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他人を許す心を持てない、過去の罪悪感にさいなまれる…… 苦しい感情を手放す「生き直し相談」

日々生活する中で、多かれ少なかれ悩みを抱える人は多いでしょう。誰にも相談できず、「苦しい感情」に押しつぶされそうな読者の声を、僧侶であり刑務所で受刑者の悩みやざんげを聞き心の救済に努める「教誨(きょうかい)師」が受け止めます。

教誨(きょうかい)師は、受刑者に対して心の豊かさを説き、矯正や更生を促す活動をボランティアで行う宗教家です。各宗派の教義に基づいて用いる言葉などの違いはありますが、宗教の心を教え諭していきます。決して自分の価値観に当てはめず、相手をありのままの状態で見るように努めています。

皆さんが悩みを抱えているときは、自分で自分を受け止められていない状態です。今の「苦しい感情」はどこから来ているのか…。一度、自分の内側に目を向けてみましょう。ありのままの自分というものを自覚して、もしそれを受容することができれば、きっと自信につながっていくと思います。

答えてくれたのは

吉尾 天声さん
教誨師、僧侶
吉尾 天声さん

熊本刑務所教誨師。真宗大谷派浄玄寺(熊本市南区)第16世住職。被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる「臨床宗教師」も務める。

悩みに応えます

浄玄寺では、地域住民が健康に関するさまざまな問題を気軽に相談できる場所「まちの保健室」を熊本県看護協会と共催で月に1回開催しています。また、生きる指針が学べる仏教講座も開催。詳しくはホームページ(http://jyougenji.org/)を参照してください。


目次

教誨師(きょうかいし)が読者の相談に答えます

[Q.1]父への複雑な気持ちに折り合いをつけたい

幼少期に虐待を受け、絶縁していた父が昨年亡くなりました。母とは離婚していたので、私と妹が葬式や死後の手続きなどをしました。「最後まで迷惑かけて」という怒りしかなくて涙も出ませんでした。父がいたから私や私の子に命がつながっているので感謝しなくてはと思いますが、嫌な思い出ばかりよみがえり複雑な気持ちになります。

[苺さん・50代]

[Answer]新たな家族と絆を深めることで浄化する

苦しく悲しい体験、しかも父親から受けた行為で傷ついた心はより悲しみが深く、父親を認められない複雑な気持ちが沸き起こってくるのは当然のことだと思います。父がいたから命がつながっていることを感謝しようと思えば思うほど、「あなたは私をどう思っていたの?」と問いたくなります。それは、本当は父親をどこかで認めたかった自分がいるからなのかもしれません。父親も、もしかしたら自身を認められず不器用な生活を送っていたのかもしれません。

「人間」とは、仏教がずっと重要にし続けてきたテーマです。人間を意味する原語は南アジアなどで使われた古代語にある「マヌシュヤ」で「考えるもの」と訳されます。他の生き物と違い、人間は考え続けます。それ故に愁いも悩みも深いものがあります。人間に生まれたことは、思い煩い生きづらいことばかり。だからこそ、どこまでも諦めずに問い続けることで、自分自身が満たされるようになります。

かけがえのない夫や子どもと温かい家族を築かれたあなたが、これからも家族と寄り添い支え合う関係を続けていくことは、あなたがずっと心の中で問い続けてきたことの、一つの答えになるかもしれません。向き合ってきたあなたを応援しています。


[Q.2] コロナ禍で露呈した人間の本性が怖い

医療従事者です。コロナ禍で、発熱外来の検査の問い合わせなど電話を取る機会も増えたのですが、思いやりのない強い口調の方や、マナーを守ってくれない方もおられます。感情をむき出しにされたり、少し問題があるとネットに書き込まれたり。このままでは医療従事者の離職者が増えて良くないなと悩んでいます。

[あじさいさん・30代]

[Answer]「お互いさま」の精神で相手に接することが大切

私たちは命の危機を感じると自分の身を守る意識が強くなり、寛容さが失われるようです。「分断」という言葉をよく聞くようになりましたが、それぞれの立場によって利害が異なるので、寛容さが失われた環境では、いとも簡単につながりが分断され人を傷つけます。悲しいことです。

仏教に「諸法無我」という言葉があります。これは「全てのものは因縁によって生じたものであって実体性がない」、つまり「私も含めこの世のものは全てつながり支え合いながら成り立っていて、たった一つで存在するものはない」という意味です。相談内容にも象徴されるような、消費者が商品やサービスを提供する人に対して嫌がらせをする「カスタマーハラスメント」は、お金を支払う側がその強みを振りかざして、受け取る側を傷つけます。それは、つながりの中で生きているという自分の実態に気付いていないところから生じるのでしょう。分断の溝を埋める思想が求められています。

