アート作品としても味わいたい レコードジャケットの世界【円盤で時間旅行129回 嶋田宣明】
日本で初めてCDとCDプレーヤーが発売されたのは1982年のこと。当初はいずれも高額で、高根の花的な存在でした。流通量が多くなるにつれ、私もCDを買うようになったのですが、一部のオーディオファンは「レコードに比べて記録されている音域が狭い」などと指摘する向きもありました。私的には、LPレコードに比べて小さくなった「ジャケット」に物足りなさを感じていました。
CDが普及する前の話です。レコード店に行くと壁面に新譜のLPレコードがズラリと並んでいました。一枚一枚眺めては、喜びに浸っていたのを思い出します。当時のレコードジャケットは、著名な写真家や気鋭のクリエーターによる時代を先取りしたような作品が多く、まるで写真展やデザイン展を見るような楽しさにあふれていました。お気に入りを買って帰った後は、まずビニールを開封してレコード特有の匂いを堪能。次に針を落として音楽を聴き、最後は額装してアート作品として味わったものです。
今回は私が大好きな「浅丘ルリ子のすべて~心の裏窓」という、当時傾倒していた横尾忠則がデザインしたLPをご紹介します。曲は歌謡ボッサの人気曲「シャム猫を抱いて」。みなさんもサブスクやダウンロードにはない、ジャケットの手触りやアートを楽しみながら、至福の時間を味わってみてはいかがでしょう。
※今回紹介したレコードは2月20日(火)放送のFM791「昭和名曲堂コモエスタ辛島町」(16時~18時55分)で放送する予定です。