chocolate)」は、カカオの栽培からチョコレートの製造までを一貫して行う「ツリー・トゥー・バー」を展開するチョコレートブランドの一つです。
台湾でチョコレートの生産が行われていることに、多くの人が意外に思うかもしれません。
台湾農業部(農業省)のホームページによると、屏東県のカカオの栽培面積は栽培が始まった2000年代初頭以降、産官学の協力もあって拡大し、現在は300ヘクタールを超えているそうです。
カカオ農家は100戸以上、チョコレートブランドは30余りにのぼるといいます。
御巧の経営者の奥さんは結婚を機にマレーシアから屏東にやってきました。
彼女によると、屏東はカカオを栽培している場所としては最北端に位置するそうで、さらに北になると栽培に適していないとのこと。
こうしたことから、台湾のカカオ産業は屏東に集中していると教えてくれました。そして、屏東は、カカオの栽培とチョコレートの製造を行うことができる世界でも数少ない場所だと言います。
彼女は「カカオは多くの農産物と同様に、栽培する場所によって味が異なります。屏東のカカオの風味は、フルーツのような酸味と香りが特徴です」と紹介してくれました。
近年、屏東のチョコレートは国際的に認められることが増えてきました。
御巧も例外ではありません。西北部・苗栗の高山紅茶と組み合わせた紅茶味のチョコレートは2023年にフランスの農産物振興庁(AVPA)のコンテストのチョコレート部門で金賞を受賞しました。
このほかに、梅干菜(漬物の一種で、客家の伝統的な食材)と南洋カレーのチョコレートなど、経営者のルーツである客家と奥さんのふるさとであるマレーシアの文化を組み合わせた商品も売り出しています。
屏東のチョコレートは通常の販売ルートで買うのは難しく、これまで味わう機会がありませんでした。せっかくの機会だと思い、御巧のチョコレートを購入することにしました。
恐る恐る「梅干菜」のチョコレートを食べてみると、思いがけず濃厚な味が口の中に広がりました!梅干菜の塩辛さとチョコレートの組み合わせに何の違和感もありませんでした。
このチョコレートも23年にAVPAの同コンテストで高い評価を得たそうです。
以上が台湾美食展のリポートです。もし台湾に来る機会があったら、ぜひ味わってみてくださいね!