【子ども夏休み相談室】捕まえた昆虫(生き物)を家で飼う方法は?
夏といえば、昆虫(生き物)採集を楽しみにしているお子さんも多いでしょう。でも、捕まえてきたものをどうやって飼えばいいのか分からない、ということはありませんか?
読者スタッフが、昆虫を中心に、身近にいる生き物を家で飼育する方法を専門家にレクチャーしてもらいました。
※2020年8月14日「くまにちすぱいす」掲載
※2023年7月19日更新
カブトムシ、コオロギ、タナゴ類・金魚の飼育にチャレンジ!
動物の生態に詳しい熊本博物館学芸員の清水稔さんに、生き物を家で飼う場合のポイントなどを聞きました。併せて、初心者でも飼いやすいといわれるカブトムシ、コオロギ、タナゴ類・金魚の基本的な飼育法も紹介します。
教えてくれた人
熊本博物館 学芸員(動物)
清水 稔さん
profile
大学在学中はアフリカ大地溝帯のタンガニイカ湖に生息する魚類を研究。博物館勤務の傍ら、県希少野生動植物検討委員会委員(魚類担当)や熊本大学非常勤講師なども務める。
店舗情報
住所 | 熊本市中央区古京町3-2 |
TEL | 096-324-3500 |
店舗ホームページ | https://kumamoto-city-museum.jp/ |
営業時間 | 開館時間/9時〜17時(入館は16時30分まで) |
休業日 | 月曜(祝日の場合は翌日)、12/29〜1/3、保守点検期間など |
料金 | 一般400円、高校・大学生300円、中学生以下200円 ※団体割引(30名以上)、年間入場券あり ※幼児、市内小・中学生は無料(名札か生徒手帳所持者)、障害者手帳または65歳以上の熊本市民で証明書をお持ちの方の入場料は無料 |
プラネタリウム観覧料 | 一般200円、高校・大学生150円、中学生以下100円 ※団体割引(30名以上)あり |
駐車場 | 専用駐車場はありません。近隣の三の丸駐車場(有料)などをご利用ください |
飼うと決めたら最後まで責任を
清水さんは生き物を飼育する心構えとして「飼うと決めたら最後まで責任を持ってお世話しましょう」とアドバイス。「飼えなくなったからといってむやみに外に放してはダメ。周囲の生態系に悪影響を及ぼす可能性があります」と注意を促しました。続いて、家で飼いやすい生き物や具体的な飼育法について紹介しました。
読者スタッフ親子は、身の回りの生き物の生態や習性など、清水さんの話に興味深そうに耳を傾け、「餌は何を与えれば?」「飼育ケースの大きさは?」「触ると危険な生き物は?」などと盛んに質問していました。
※撮影のためマスクを外しています
カブトムシの飼い方
「昆虫の王様」とも呼ばれ、人気のカブトムシ。成虫の自然界での寿命はわずか1~2カ月と考えられていますが、環境の良い飼育下だと、3カ月ほど生きることもあるそうです。オスの成虫を観賞用として飼育する方法を紹介します。
飼育に適した環境
直射日光が当たらない、薄暗くて涼しい場所が最適。適温は28度前後。気温が高すぎるとへばって死んでしまうので、温度管理に気を付けましょう。
飼育ケース
幅25cm×奥行き15cm×高さ15cm以上。大きければ大きいほど◎。オス同士はけんかをするため、1つの飼育ケースに対して1匹の飼育が基本です。
木くず、土
捕まえた場所で木くずや土も採取を。天日干しした後、水で湿らせ、約10㎝の厚みに敷き詰めましょう。シイタケのホダ木や市販の昆虫用腐葉土、昆虫マットでも代用可。土の表面が乾いてきたら、霧吹きなどで加水してください。
餌
糖分とタンパク質が豊富なバナナやリンゴがお薦め。スイカやキュウリなど水分が多い野菜類は、カブトムシがおなかをこわして早死にの原因になるのでNG。昆虫ゼリーでも代用可。
止まり木
クヌギやコナラ、クリなどの広葉樹がお薦め。カブトムシはひっくり返ってしまうと自力では起き上がれず、弱って死んでしまうことも。止まり木は起き上がるときの足掛かりになるため、複数入れておきましょう。
気を付けること
しがみついたカブトムシを無理に剝がすと足先がちぎれることがあります。ストレスを軽減するためにも、お尻をつついて自ら移動させるのがよいでしょう。
