再燃!サブスク時代にあえてのアナログレコード
サブスク(サブスクリプションサービス)で、ダウンロードで…と音楽の聴き方が様変わりする中で、このところアナログレコードに注目が集まっています。懐かしくも新しい音楽の楽しみ方として、新たなファン層も拡大しているとか。レコードの魅力はもちろん、マニアでなくても楽しめる方法を探ってみました。
良質な音とジャケットを愛(め)でる 手間暇かけることも楽しい
デジタルが当たり前のZ世代からも熱視線を浴び、海外では”帯付き”の日本盤が人気を集めるアナログレコード。十数年前からブームが続いていますが、コロナ禍でおうち時間が増えた影響もあって、自宅でレコードを聴く人が増えているそう。「レコード人気の後押しをしたのが70~80年代の日本のシティーポップ。外国のDJから火が付いて、国内外でレコードを求める人が増えました。過去のアルバムが再発売されたり、中古盤の価格が跳ね上がったり。最近では、細野晴臣や山下達郎、竹内まりやなどは、中古市場でとんでもない値段で取引されていますよ」とDJ・ラジオパーソナリティーの嶋田宣明さん。
公私ともにレコードを聴き続けている嶋田さんにとって、音の柔らかさ、ジャケットデザインのかっこよさ、そして手間をかけて音楽を聴く行為そのものも魅力なのだとか。
「レコードプレーヤーは1万円台でも買えますし、ネット通販でも中古盤を購入できます。音楽の聴き方の一つとして、アナログレコードを手に取ってみてください」
レコードファンは確実に拡大中
「音楽はサブスクで聴く人が圧倒的に多いと思いますが、その一方で、音にこだわる人、おしゃれなジャケットにひかれる人…など、レコードを求めるお客さんは確実に幅広くなりました」と『蔦屋書店熊本三年坂』の倉元紡未さん。
同店ではCD売り場の一角にレコードコーナーを設置、熊本で新品のレコードが買える希少な存在となっています。最近では新譜発売の際、CDと同時に数量限定でアナログ盤を発表するアーティストが増加。また、CD全盛時代にリリースした過去の作品を、レコードで一気に再発売するケースも珍しくありません。
「アナログ盤の発売はアーティスト側の戦略かもしれませんが(笑)、世界的にレコードは伸びているのでブームはしばらく続くと思います」
うんちくを語りたくなる
中古レコード店にも最近変化が出てきているそうです。「レコードを知らない世代の来店も増え、中には親子で訪れるケースもあります」と話すのは、中古盤を扱う『ビギナーズレコード』代表の池田倫彦さん。
その時々で相場が変わる中古レコードの世界。店頭に並ぶレコードの値段も、数百円から数万円…とさまざまです。今、注目されるジャンルは、90年代ブリットポップとJポップ。Jポップは海外でも人気があり、以前は数百円で売られていた作品が最近、数千円で取引されるものもあるそう。
「ギターの音やリズムがかっこいいとか、ジャケットのここが好きとか…。一枚のレコードを媒介にあれこれ会話が弾むんです。アナログ盤は世代を超えて、人と人とをつなぐ役割もあると思いますよ」
レコードマニアが選ぶ オシの一枚
嶋田宣明さん
『SONGS』/シュガー・ベイブ
山下達郎や大貫妙子などが名を連ねた「シュガー・ベイブ」唯一のオリジナルアルバム。「1973年に発売された当時はそこまで売れませんでしたが、CDやLPで何度も再発売されています。シティーポップの先駆けとなる一枚です」
ラジオでオンエア中
FM791「昭和名曲堂コモエスタ辛島町(火曜・16時~)」「ミッドナイトコモエスタ(水曜・0時~)」、RKKラジオ「昭和歌謡大作戦(月曜・21時~)」
ビギナーズレコード代表 池田倫彦さん
『ホテル・カリフォルニア』/イーグルス
ギタリストが憧れるフレーズが随所にちりばめられた名盤。「1976年に発表されたアルバムですが、ギターソロ全部いい。今聴いてもかっこいい!」と池田さん。70・80年代に多く見られた邦題のセンスも抜群です。
蔦屋書店熊本三年坂店 CD・DVD担当 倉元紡未さん
『MILESTONES』/マイルス・デイヴィス
「家でくつろぎたいときにおすすめのメロディアスな一枚です。名曲ほどレコードで聴きたくなります」と倉元さん。常に新しいスタイルに挑んだマイルス・デイヴィスの作品は今でも再発売され、このアルバムは今年発売。