学んで、食べて、魅力発見! くまもとジビエ
「ジビエ」とはフランス語で、狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉や料理のことをいいます。近年、熊本でも飲食店や物産館、イベントなどで「ジビエ」という言葉に接する機会が増えてきました。今回はジビエ入門として、ジビエの定義や魅力、熊本でのさまざまな取り組み、そしてジビエを味わえる飲食店をご紹介します。熊本の豊かな自然の中のジビエを、学んで、食べて、ご堪能あれ!
知るほど、食べるほどハマる「ジビエの世界」
県産ジビエの普及に取り組む人や、ジビエに魅了された料理人に、ジビエのあれこれを聞いてみました。
ジビエを学ぶ
熊本産ジビエの普及に努める「くまもとジビエコンソーシアム」事務局の田川敬二さんに、熊本ジビエの基礎知識や魅力を教えてもらいました。
ここ10年で熊本に浸透したジビエ 醍醐味(だいごみ)は「一期一会の味わい」
熊本県は農林業への被害防止のために捕獲したイノシシやシカの肉(ジビエ)の利活用を促進する目的で、2012年度から『くまもとジビエ』と銘打ち、フェアやイベントなどを本格的にスタートさせました。「しかし当時、試食会でのアンケートではジビエという言葉を知っている人は3割以下。まだ、ほとんどの人が知らない状況でした」と田川さんは振り返ります。
それから10年にわたり『くまもとジビエ』の普及啓発に携わってきた田川さん。ターニングポイントは2014~15年。全国にジビエ料理が新しいおしゃれな料理としてブームになり、この頃に開催した『くまもとジビエ料理フェア』は過去最高の売上を記録するなど、大きな盛り上がりを見せたそう。以来、「ジビエ料理を楽しめる飲食店は当時の3倍くらいに増えました。また現在、捕獲されたイノシシ・シカの処理加工施設は県内に20カ所ほどあり、安全・安心で品質が良く、おいしいジビエのお肉を購入しやすくなっています」と、広がりを見せるジビエの現状を教えてくれました。
そんなジビエの魅力とは? 田川さんは「ジビエのお肉は一期一会。同じ味には二度と出合えない」という点が魅力と話します。というのも、野生のお肉なのでオス・メスでの違いはもちろん、捕れた時期、大きい、小さい…など、必ず個体差があり、同じものは2つとないのです。「食べるたびに驚きや発見があるはず。きっと自然の素晴らしさ、命の大切さも感じていただけると思います」
お話を伺ったのは
「くまもとジビエコンソーシアム」は県産ジビエの利活用促進のため、県、関係市町村、処理加工施設、農業団体、流通等が連携し結成した共同事業体です
ジビエ基礎知識
押さえておきたい「くまもとジビエ」のポイント!
そもそも「ジビエ」って何?
ジビエとは、狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉や料理のこと。ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきた食文化で、高級料理の一つとされています。ジビエとして食されている動物は、シカ、イノシシ、クマ、ウサギ、ハト、カモ、キジ、ウズラなどさまざま。野生鳥獣なので、地域によって捕れる種類は異なります。また、日本の狩猟解禁は11月15日~2月15日なので、秋冬は特においしいジビエ料理に出合えるチャンスです。
熊本のジビエといえば?
熊本では昔からシカやイノシシが捕獲され、地域の食文化として食されてきました。現在も、熊本のジビエといえばイノシシとシカが主。他に、珍しいところでアナグマなどもあります。
ヘルシー食材としても注目のシカ&イノシシ
シカ肉は高タンパク&低カロリー食材で、健康志向の人たちにも注目されています。カルシウムは牛肉の2.5倍、カロリーは牛肉の3分の1! さらに、鉄分は100g中に6.0mg含んでおり、鶏肉の6倍で牛のレバーをしのぐ含有量です。また、イノシシ肉には疲労回復や新陳代謝を促すビタミンB群が豚肉の3〜5倍も含まれています。
高校生もジビエを学ぶ時代に
「一般社団法人みらいず設計Lab.」による害獣被害を学ぶプロジェクト
若者の社会的・職業的自立に向け、必要な能力などを育てる「キャリア教育」を行う『みらいず設計Lab.』。代表の平松あすかさんは、「熊本の良い人材が、高校を卒業後に県外へ流出していくのはもったいない」と話します。まずは熊本に関心を持ってもらうことが重要だと考え、始めたのが地域の課題を知ってもらうこと。2019年~20年に実施したイノシシの被害を学ぶプロジェクトでは、高校生23名が参加し、被害の状況や捕獲用の罠(わな)などを見学。イノシシの肉を使ったラーメンも開発しました。
一般社団法人みらいず設計Lab.
