にじみ出る“圧倒的主人公感”【つんどく よんどく】

著者:宮島未奈 新潮社 四六判 1705円
目次
成瀬は天下を取りにいく
冒頭からして衝撃を受けた。
「わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。唐突に語られた主人公・成瀬あかりの言葉に私は、どんな強敵を前にしても「オラ、ワクワクすっぞ!」とうそぶく『ドラゴンボール』の主人公・孫悟空を思い出した。
中2の夏。地元滋賀の老舗百貨店が閉店するまでの1カ月、毎日ローカルニュースの中継に映り込むと宣言。M‐1挑戦を始め、「二百歳まで生きる」とまじめに卒業文集に書き、実験のためと称し丸坊主にする…。成瀬はとにかく自由で、突拍子もなく、スケールが大きい。片や女子生徒、片や戦闘民族サイヤ人とフォルムは違うが、成瀬は孫悟空と同じなのだ。
本作が多くの読者を魅了するのは、成瀬の言動からにじみ出る圧倒的主人公感、イコール“孫悟空感”に皆が酔いしれるからだろう。
そんな本作は今年の「本屋大賞」候補作にノミネートされた。果たして成瀬は天下を取れたのか。本稿掲載時には発表されているはずだが、いかに。
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