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患者さんはどう過ごしたいのか【医療従事者によるリレーエッセー】

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vol.116

何事にもチャレンジするのが好きな患者Aさんは末期がんでした。Aさんを担当した時のことです。「次の桜は見ることが難しいかもしれない」。1月に主治医からAさんと奥さまへ告げられました。

Aさんは一人で歩くことができない状態でしたが「家に帰りたか。この体力じゃ無理かな」とつぶやき、奥さまは泣きながらも気丈に受け止めておられました。帰りたい理由を尋ねると「家ん桜は少し早く咲くったい」と言われました。厳しい状況でもAさんはチャレンジすることを大切にされているのだと感じました。

私にできる最後の看護は自宅に帰れるようサポートすることだと思い、すぐに準備を始め、退院を迎えていただくことができました。

それから1カ月後。お酒を片手に満面の笑みを浮かべるAさんの写真と、ご家族からの手紙が病棟に届きました。手紙には、自宅の桜を見ることはかなわなかったことや、家族に見守られながら最期を迎えられたことが記されていました。

写真のAさんは、退院時に「ありがとう。本当に帰れるとは思わなかった。やりたいことがたくさんある」と話されたのと同じ笑顔でした。禁酒したお酒にも再チャレンジしている様子は、とてもAさんらしいなぁと思いました。

医療従事者は、命に関するつらい話を患者さんやご家族にしなければならないことがあります。その時、私たち看護師は「患者さんがどう過ごしたいか」を一緒に考え、サポートすることが大切だと思っています。

熊本中央病院 看護師

園田 望さん

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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