立場が逆転した時のことを想像してみてください。自分の置かれている状況を相手の側から考えてみることは大切なことです。「お互いさま」「持ちつ持たれつ」の精神で相手に接することは、分断の溝を埋める一つの術になると思います。


[Q.3]他人に対して許す心を持てない

年を取るにつれ、他人に対して「許す心」を持てなくなってきました。特に乳幼児や子ども、高齢者に対して目にする言動や行動に腹が立って仕方なくなります。同時に自分に対しても、長生きしても仕方ない、早く死にたいと強く思う時間が増えつつあります。病気なのでしょうか? 元々の気質なのでしょうか?

[にゃりさん・40代]

[Answer]自問自答して心の中を見つめて

なぜかイライラしている自分がいる、他人を許せない自分になっている。自分でも分からないときがあります。そんなときは、自分のことも大切に思えない、今の自分を受け入れられないのかもしれません。自分を大切にできないと、他人も大切にできません。私たちは自分の思い通りになっていないと、今の自分も、生きてきたこれまでのことさえも受け入れられないことがあるようです。

物事が自分の思い通りになることを、仏教で「如意(にょい)」といいます。逆を「不如意(ふにょい)」といいます。不如意であることを、どうしても如意としたいと思うところに「苦」が生まれます。自分の中に受け入れられない自分がいると感じたら、自問自答してみてください。「あなたは何か思い通りにならないことがある?」「何が思い通りになっていないの?」と。自分の心の中を見つめて、その中身を自覚し整理された時に、心のモヤモヤを越えて次のステップに進めるのかもしれません。


[Q.4]過去の罪悪感にさいなまれる

高校生の頃、いじめを受けている親友を助けられませんでした。無力な自分の罪悪感をひきずっていて、悪いことは自分のせいだと考えてしまうように。飲み会がしらけるのは自分のせい、自分と付き合うと不幸になると考える癖がついてしまいました。自己肯定感が低く、仕事でも思ってもいない無難な返事をしてしまう自分が嫌になります。

[ケンタさん・30代]

[Answer]自分がした選択を受容してほしい

仏教に「分別(ふんべつ)」という言葉があります。一般的に使われる分別は、いろいろな経験を積んで世間の常識的な判断・考慮ができるという意味ですが、仏教では「分け隔てる」という意味があります。人生は一つしかありません。しかし私たちは「もし○○だったら」と二つ、あるいは複数の人生があったのではないかと仮定して、分け隔てて自分の都合で考えてしまいます。都合のいい人生を想定してしまうのです。そう想定すればするほど、今歩んでいる自分の人生を肯定できなくなります。

もしあの時もっと勇気を持つことができていたらと悩まれていますが、今でも当時のことに誠実に向き合っていることはすごいことだと思います。あなたは自分を不誠実だと思っていますが、実は誠実であるため自分が許せないのかもしれません。その時々で賢明に、それなりに生きてきた自分がいるのではないでしょうか。それは誰に比べられる必要も、否定される必要もないものだと思います。あなたが生きてきた人生を振り返り、あの時ああいう選択をしたけれど、それも意味があったんだと一つ一つに丸をつけてあげられた時、自分の尊さに目覚めるのかもしれません。


「長崎書店」スタッフがすすめる 心が苦しい時に読む本

選者:石川龍一さん(上通店)

あなたは絶対! 運がいい

[幻冬舎]
浅見帆帆子 著
594円

私自身が心が苦しい時に読んで救われた本です。難しい言葉は出てこないので読みやすく、読み終わった頃にはズーンと沈んでいた心がとても軽くなっていました。自分は運がいいんだ!と思える本です。

こころのおそうじ。 読むだけで気持ちが軽くなる本

[大和書房]
たかたまさひろ 著
660円

考え方や物ごとの捉え方次第で自分の心はずいぶんと変わるものです。大変なときというのは「大きく変わるとき」「成長のとき」。苦しいときこそ忘れないでほしいことがやさしい言葉で書いてあります。

なまけ者のさとり方

[PHP研究所]
タデウス・ゴラス 著/
山川紘矢・山川亜希子 訳
770円

読むたびに、自分が今どこにいるのかを教えてくれる本です。10代の時、20代の時、30代の時、文章から感じるものがまったく違います。自由で平和な心を持つために大切なことが書いてあります。


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記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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この記事を書いた人

熊本市を中心に31万部戸別配布のフリーペーパー「くまにち すぱいす」がお届けする、熊本の暮らしに役立つ生活情報サイトです。

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