子どもの不調のサインは?GW明けから気を付けたい、こころの不調と対処法

入学や進級から1カ月。さまざまな環境の変化が起こる中で、頑張っている子どもの心身に疲れが見え始めるのがゴールデンウイーク以降といわれています。どんな変化に気を付け、どう対処すればいいのかを、専門家や経験者に聞きました。
- いつもより食欲がない
- 頭痛や腹痛を訴える
- だるそうで元気がない
- 以前に比べて口数が減った
- 怒りっぽくなったり、逆にすぐに泣いたりする
※あくまで一例です。子どもの個性によって不調のサインもさまざまですので、気にかかることがあればスクールカウンセラーなどに相談しましょう
新しい環境が大きなストレスに… 子どもの心身の変化に気付いてあげて
子どもにとって春は、進学や進級で劇的に環境が変化する時季。
特に、「小1プロブレム」「中1ギャップ」と言われるように、新入学の子どもにとっては、まるでそれまでの自分の世界がひっくり返るほどの変化に感じるはずです。
例えば小学1年生は幼稚園や保育園では保護者が送迎してくれたりバスに乗ったりすればよかったのに、小学校では一人で登校しなければいけません。
すでに経験した人にとっては何げないことでも、初めての子どもにとっては、相当な緊張やストレスを強いられている場合があります。
一方で、保護者は職場の異動や仕事内容が変わる時季。
家庭でも弁当作りや子どもの部活、塾の送迎の発生など変化があり、子どもの不調やその兆しを見逃してしまいがちです。
知らないうちに蓄積した心身の疲れが不調となって表れやすい時季なので、気を付けて様子に変化がないか見るようにしましょう。
もし、何か不調のサインを感じたら、まずは「大丈夫だよ」と子どもを安心させてあげることが大切です。
それでも不調が続くようなら専門家に相談し、カウンセリングなどで不調の理由や今後の対処法などを探るとよいでしょう。(九州ルーテル学院大学教授 こころとそだちの臨床研究所所長 古賀香代子さん)
教えてくれたのは…九州ルーテル学院大学教授 こころとそだちの臨床研究所所長 古賀香代子さん


こころとそだちの臨床研究所 所長
古賀香代子さん
4〜5月に起こるさまざまな変化
- 環境の変化
- 新入学、新学期など、これまでとは異なる環境での生活が始まる時季。特に、小学校から中学校、中学校から高校など、進学する際は大きく環境が変わり、ストレスも感じやすくなります。
- 対人関係の変化
- 学校や学年が変わり1カ月が経過した5月ごろは、学級内で徐々にグループができ始め、友人関係などで気を遣ったり、悩んだりして、不調として表れやすくなります。
- 生活習慣の変化
- 小学校高学年〜中学生ぐらいからスマホを持つ子どもが増え、夜遅くまでネットを見たり、友達とSNSでやりとりしたりして朝起きるのがつらくなる子どもも出てきます。
不調のサインに気付いたら…気持ちに寄り添い、専門家に相談することが重要
この時季の子どもは、学校での人間関係や生活環境の変化などの影響を受け、知らず知らずのうちにストレスをためてしまっています。不調の兆しが見えたり、GW明けに学校を休んだりしたときは、子どもの気持ちに寄り添い、少し立ち止まってみることが大切です。




子どもが学校に行けなくなったら… 保護者はどう対応したらいい?
もし自分の子どもが学校に行けなくなったとき、保護者はどのような対応をすればいいのか。公認心理師の西村由美子さんにポイントを教えてもらいました。
気になったら遠慮せず、早めに専門家に相談!
子どもにメンタル不調の兆しが見えたり、不登校になったりすると、保護者は「これぐらいで相談していいの?」「知られるのが恥ずかしい」と考えてしまうことも。
しかし、こじれてからでは対処に時間がかかってしまう場合もあります。
気になったら遠慮せずスクールカウンセラーや専門機関に相談しましょう。


行かせることより”行けない理由”にフォーカス
勉強の遅れなどを心配して、学校に行かせるための方法を考えがちですが、大事なのは「行きたくない(行けない)理由」です。
体に病気がないか、友人関係や学習・生活面で困っていることがないかなど、まずは子どもの話をしっかり聞いてみてください。
「もう●●だから」は子どものプレッシャーに
不調の兆しがあるとき、「もう小6なんだから(我慢しなさい)」「もう中3で受験だから(休まず行きなさい)」などと声掛けをしてしまっていませんか? 子どもにはそれぞれの成長スピードがあり、同年代の子どもができるからといって比較するのもほどほどに。子どもを信じて見守ることが大切です。


