性別で大きな格差見られる現行制度 議論尽くし 誰もが納得できるものに【知りたい!お金の話】
【今回のスタディー】遺族厚生年金の見直し
厚生労働省は先月末、来年度に改正が予定されている「公的遺族年金制度」の見直し案を打ち出しました。20代~50代の子どもがいない配偶者を対象とする遺族厚生年金について、性別で大きな格差が見られる現行制度を見直し、男女が等しく給付を受けられるよう、相応の年数をかけて改めていくことになりました。
現行制度では、子のない配偶者が死亡した場合に遺族が受給できる厚生年金について、
- 30歳未満の妻は5年間
- 30歳以上の妻は無期限
- 55歳未満の夫は受給権なし
- 55歳以上の夫は60歳到達後に無期限
─で給付されることになっています。さらに(2)のうち、夫死亡時40歳以上65歳未満の妻には、基礎年金額の4分の3に相当する「中高齢の寡婦加算(年61万2000円/令和6年度)」が上乗せされます。「夫は外で働き、妻は家を守る」が一般的だった時代につくられた制度が現状にそぐわないとして、男女差を解消すべく見直そうというものです。
大まかな方向性として、20代~50代で配偶者と死別した子のない配偶者に給付される遺族厚生年金は、男女共に5年間の有期給付とし、女性のみを対象としていた中高齢の寡婦加算を廃止する考えです。男性にとって保障が手厚くなる半面、女性の保障は大幅に縮小されることになりそうです。
一方で見直し案には、死別した配偶者の厚生年金の一部を老後の年金に加算する制度や、有期給付される遺族厚生年金の金額を増やす制度を新設、さらには、受給者の年収が850万円以上で給付が制限される規定を撤廃する案も盛り込まれています。
とはいえ、法改正はこれから着手されるもので、まだ決定したわけではありません。既に受給権が発生している人に関しては現行制度が維持され、20~25年ほどをかけて段階的に施行される見通しです。十分な議論を尽くし、誰もが納得できる平等な制度にしてもらえたらと思います。
「遺族基礎年金」を受給できるのは?
公的年金制度は、家に例えて「2階建て」と表現されます。1階部分は20歳~60歳未満の全ての国民が加入する国民年金(基礎年金)、2階部分はサラリーマンが加入する厚生年金。自営業の人などは基礎年金のみ、サラリーマンは基礎年金と厚生年金を受ける権利を持っていることが年金制度の大前提です。
今回は遺族厚生年金に絞って解説しましたが、さて、遺族基礎年金を受給できる対象は? 答えは「子のある配偶者」または「子」です。ここでの「子」とは、18歳になった年度末まで、または20歳未満で障害等級1級・2級の人を指します。
制度自体は2階建てですが、子のない配偶者は遺族基礎年金を受けられないことも知っておきたい重要なポイントです。
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