一日を元気に過ごすには睡眠が大事
新生活がスタートし、何となく体の疲れが取れないという人が多いこの季節。睡眠の質を高めることで、翌日の目覚めやパフォーマンスが見違えるほど変わってくるそうです。快眠につながるさまざまな方法を取り入れ、一日を元気に過ごしましょう。
意外と知られていない睡眠のメカニズム
私たちは1日の睡眠の中で、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」を約90分のサイクルで4~5回繰り返しています(図1参照)。ノンレム睡眠は脳が休息している状態を指し、寝始めて最初のノンレム状態が心身の疲れを取る重要な眠りとなります。
レム睡眠は、脳が働いている浅い眠りの状態で、夢を見るのはこの時です。この睡眠時に脳は記憶の整理や定着などを行い、ストレスを発散させています。
生活習慣と環境整え、運動&栄養をプラス!
快適な睡眠を手に入れる方法を、専門の医師やヨガインストラクターに教えてもらいました。また、皆さんから寄せられた快眠の秘けつも紹介します。
心身の健康維持に大切な睡眠 生活にメリハリを!
私たちが健康に生活するためには、睡眠の長さではなく、その質が大切といわれています。「睡眠負債」という言葉があるように、慢性的な睡眠不足や睡眠のリズムが崩れた状態が続くと、心身の不調を来します。不眠の状態が続くと、認知症の発症リスクは1.57倍、糖尿病の発症リスクも1.5倍に跳ね上がります。
一過性の不眠であれば問題ありませんが、不眠の状態が1週間以上続く場合は、不眠症以外に、うつ病、パーキンソン病、心臓疾患など別の疾患が隠れていることがあります。気になる場合は、一度かかりつけの医師などに相談してみるといいですね。
また一日に必要な睡眠時間は、年齢によって異なります(図2参照)。成人で6~8時間、高齢になると活動量そのものが減るのでさらに短くなります。翌日眠気などで困らなければ休息は十分取れていると考えてよいでしょう。
快眠のために、まずは自分に必要な睡眠時間を知ることからです。生活習慣を見直し、メリハリのある生活を送ることで睡眠の質は改善されてくると思います。自分に合った方法で睡眠の質を上げ、心身の健康につなげていきましょう。
「一度目が覚めるとなかなか眠れない」という人が多いようです。必要な睡眠時間は人により異なるので、眠れないといって過度に不安になる必要はありません。
教えてくれたのは
ソラクリニック 理事長・院長 小山一静氏
良質な睡眠を取るためにできること
今回紹介するのは一例です。
いろいろな方法を組み合わせてみましょう。
生活習慣の見直し
同じ時間に起きる
テレワークが進み、起床時間が以前より遅くなったり、定まらなかったりする人が増えています。前日どんなに遅く寝ても、毎日同じ時間に起きることが大切です。また、「昨日寝るのが遅かったから、今日は早く寝る」は必要ありません。「眠くなったら寝る」でOKです。
タンパク質を意識した朝食を取る
朝食にタンパク質をしっかり取ることでセロトニンの分泌を促し、体と脳のスイッチをオン! 体と脳がしっかり目覚めることで、午前中の活動が活発になります。
朝日を浴びる
朝はカーテンを開けて朝日を浴びましょう。体内時計がリセットされ、脳から分泌される睡眠ホルモン(メラトニン)の原料となるセロトニンが分泌されます。セロトニンからメラトニンが生成されるまでには約16時間かかるため、朝浴びた太陽の光が、ちょうど就寝する頃に眠気を誘発してくれます。
必須アミノ酸・トリプトファンが多く含まれる大豆製品や牛乳、ヨーグルトなどの乳製品を意識して朝食に取り入れましょう。トリプトファンは、セロトニンの分泌を促すため、夜のメラトニンの生成にも効果が期待できます。
快眠の妨げになるものとして、(1)アルコール(2)たばこ(3)スマートフォンやゲームなどのブルーライトが挙げられます。眠れるようにと寝酒を飲んだり、布団に入ってもスマートフォンを見ていたりすると、脳が刺激されてしまうので注意が必要です。
日中~夜の過ごし方
ウオーキングなどの運動
就寝する3時間ほど前、17時~19時くらいのウオーキングは効果的。会話をしながら歩けるくらいの速度で、リズミカルに体を動かす運動が、リラックス効果も加わりおすすめです。
昼寝は30分以内にとどめる
昼食後は眠くなっても30分以内の仮眠程度に。それ以上寝てしまうと認知症の発症リスクが高まります。スマートフォンのアラーム機能を活用したり、眠気覚ましにストレッチなどの軽い運動を取り入れたりするのもよいでしょう。
入浴は寝る1時間前が効果的
シャワーではなく、なるべく湯船につかるように。ぬるめの湯(40度くらい)につかり、体を芯から温めます。体の体温が下がり始める1時間後くらいが、心地よい眠りにつけるタイミングです。
環境づくり
温度33℃ 湿度50%で快適に
人が快適に眠れる寝床の温度は33度、湿度が50%といわれています。この温度になるようエアコンで室温を26~28度に調節しておくと、快適に眠れます。室温は少し高く感じるかもしれませんが、その分、衣類や掛布団は薄手のもので済み、寝返りの妨げにもなりません。
手足を伸ばせる空間づくり
妨げなく左右に寝返りを打つには、両手足を伸ばして大の字になれるくらいのスペースが欲しいところ。子どもと一緒の布団で縮こまって寝ている人などは、寝るスペースを見直してみましょう。
暖色系の照明に
寝室の照明は寒色系の蛍光灯ではなく、暖色系の柔らかい色のものを選ぶとリラックス効果が高まります。就寝時間に合わせて、少しずつ照明を落としていくのもお勧めです。
読者に聞いた「私の快眠」エピソード
仕事が休みの日も、変わらず5時に起床し、掃除や買い物などで日中を過ごし、昼寝はしません。規則正しい生活で、夜の10時には心地よい眠りに誘われます。
ちーちゃんさん
大好きなお香をたいて、リラックスできるBGMを流して寝ています。
アリスさん
蜂蜜入りのホットミルクを飲みます。目を閉じて横になり「寝なくちゃ」と思わないようにします。
ちぃさん
寝る前に「今日もとてもいい一日だった。よく頑張ってくれたね」と心の中で自分の体に感謝するとよく眠れます。
ハムイチさん
良質な睡眠につながるエクササイズ
背面の筋肉を緩めリラックス効果を高めましょう
私たちの体は部位単体ではなく、それぞれが作用し合いながら動いています。睡眠の質を高めるには、特に背面の筋肉を緩めることが大切です。おでこから首、背中、腰、お尻をリラックスさせる簡単なエクササイズを紹介します。
教えてくれたのは
ヨガインストラクター 門永 友香さん
「sha cocoro studio」主宰。幅広い年代向けのヨガレッスンのほか、オンラインクラスも開催中。
https://www.shacocorostudio.com/
額に両手を当て、指の先で優しく、生え際の方まで皮膚を揺らすようにマッサージし緊張をほぐしましょう。
両手を頭の後ろで組み、背筋を伸ばし、ゆっくり首を前に倒します。息を吸う時に背筋を伸ばし、息を吐きながら目線を右膝の方向へ。同じように吸う呼吸で中央に姿勢を戻します。左側も同様に繰り返しましょう。
あおむけになり左足を右膝にのせ、右足を持ち上げ、両手を右ももの後ろで組みます。吸う呼吸で右足を下ろし腰を伸ばします。吐く呼吸で膝をおへそに引き寄せると、右膝にのせている左側のお尻の筋肉が気持ちよく伸びます。