地産地消でおいしく手軽に熊本の郷土料理
熊本で採れる食材を使い、風土に根差した食べ物として受け継がれている郷土料理。お正月のおせち料理と一緒に食卓に並んだ家庭もあるでしょう。しかし、いざ作るとなると調理法や由来を知らない人も少なくないのでは? 今年は地産地消を意識しながら、地域に伝わる“熊本の味”を作ってみませんか。
暮らしと風土に根付いた”熊本の味”を家庭で!
県内各地で受け継がれている郷土料理には、その土地の歴史や気候、生活習慣などに根付いた地域ならではの味があります。熊本を代表する名物「太平燕」から、「ぶたあえ」「かすよせ」など5品の手軽に作れるレシピとアレンジ法を、料理研究家の相藤春陽さんに教えてもらいました。
地元の産物を旬の時季にいただく
郷土料理は、地元で採れた産物を旬の時季に、おいしく食べてほしいという思いと共に受け継がれてきました。例えば「一文字(ひともじ)のぐるぐる」は、一文字の甘さが増す春先、ひな祭りなどの行事食としてハマグリのお吸い物と一緒に並んでいたそうです。
また、天草地域に伝わる「ぶたあえ」は、夏に最盛期を迎え栄養価が高まるタコと夏野菜のナスやゴーヤーをみそあえにしたもので、旬を感じられます。
「特別な材料で作るのではなく、地域で採れる食材に家庭にある物を上手にプラスして作るのが郷土料理。地産地消でおいしくいただく家庭の味です」と相藤さん。昔の人々の暮らしの知恵と産物への感謝の気持ちが詰め込まれています。
※郷土料理の由来は諸説あり、料理が作られている地域も多数あります
作ってくれたのは
HARU lab.(ハルラボ)代表。管理栄養士とフードコーディネーターの知識と経験を生かし、食に関するプロデュースを行っている。
https://connect.place/wellsole/
ぶたあえ – 天草地域
沖縄料理にルーツあり
沖縄料理「ゴーヤーチャンプルー」を基にした料理。天草地域では手に入りにくかった豚肉の代わりに、地元で捕れたタコを使って作ったのが始まりとされています。
かすよせ – 上益城地域
祝いや祭りとともに受け継がれる
祝い事や祭りなど人が集まる時に作られてきた「大豆と野菜の炒め煮」のこと。おからのことを「かす」と呼んでいたことから「かすよせ」と言われた説や、数多くの野菜を寄せる(使う)ことから「数寄せ」から「かすよせ」と言葉が変化したという説もあります。
[ちょいアレンジ]おやき
香ばしさ加わり主役級のおいしさ
太平燕 – 熊本全域
中国、長崎を経て熊本の名物に
中国福建省の家庭で盆や正月、祝い事などの特別な日に食べられていたもので、明治時代以降、長崎を経由して熊本に伝わったといわれています。高級食材の「燕(つばめ)の巣」の代わりに揚げた卵を、フカヒレの代わりに春雨を使って作られました。
ちょいアレンジ
揚げ卵の代わりにお手軽フライドエッグ
ゆで卵を油で揚げるのが面倒という人は、フライパンで作るフライドエッグがおすすめ。多めの油を入れたフライパンに卵を割り入れ、油をかけながら形を整えていきましょう。
[ちょいアレンジ]スープに牛乳で”味変”
水500ccの半量を牛乳や豆乳に代えると、味がまろやかになり、栄養もプラスされます。
一文字のぐるぐる – 熊本全域
倹約の中で生まれた味
6代藩主細川重賢の時代、熊本藩の財政が苦しく立て直しを図る倹約令が出された際に、安くておいしい酒のつまみとして考えられたのが始まりといわれています。
[ちょいアレンジ]塩こうじバーニャカウダ
“和”から”伊”に変身
まくらぎ – 宇城市三角町
線路の枕木にちなんだ豆菓子
ミカン畑を利用してサトウキビも栽培していた三角町。その黒砂糖を使った豆菓子は、おやつのほか冠婚葬祭にも欠かせないお菓子でした。切る前の形が三角線の線路の枕木に似ていることから「まくらぎ」という名前になったそう。