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リアルはドラマより素敵【医療従事者によるリレーエッセー】

リアルはドラマより素敵【医療従事者によるリレーエッセー】

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vol.120

「PICU(小児集中治療室)」をご存じですか? 重篤な病気やけがの治療を行う子どもの集中治療室のことです。最近テレビドラマに登場し、注目されました。現在、国内に35カ所あり、熊本のPICUでは年間約350人の子どもたちが治療やケアを受けています。

ある時、重症の肺炎になりPICUで治療を受けた小さな女の子がいました。入院してすぐに病状が悪化し、緊急の処置や手術などあらゆる手を尽くして治療を行いました。毎日ご家族に病院で待機していただくほど命の危険が差し迫った状態が1週間以上続きました。

しかし子どもの生命力は強いもので、厳しい時期をついに乗り越えて、私の想像を超えるスピードで回復に向かい、1カ月後に無事退院の日を迎えました。女の子は迎えに来たお父さんの姿を見つけると笑顔で走り寄り、こちらを振り返って「せんせー」と言って笑顔でバイバイ。PICUで働く小児科医にとって、こんなにうれしい瞬間はありません。

PICUでは、懸命に治療を尽くしても失ってしまう子どもの命と向き合うことがあり、心がつらくなります。一方で、退院していく子どもたちのリアルな笑顔は、ドラマで見るより何倍も素敵で小児科医の励みになります。「子どものためなら頑張れる」と小児科医になることを決めた、あの時の気持ちを思い出させてくれるのです。

今日も、熊本の子どもたちが家族と一緒に笑顔で平穏な日常を送れますように。

熊本赤十字病院第一小児科副部長 加納 恭子さん
熊本赤十字病院第一小児科副部長 加納 恭子さん

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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