2022 今を楽しむ 未来に備える 30代、40代からの親子で考えるセカンドライフ
「セカンドライフを心豊かに過ごしたい」。そんな意欲的な人たちと、その子ども世代に向けて、今を楽しむコツと未来に備える方法をテーマごとに伝えるシリーズ「セカンドライフ特集2022」。第2回は「相続」と「補聴器」のQ&Aです。
いざというときのための 知っておきたい「相続」Q&A
「終活」が広がり、相続はより身近な問題となっています。円満に相続を進めるために重要なのが生前の準備。財産を渡す被相続人、受け取る相続人、双方のポイントを弁護士の上田祐輔さんに聞きました。
話を聞いたのは
上田法律事務所 代表
上田 祐輔 弁護士
被相続人が亡くなった後にできる対策はほとんどありません。生前の対策が大切です。
[Q1]相続について考える年齢になりました。生前に何をしておくといいでしょうか。
A
財産の相続を考える際、自分の子どもたちに迷惑をかけないようにすることが、まず大切です。相続人が預貯金や不動産などの財産を把握していないと、スムーズに相続の手続きを進めることができません。特に相続税がかかる場合は10カ月以内の申告が必要となるので、迅速に対応をしなければなりません。財産を次の手順で「見える化」しておくことで、子どもたちの負担を軽減できます。
(1)財産の棚卸し
まずは預貯金や不動産、株など今ある財産を確認、整理しましょう。全く利用していないクレジットカードがある場合は、解約するのもよいでしょう。その上で、どこにどれくらいの財産があるかを明確にします。
(2)財産のリスト化
財産の全容が見えてきたら、それを書き出します。
財産の値打ちを表す価額を記載する場合は、相続開始前のどの時点で作成したのかを書きましょう。不動産ならば固定資産税評価額なのか公示地価なのかといった、何を基準とした評価額かを明記しましょう。
書き出したら、パソコンの表計算ソフトを利用してまとめておくと、財産目録として活用できます。遺言書に添付する際は、用紙の片面に印刷し、全てのページに署名と押印をします。
(3)遺言書の作成
相続人が複数いる場合、遺言書がないと遺産を分割するための遺産分割協議が必要になります。一方、生前に遺言書を作成しておくと、相続が発生した場合、基本的にその内容が優先されるので、トラブルの防止につながります。作成には、法の定める方式に従う必要があるので、事前に専門家のチェックやアドバイスを受けることをお勧めします。
[Q2]「生前贈与」とは、どのような仕組みですか。
A
亡くなった後に特定の人へ財産を承継することを「相続」、生きている間に贈与することを「生前贈与」と言います。また生前贈与を行う人を贈与者、受け取る人を受贈者と呼びます。
生前贈与は相続税の軽減を期待して検討する方が多いかもしれません。ただし、贈与を始めた日から3年以内に贈与者が亡くなった場合、生前贈与分が相続税の課税対象となります。またそれ以前から生前贈与を行っていた場合でも、贈与税の対象になる場合があるので注意が必要です。
贈与税、相続税はそれぞれ事前に試算できます。独自の特例や控除も設けられているので、専門家へ問い合わせてください。
子世代
[Q1]親と相続の話をしたいのですが、どのタイミングで切り出すとよいですか。
A
子どもから親へ、突然相続の話を切り出すことは難しいでしょう。大切なのは、日頃から親子間でコミュニケーションを取り、財産について話題にすることです。例えば不動産の場合、購入した経緯やこれまで受け継いできた思いについて親に聞いてみてください。そうした話の積み重ねから自然と相続の話につながっていくでしょう。
また最近では、自身の終末に関する希望などを手軽に書き留められるエンディングノートのアプリもあります。中には、動画や音声、画像をアップロードしてアルバムを作り、家族に同じアプリで共有できる機能があるものも。思い出の写真などを一緒に見ることで、相続の話をするきっかけになります。親世代にとっても気軽に終活の準備ができるメリットがあるので、勧めてみてはいかがでしょう。
