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産婦人科医である自分と一人の母親である自分【医療従事者によるリレーエッセー】

産婦人科医である自分と一人の母親である自分 医療従事者によるリレーエッセー

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慈愛の心 医心伝心 vol.129

先日「HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン」の市民公開講座を行いました。現在主流の9価ワクチンは、子宮頸(けい)がんの発症を90%近く予防することができます。反響は大きく、特に娘への接種をためらっていたお母さんたちから「大きな後押しになった」との声をたくさんいただきました。「娘がいるなら当たり前」と思っていましたが、実は多くの方が悩んでいたのです。

キャッチアップ接種の広報と個別勧奨で、今年9月には通常の数倍の方がHPVワクチンを接種されました。功を奏したのが“無料接種”だと思います。HPVワクチンは自己負担であれば10万円弱かかるところ、小学校6年生から高校1年生の女子は無料の定期接種です。キャッチアップ接種は来年3月までの無料期間が1年延長される予定です。

私の毎日は小学生と中学生の息子を育てながら、婦人科の悪性腫瘍(主に子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん)手術を中心に行っています。

HPVワクチンは子宮頸がんだけでなく、男性に多い中咽頭がん、肛門がん、尖圭(せんけい)コンジローマの予防にも大きく役立ちます。外国では男子も無料定期接種が増えているのに、日本では男子は自費で、しかも4価ワクチンしか受けることができません。

産婦人科医としてこのワクチンの大切さを十分に理解しながら、一人の母親として息子にワクチンを接種させるかといわれると、費用の面でも即答できない自分がいます。

有効性、安全性と経済的な観点から男女問わず皆が平等に公費接種できるよう、行政の早期の検討を願っています。

国立病院機構 熊本医療センター 診療部長 産婦人科部長 高木 みかさん
国立病院機構 熊本医療センター 診療部長 産婦人科部長
高木 みかさん

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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