「ダメダメ言葉」よりも「よしよし言葉」を
子どもの考えや行動を否定せず、叱るよりも褒める機会を増やしましょう。
例えば、「頑張ってね」と励ます言葉を「頑張ったね」と変えてみる、学校に行けないことを指摘するよりも今、できていることを褒める―など、肯定的で前向きな言葉で子どもの気持ちを後押ししたり、和らげたりすることが自信と安心感につながります。
保護者も自分の時間をつくって心身を健康に
子どもが不登校などになると、「子どものために何かしなければ」と頑張り過ぎて、心身共に疲れて余裕がなくなり、家族で負のスパイラルに陥ってしまうことも…。
それを防ぐためにも、保護者も時には自分の時間をつくり、健康を保つことが重要です。


教えてくれたのは…公認心理師の西村由美子さん


公認心理師。心療内科クリニック勤務などを経て、現在は熊本学習支援センターで不登校の子どもたちの支援に当たる。
子どもにはそれぞれ個性があります。
褒めて伸びる子、励ましが力になる子などさまざまなので、保護者は子どもの個性に寄り添った対応が大切です。
ネット上の情報に左右されず、まずは専門家に相談しましょう。
ココロの不調 〜坂口さんの場合〜
高校1年生から数年間、メンタルの不調に起因する体調不良などで学校に行けない時期を過ごした坂口しのさんに、自身の経験を語ってもらいました。


高校1年生の夏に急にベッドから起きられなくなり、そのままほぼ寝たきりで引きこもりに。その後、何度か登校、引きこもりを繰り返し、現在は、母と2人で子どもたちの“第三の居場所”となる施設を運営。
私はそれまで部活などにも熱心に取り組み、学校にも休まず通っていましたが、高1の夏に突然、朝起き上がることができなくなり、そのまま冬ぐらいまでほぼベッドの上で過ごす日々が続きました。
なんとか大学には進学したものの2年で退学。
その後、社会に出て多くの人との出会いや経験を積んで自分と向き合ううちに、少しずつ自分の「トリセツ(取扱説明書)」のようなものが分かってきて、随分楽になりました。
保護者としては、どうしても「なぜ、どうして」と理由が気になるところですが、本⼈にもそれがよく分からないこともありますし、「何とかしてあげたい」という周囲の思いに応えられず、より苦しくなることもあります。
まずは保護者⾃⾝が笑顔でいて、⼀緒に楽しみを⾒つけたり、家庭以外とのつながりを少しずつ増やしたりしながら過ごしてほしいと思います。
行けない理由を探すより、まずは「楽しい」と思うことを一緒に増やし、喜んでほしい。
家庭内だけで向き合わず、いろんな人を頼って大丈夫です。
学校や家庭以外の”第三の居場所”を見つけることも選択肢


「ユースセンター トリノスミカ」は昨年7月、子どもにとって学校や家庭以外の“第三の居場所”になるようにと坂口さん親子が設立。
毎週火・金曜の14時~19時まで無料で利用可能で、中高生を中心に利用されています。
子どもたち同士でおしゃべりしたり、ボードゲームをしたりと思い思いの時間を過ごせるほか、勉強を教え合ったりもしています。




一緒にスポーツや料理をしたり、さまざまなジャンルのプロを招いてワークショップを開いたりしています
ユースセンター トリノスミカ
住所 | 熊本市中央区新屋敷2-20-16 |
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TEL | 050-3709-8628 |
受付時間 | 月~金曜 13時~19時 |
Webサイト | https://3rdplacebird.com/ |
子どもの不調のサインに気付いた時の相談窓口
熊本市こども発達支援センター
熊本市在住の18歳までの子どもの発達に関するさまざまな相談に応じ、一人一人に合った適切な支援やアドバイスを行います。
住所 | 熊本市中央区大江5-1-1 ウェルパルくまもと2階 |
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TEL | 096-366-8240 |
受付時間 | 月~金曜 8時30分~17時15分(祝日、年末年始は除く) |
カウンセリングルーム ジャニス
九州ルーテル学院大学の附属施設。公認心理師・臨床心理士の資格を持つ大学教員と、その指導を受ける大学院生が相談に応じます。
住所 | 熊本市中央区黒髪3-12-16(九州ルーテル学院大学3号館) |
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TEL | 096-343-2806 |
受付時間 | 月~金曜 10時~17時 |
Webサイト | https://janis.klc.ac.jp/ |
熊本学習支援センター大江本校
一般社団法人熊本私学教育支援事業団が運営。さまざまな理由で不登校の状態にある子どもの学習支援や居場所づくりなどを行っています。熊本県内各地に教室があり、大江本校では利用者以外も無料で参加可能の保護者会も行っています。
住所 | 熊本市中央区大江3-6-8 三祐ビル3階 |
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TEL | 096-288-4482 |
受付時間 | 大江本校 月~金曜 14時~19時 |
Webサイト | https://www.klsc.jp/ |