読んで語って くまもとの民話楽しい
子どもの頃に親しんだ民話や昔話。熊本にも、地域の魅力を伝えるお話がたくさん。笑える話、ちょっと怖い話など、多彩なお話の中からとっておきの2話を紹介。夏休みに親子で楽しんで!
口伝え 教訓に富んだストーリー
暮らしの中で生まれ、口から口へと伝えられてきた民話や昔話。親から子どもへ、家庭の中で育まれてきました。ストーリーも、武勇伝もあれば、悲しくつらいもの、笑いを誘うものもあり多彩。教訓に富んでいて、読みながら、聞きながら楽しく学べるのも魅力です。
私は熊本の民話を熊本弁で語っています。耳から聞くと、想像が広がり、方言の面白さで、大人も子どもも聞き入ってくれます。民話や方言は地域の大切な文化。みんなで次の時代に伝えていきたいですね。
教えてくれたのは
『語り座』創座長の寿咲 亜似(すさき あい)さん
2009年、肥後の歴史物語と民話の会『語り座』を設立。楽しく分かりやすく熊本弁で民話を語る公演『ザ・HIGO』を開催し、幅広い層の人々に語り続けている。
[おはなし 1]ガワッパの手紙
ある夜、川尻の船着場で、漁師が川岸に船を着け眠ろうとしていました。すると真夜中に、誰かが「もうし、もうし」と呼びかけてきました。起き上がると、二人の若者が「この船はどこに行きますか」と尋ねます。「小川に行く」と答えると、「手紙と樽を運んでほしい」「樽の中は決して見ないでください」と言って帰っていきました。
「見るな」と言われるとかえって気になり、漁師は樽のふたを開けてしまいました。中には、生臭くてブヨブヨしたどす黒いものが入っています。「ウワッ! これは何だ! 手紙を読むとわかるかも」と、こっそり手紙を開いてみると、中は真っ白です。「ははあ、これはカボチャの茎の汁で書いたガワッパの手紙だな。水につけると字が出てくるかもしれない」。ガワッパの手紙を読んで樽の中身が人間の生き肝だと分かり、「大変なことになった…」と漁師は知恵を絞りました。次の朝、船出して途中の港に寄り、カボチャ畑からカボチャの茎を切り、その汁でニセの手紙を書きました。
小川の岸に来ると若者が立っていました。手紙と樽を渡すと「川尻で預かったのは確かにこの手紙ですか?」と聞きます。漁師が「確かにこの手紙です」と返すと、若者は「今夜、海の河口で待っててください」と言い、帰っていきました。
真夜中、漁師が河口で待っていると、「ヒョンヒョン、ヒョーッヒョーッ」と声を上げてガワッパたちが顔を出し、船に向かって魚を投げ込み始めました。たちまち船は魚の山。漁師はその魚を売って、大もうけしました。
実は、渡した手紙は漁師が書き換えたもの。『この男にはいつも世話になっている。みやげをやってくれ』と書き、ガワッパに一杯食わせたのでした。
寿咲さん解説
カッパの民話は全国にありますが、特に熊本は数多くのお話が伝えられています。なぜなら、カッパが日本に上陸したのは熊本の八代だから。カッパの起源はペルシャといわれ、中国から八代に渡り、球磨川にすみ着くようになったそうです。
カッパはいたずら好きで、人間の生き肝が大好物。そのため、川で遊ぶ時はカッパに用心と教える民話が多くあります。「ガワッパの手紙」に登場する漁師は、物知りで機転が利くキャラ。知恵のおかげで、命拾いして大もうけもできたというお話です。
[おはなし 2]わくどになったおはぎ
あるところに、おはぎが大好きなおばあさんがいました。息子の嫁もおはぎが大好物。しかし、おばあさんは意地悪く、嫁には決しておはぎを食べさせませんでした。ある日、重箱いっぱいのおはぎをもらったおばあさんは、「嫁が見つけたらわくど(熊本弁でヒキガエルのこと)になれ」と言って戸棚の奥にしまいました。その様子を戸の陰から聞いていた嫁は、おばあさんが出かけると、たちまち戸棚の奥から重箱を取り出し、一つ、また一つと全部食べてしまいました。そして裏の畑から「わくど」を捕まえてきて…。
寿咲さん解説
「意地悪するといつか罰が当たるよ」という、民話によくあるお話。仕返しがユニークで、笑いながらも学びがある一話です。
お話の続きは動画をチェック!寿咲さんの語りで聞けます
ありえない出来事もいっぱい、民話・昔話の世界
図書館には、熊本をはじめ全国で語り継がれてきた民話や昔話がたくさん。親子で読める児童書や幼児でも楽しめる絵本など、多彩にそろいます。民話や昔話の面白さは、ありえない設定や突拍子もない展開。目に見えないものや神秘的な出来事を描いたお話も多く、思い思いに想像して、物語の世界に入っていくのも楽しいですよ。
熊本市立図書館
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