「無痛分娩」のメリット・デメリット それぞれを理解して検討を【メディカル百科】

─無痛分娩とはどのような方法ですか。

現在行われている無痛分娩のほとんどは硬膜外麻酔と呼ばれる麻酔法で行われます。まず腰に細い麻酔チューブを挿入し、そこから麻酔薬を注入します。5分から10分で麻酔が効いてくると、陣痛の痛みが軽くなったり、なくなったりします。下半身の感覚が鈍くなり、足が動かしにくくなったりもしますが、上半身には麻酔の影響がなく普通の状態です。眠る麻酔ではありませんので意識ははっきりしています。

─無痛分娩の良い点について教えて下さい。

陣痛のストレスが軽くなるところが最大の長所です。分娩の痛みは骨折の痛みを上回るとも言われていますが、これを和らげる効果があります。また、縫合の際の痛みがないのも無痛分娩の良い点です。自然分娩では傷に局所麻酔をして縫合するのですが、傷が大きいと十分に麻酔が効かないことがあります。無痛分娩では下半身全体の痛みを取り除くことが可能ですので、縫合時の麻酔効果がより確実になります。さらに、緊急帝王切開に速やかに取りかかれるのもメリットです。分娩中は赤ちゃんの状態が悪化して緊急帝王切開を行わなければならないこともありますが、無痛分娩の場合は弱い麻酔状態にありますので、そこに麻酔薬を追加すれば約10分で執刀できます。一方、自然分娩の場合は一から麻酔を始めなければならないため、執刀までに早くても20分はかかります。赤ちゃんが仮死状態に陥っているかもしれない時に、この10分の差は重要です。

─無痛分娩の欠点は。

無痛分娩の最大の欠点は、陣痛が弱くなってしまうことです。陣痛が弱いとお産がなかなか進行しません。お産に時間がかかりすぎると、痛みが楽になっても疲れてしまいます。もう一つのトラブルは頭痛です。100人から200人に1人に頭痛が発生することがあります。1週間くらいでよくなりますが、できれば避けたいトラブルです。その他、全国的には命に関わるトラブルが報告されていますが極めてまれで、当院で過去20年間に行われた約6500件の無痛分娩では発生していません。「私は自然分娩で大丈夫」という方に無痛分娩をすすめることはありません。なぜなら、自然分娩の方が順調に分娩が進行するからです。しかし、陣痛に対するストレスや不安が強い方には大きな助けとなるので、担当医と相談の上、ご検討ください。