病を通して作家が考えたことは【つんどくよんどく】
くもをさがす
2021年、作家の西加奈子さんは語学留学先のカナダ・バンクーバーでがんを宣告されました。再発率の高いトリプルネガティブ乳がんでした。『くもをさがす』は、病を通して考えたことをつづるノンフィクション作品です。
バンクーバーは移民の街。助け合うことに皆が慣れていて、自分も丸腰の状態で助けを求めることができたと言います。多くの人に支えられながら、がんは寛解。幸せな日常を取り戻したかのように思われましたが、待ち受けていたのは、いつ再発するか分からないという恐怖でした。もっと苦しんでいる人もいるのに…生き残ったことに感謝すべきなのに…。そんな罪悪感も覚える著者。でも、〈自分の恐怖を、誰かのものと比較する必要はない。全くない。〉
自分を内側から見つめられるのは自分だけ。とはいえ毎日がせわしなく、自分の内側、とりわけ痛みに構う暇なんてないという人も多いのでは。そんな人こそ、この本をきっかけに少しだけ立ち止まってみませんか。
紹介するのは
JPIC読書アドバイザー。雑貨、児童書担当