小児科医としての目標【医療従事者によるリレーエッセー】

目次
慈愛の心 医心伝心 vol.133
「病気の子どもたちの力になりたい」。私が小児科医を志した理由の一つだが、わが子が生まれて少し考え方が変わった。
昨年、長男が生まれた時に1カ月間の育児休業を取得した。職場の先生方に育休を取る旨を伝えた際には「絶対取った方がいいよ」と背中を押していただいた。
育休中は体力的にも大変だったが、小児科医としての自信が揺らぐこともあった。問題ないことを、知識としては分かっているはずなのに、実際にわが子に起きると途端に心配になってしまう。
例えば溢乳(授乳後にだらだら吐くこと)だ。これは新生児によく見られるもので、病的なものではない。しかし授乳のたびに吐いたり、授乳後時間がたってからも吐いたりすると、「本当に大丈夫だろうか」と思ってしまう。今では、乳児健診で同じ不安を持たれている両親に、「うちもそうでしたよ。びっくりしますよね」と話すと、少し安心してもらえるようになった。
育休から復帰した時に「親の視点で考えることができるようになった」と感じた。子どもが病気になることが、親にとってどれだけ心配なことなのかが分かった。
今の私の小児科医としての目標は、病気の子どもだけでなく、「『病気の子どもたち』と『心配する家族』の力になる」ことだ。


岩本 直樹さん