数百枚しか売れなかった J‐POP界の女王のデビュー盤【円盤で時間旅行115回 嶋田宣明 】
2019年にオープンした熊本城ホール。今年やっと念願がかない、この会場でライブを体験できました。1人はホールのこけら落とし公演以来2回目の山下達郎。そしてもう1人はデビュー50周年を迎えた松任谷由実のコンサートツアー 『深海の街』。1980年の市民会館以来、実に42年ぶりに彼女の生ライブを体験しました。映像で知っていたものの、ステージングや演出などはさすがに前回とは全く違うものでした。
実は私が彼女のデビューアルバムを聴くきっかけとなったのは、妹が買ってきたLP。最初に聞いた時は、当時流行していた四畳半的な世界のフォークソングとは違って、どこか都会的で洗練された欧米のポップスのような印象でした。それもそのはず、バックで演奏していたのが「キャラメル・ママ」(後に「ティン・パン・アレー」と改名)のメンバー、細野・鈴木・林・松任谷という、まさに最先端のミュージシャンたちでした。
54年生まれの彼女も来年は69歳。今回ご紹介するレコードは、18歳の時のデビューシングル「返事はいらない」。今でこそ日本のポップミュージックの女王として誰もが認める存在ですが、実はこのシングル盤、当時数百枚(本人いわく300枚)しか売れなかったそうです。ジャケットに書いてあるキャッチフレーズは、「★シンガー&ソング・ライター界のスーパー・ヤング・レディー!!」。なかなか売れずに苦労するミュージシャンも多い音楽界、天才の彼女のデビューもそんなに甘いものではなかったのですね。
※今回紹介したレコードは11月22日(火)放送のFM791「昭和名曲堂コモエスタ辛島町」(16時~18時55分)で放送する予定です。
しまだ・のぶあき/1951年生まれ、熊本市出身。東京のデザイン会社でコピーライターとして社会人デビュー。帰熊後、広告代理店でコピーライター&プランナーとして活躍。現在はFM791「昭和名曲堂コモエスタ辛島町」(火曜・16時~18時55分)、同「ミッドナイトコモエスタ」(水曜・0時~1時=全国コミュニティFM番組)、RKKラジオ「昭和歌謡大作戦」(月曜・21時~21時55分)の選曲家、パーソナリティーを務め、幅広い年齢層に昭和の曲を届けている。