[健康編]聴力の衰えを感じたらチェック 補聴器の選び方 Q&A
「呼び掛けたのに返事をしない」「テレビの音量が大きくなっている」など、久しぶりに会った両親の変化に気付いたことはありませんか。両親の聴力の衰えを感じたら、補聴器の利用を勧めてみてはいかがでしょうか。補聴器の選び方などについて専門店に聞きました。
快適に使うため慣らし期間必要
聴力は30代の頃から徐々に衰えていくといわれます。特に高音が聞き取りにくくなり、自覚しづらいのが特徴です。
まずは、下のチェックリストで自分の聴力の状態を確認しましょう。「会話をしている時に聞き返す」「聞き間違いが多い」などの項目に該当しませんか。結果に応じて耳鼻咽喉科や補聴器専門店に相談してください。補聴器を勧められたら、上手に使うポイントをしっかり確認しましょう。
メガネの大宝堂で補聴器販売を担当する上杉和大さん(上通本店・補聴器フロア長)は「快適に使えるようになるには1〜2カ月間の慣らし期間が必要です」と話します。着脱の操作の練習をすることや、聞こえの程度に合わせて音域ごとに調整してもらうことも大切です。
慣れてくると、周囲との会話をスムーズに楽しめます。補聴器を活用してセカンドライフをよりアクティブに楽しみましょう。
教えてくれた人
メガネの大宝堂 上通本店 4階補聴器フロア長
上杉 和大さん
聞こえの相談は無料です。密を避けるため、事前予約をお願いします。
聴力のチェックリスト
□会話をしている時に聞き返す
□後ろから呼び掛けられても気付かないことがある
□聞き間違いが多い
□話し声が大きいと言われる
□見えないところからの車の接近に気付かない
□体温計などの電子音が聞こえない
□耳鳴りがある
0個…現在の聞こえに問題はなさそうです
1~2個…実生活で困り事があれば、聴力検査を受けましょう
3~4個…補聴器専門店や耳鼻咽喉科に相談を
5個以上…早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう
参考:一般社団法人日本補聴器販売店協会
[Q1]補聴器の特長は?
[A]聴力に合わせ調整可能
補聴器は、聴力に合わせて足りない音を大きくする「管理医療機器」です。一人一人の聞こえに合わせて調整して使用します。集音器は周囲に聞こえる音を集め、全ての音を大きくする機器です。聴力に合わせて調整ができないため大きな音を聞き続けることになり、健康を害する可能性もあります。
[Q2]補聴器に種類はあるの?
[A]「耳かけ」「耳穴」の2種類
耳かけ式
補聴器本体を耳の後ろにかけるタイプ。耳穴をふさがないので、外部の音をより自然に聞くことができます。着脱しやすく目立たないため補聴器使用者の約8割が利用しています。メガネやマスクなどの併用がしづらい場合もあります。
耳穴式
耳穴の中に収めるタイプ。耳の形状と聞こえの程度に合わせて作るオーダーメードが一般的です。メガネや帽子、マスクと併用しても邪魔にならないのがメリットの一つ。ただし聴力の程度によっては向かない場合もあります。
[Q3]補聴器の「慣らし期間」は?
[A]1〜2ヶ月必要
補聴器を着けると、それまで聞こえていなかった雑音も聞こえるようになります。それが自然に感じるまで1〜2カ月間のリハビリ期間が必要です。1日1〜2時間程度から始め、最終的に終日使えるよう、徐々に補聴器を着ける時間を延ばしていきます。
[Q4]どこで購入すればいい?
[A]専門店がお勧め
補聴器は精密機械です。定期的なクリーニングやメンテナンス、一人一人の聞こえの状態に合わせた調整が必要です。アフターケアまでしっかり見てもらえる認定補聴器専門店がお勧めです。