https://miraizlab.com/contact
ジビエを食べる
どんどん増えている、ジビエを楽しめる店。その中から、ジビエ料理専門店とフードトラック、出張料理でジビエを楽しませてくれるシェフの店をご紹介。
※新型コロナの影響で営業時間など変更される場合あり
ジビエを気軽にハンバーガーで♪
日替わりでさまざまな所に出店するフードトラック。看板メニューはイノシシ肉のハンバーガーです。「縁あって熊本市の焼き肉店で働くことになり、そこでお肉のおいしさを知りました」と店主の渡邉太郎さん。それからヨーロッパに行ってお肉を食べ歩くなど、すっかりハマったと言います。ある日、故郷・山都町産のイノシシ肉を食べたところ、サラサラした脂、臭みのなさ、豊かなうま味に感動。ちょうどハンバーガー店の開店を考えていた時期で、イノシシ肉でハンバーガーを作ることを決意したそうです。清水亀井町『トルチェパン』の特製バンズや山都町産有機レタスがおいしさを引き立てるハンバーガーはジビエ初心者にもお薦め。
ワイルドミートバーガー 1200円
注文が入ってから焼き上げるイノシシ肉100%のパティ(写真左)に、3時間煮込んだイノシシのモモ肉をたっぷりのせた食べ応え満点のハンバーガー
フードトラック&出張BBQ 808 Diner(ハチマルハチダイナー)
住所 | 菊陽町光の森7‐7‐4 OUTLAND駐車場ほか |
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TEL | 080-3185-8390 |
ジビエの奥深い世界に触れられる店
県庁正門の道向かい、レトロな雰囲気のビルの3階にあるダイニング。洋食・和食の修業を積んだオーナーシェフの村上正樹さんが、多種多様なジビエを、それぞれのおいしさを一番引き出す調理法で楽しませてくれます。また、村上さん自身も主に野鳥の狩猟を行っていることから、猟期が終わる2月15日までは、ヤマシギや日本キジなど珍しい野鳥がメニューに並ぶことも(ラインアップは店のインスタグラムで発信中)。食材の持ち味を尊重した料理を味わいながら、村上さんからジビエの魅力や狩猟の話を聞けば、自然の恵みや命の尊さを感じる特別な時間になるはず。
菊池/猪/外モモの薪焼き 3890円(手前)
五木/鹿/ヒレモドキの薪焼き 2250円(奥)
薪(まき)の遠火でじっくり焼き上げられます(写真右)。薪焼きならではのお肉は香りをまとい、野性味あふれるおいしさに!
山ねこ軒
住所 | 熊本市中央区神水1-3-13中尾ビル3F |
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TEL | 090-8623-2333 |
営業時間 | 18時~22時※前日までの完全予約制 |
休業日 | 日曜 |
席 | 10席 |
駐車場 | なし |
出張料理でジビエの魅力発信
イタリアで7年間修業した井本慶太さんが作る、ラザニアやオードブルなど30種類ほどのメニューをテークアウト&イートインで楽しめます。加えて出張料理も行っており、要望があればジビエもメニューに加えているそう。「『これは何のお肉だと思いますか?』なんて質問しながら、ジビエの魅力についてお話ししています」と井本さん。写真はイタリア中部の郷土料理「猪のドルチェフォルテ(カカオ煮)」。お肉の濃厚なうま味と、カカオのビターな風味のハーモニーがたまりません。
KEITA(ケイタ)
住所 | 熊本市北区清水亀井町55‐64 トルチェ1F |
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TEL | 096-288-2456 |
営業時間 | 11時~20時 |
休業日 | 不定 |
席 | 6席 |
駐車場 | 4台 |