未来へつなぐ みんなの宝物 くまもとの水

人口約74万人が住む熊本市は、水道水の全てを地下水で賄っています。 これは、人口50万人以上の都市としては日本唯一だそう! 世界にも誇れる地下水都市・熊本市で4月23日(土)・24日(日)、「第4回 アジア・太平洋水サミット」が開催されます。 そこで、私たちの宝物・熊本の水について再確認してみませんか。

みんなで協力して守る 熊本の地下水

熊本市の地下水の歴史や仕組み、さまざまな人が関わっている保全活動についてご紹介します。

土壌と知恵が生んだ天然のミネラルウオーター

ミネラル分を含む軟水で「おいしい水」といわれる熊本の地下水。熊本市を含む11市町村の地下水を保全しているくまもと地下水財団の濵田菜穂子さんはその成り立ちについて、「阿蘇外輪山の西側で降った雨は、20年かけて適度なミネラル分を含みながら熊本市内各地で湧出しています」と話します。また、白川中流域の水田は水が浸透しやすく、加藤清正公が築いた堰(せき)と用水路によって、水田が開かれ、地下水が豊かになったのだそう。

しかし、近年の都市化や工業化などで地下水の水量・水質が変化し、1959年に日量約86万tあった江津湖の湧水量が2005年には約40万tまで減少。また、硝酸性窒素の濃度が上がるなど水質悪化が問題に。「課題解決のため、地域住民と事業者、行政が協力してさまざまな方法で地下水保全に取り組んだことで、2020年には1日の江津湖の湧水量が57万tまで回復しました」。県が推進する「くまもとグリーン農業」など減農薬への取り組みも進み、水質改善も期待されています。

官民一体の取り組みは世界でも高く評価され、2013年には「国連“生命の水”」最優秀賞を受賞。今回、熊本市が「アジア・太平洋水サミット」の会場に選ばれたのもみんなの力が高く評価されてのことです。濵田さんは「熊本地域は住民、事業者、行政一体となって熊本の宝である地下水を守っています。これからも一人一人ができることから取り組んで地下水を守ることが大切です」と伝えます。

くまもと地下水財団
事業課主事
濵田 菜穂子さん

地下水が湧き出る江津湖

熊本地域の地質イメージ図

阿蘇山の4度にわたる大噴火により火砕流堆積物が積もる熊本地域。隙間が多い地層に雨などが浸透、かん養林や水田などにも染み込んだ水が地下水となって有明海へ流れています


湧水池をきれいに保ち 次の世代へつなげたい

熊本の水環境保全や水文化の継承、魅力発信のために熊本市が創設した「くまもと水守(みずもり)」制度。西区花園にある「お手水(ちょうず)の森」の女将(おかみ)・一瀬明子さんは長年、水守として活動しています。園内には「熊本名水百選」に選ばれた湧水が湧き、それを利用したニジマス養殖池や釣り堀を備え、夏季のそうめん流しなど食事も楽しめます。一瀬さんは「歴史があり、市民の憩いの場になっているこの土地の湧水を守り伝えたい」と、落ち葉清掃や水量の確認をするほか、おいしい水で育ったニジマス料理でもその魅力を伝えています。

くまもと水守(みずもり)
一瀬 明子さん

一瀬さんとスタッフは毎日、園内の清掃を欠かしません

環境省「平成の名水百選」の一つにも選ばれた湧水が勢いよく流れています

店舗情報

くまもと水の迎賓館 お手水の森

住所
熊本市西区花園7‐1626
TEL
096-352-9609
営業時間
11時~17時、17時~21時(夜は当日17時までに要予約、土・日曜、祝日は10時半〜)
休業日
火曜

江津湖などで親子向けイベント開催 「自然のつながりを体感してほしい」

親子に熊本の地下水の仕組みや保全について知ってもらおうと、「水と緑ワーキンググループ」は江津湖で年に数回、小学生と保護者を対象にイベントを開催。「生き物を観察した後、水道水で入れた飲み物や米粉で作ったお菓子を食べながら、山で降った雨が江津湖まで来る仕組みなどを話します」と代表の大住和估さん。稲を刈り終わり水を張った「冬水田んぼ」にも出かけます。「広い田んぼに水を張ると水にミネラル分が増え、害虫が減り、土壌が肥え、減農薬となり、きれいな地下水ができる。そこで取れた作物を食べることも地下水を守ることになる」と自然のつながりを伝えます。

水と緑ワーキンググループ代表
大住 和估さん

イベントの様子。生き物からも水の役割を学びます
※コロナ禍ではオンラインイベントなどに変更


高校生が水文化について動画制作 水を通して“持続可能性”を考える

「ユース水フォーラムくまもと」は、高校生に熊本の水文化に興味を持ってもらう目的で昨年発足しました。これまで白川中流域での田植えや稲刈り体験などを実施。昨年7〜10月にはサミットに先駆け、「世界に伝えたい熊本の水文化」をテーマにグループごとに動画を作成するワークショップが行われました。県内9つの高校から約30人が参加。同フォーラム代表で熊本大学の田中尚人准教授は、「高校生たちが熊本の水について調べ、キーワードを基にストーリーを考えました。熊本の水を通して、高校生がSDGsや持続可能性を考える良い機会になった」と期待しています。

「ユース水フォーラムくまもと」代表
熊本大学熊本創生推進機構
准教授 田中 尚人さん

ワークショップの様子。学生からは「熊本の水がすごいことに気が付いた」という声も。

県内各地域の水環境を意識した8本の動画は以下リンクから

https://www.youtube.com/channel/UCU0g_IbLpqg_rq3CdnPR5ag


地域全体で地下水を守る “熊本スタイル”を世界に

「熊本のおいしい水を水質・水量の面から保つために熊本市でもいろいろな取り組みを行っています」と話すのは熊本市水保全課の吉本早織さん。阿蘇水域にかかる農家の家畜の排せつ物を堆肥化する施設を造ったり、水源かん養林を整備したり、白川中流域で転作田に水を張る農家に助成金を出したりしています。「これらの活動が5~10年後の地下水保全につながります」。また、市民総参加での節水市民運動の展開や、水検定、出前講座の実施など市民への普及啓発も行っています。「最近は地下水を守る活動に積極的な企業も増えました。アジア・太平洋水サミットは熊本の市民、事業者、行政が協力しながら水保全に取り組む“熊本スタイル”を世界に知ってもらう良い機会だと楽しみにしています」

熊本市水保全課 吉本 早織さん

水張りした水田

ボランティアによるかん養林の手入れ

水学習の出張授業

※撮影の際のみマスクを外しています