コオロギの飼い方
美しい鳴き声を楽しめるコオロギ。鳴くのはオスだけですが、メスと一緒に飼育するとオスの鳴き声が良くなるといわれます。うまく飼育すれば、11月ごろまで生きているそうです。
飼育に適した環境
直射日光が当たらない薄暗い場所に置きましょう。適温は20~30度くらい。
土
捕まえてきた場所で土も採取し、天日干しした後、水で湿らせ、約3㎝の厚みに敷き詰めましょう。乾燥に弱いので、表面が乾いてきたら、霧吹きなどで適度に湿らせます。土はキッチンペーパーでも代用できます。
飼育ケース
幅20cm×奥行き15cm×高さ15cm以上がお薦め。飼育ケースが狭いとメスがオスを食べてしまうことがあるので注意を。
隠れ家
隠れやすい木の板やトイレットペーパーの芯、紙製の卵パックなどがお薦め。
餌
ナスやキュウリなどの野菜くず、動物性タンパク質が豊富なイリコやかつお節などがお薦め。金魚のエサでも代用可。餌は土に触れると腐れやすいので、串刺しにして立てるか小皿に載せましょう。
飲み水
ペットボトルのキャップ(水入れとして使えて便利)に水を注ぎ、飼育ケースの中に入れておきましょう。
気を付けること
共食いを防ぐため、動物質の餌を十分に与えること。また、餌用コオロギは外来種のため、外に逃がすと生態系に悪影響を与えることも。最後まで責任を持って飼いましょう。
タナゴ類・金魚の飼い方
繁殖期のオスに見られる虹色の婚姻色が美しいタナゴ。金魚と同様、常温で簡単に飼うことができ、幅60cmの水槽に対して15~20匹程度飼育できます。
飼育に適した環境
直射日光に当たらない涼しい場所に設置しましょう。水の適温は25度前後。
水槽
幅60cm×奥行き30cm×高さ30cm以上。飼育し始める前日までに水槽に水を満たし、魚を入れずにろ過装置を稼働させてバクテリアを自然発生させ、暮らしやすい環境を整えておきましょう。
ろ過装置
フィルター内にすむバクテリアが、餌の食べ残しやふんから出るアンモニアを分解し、水を浄化してくれます。洗いやすく酸素濃度を維持しやすい、上部ろ過装置がお薦め。
飼育水
水道水を一晩以上くみ置きし、カルキが抜けたものを使用。飼育開始後は2週間に1回を目安に水槽の3分の1の水をくみ取り、カルキが抜けた水を足します。
砂利
砂利の本体や隙間にバクテリアが付き、水を浄化してくれます。お薦めは、直径約5mm粒の「大磯」や「珪砂(けいしゃ)」。砂利は水槽のガラス底面が反射するのを防ぐのにも役立ち、魚をストレスから守ります。
水草
魚の排せつ物を取り込み、水を浄化してくれます。入手しやすく根付きやすいオオカナダモがお薦め。金魚の餌にもなります。
餌
川魚用の人工飼料で問題なく飼育できます。5分以内で食べ切れる量を目安に。残った餌は水を腐らせる原因になるため「ちょっと少ないかな」と思う程度で十分です。
気を付けること
魚は水質の変化に弱いので、水槽に入れる前にはきちんと水合わせ※を行いましょう。
家で飼いやすい昆虫・小動物は?
生息環境 再現しやすいものを
初心者が飼育する場合は、生息している環境を再現しやすい生き物を選ぶようにしましょう。餌を調達しやすく、丈夫なものがお薦めです。
例えば昆虫では、カマキリやオサムシなど肉食の虫は飢えに強く、飼いやすいでしょう。魚だとメダカやフナは照明やヒーターなどの装備がいらず、タナゴや金魚と同じ方法で飼育できます。またヤモリは、は虫類の中で唯一、紫外線に当てる必要がなく、日光浴をさせたり紫外線ライトを準備したりしなくても飼うことができます。
毒を持った生き物は危険なので、飼育するのは避けてください。
これだけは守って!
生き物は同じ種類であっても生息する場所によって体の遺伝情報が異なります。自然に返すときは、周囲の生態系を壊さないよう、必ず捕まえてきた場所で放しましょう。
教えて!先生
読者スタッフ親子が、生き物の飼育に関する素朴な疑問を清水学芸員に投げ掛けました。
Q. 飼っていた生き物が死んでしまったら、どうすれば?
A.
標本にするか、土に埋めて自然に返してあげましょう。
Q. 虫を飼う場合、土を交換する目安は?
A.
臭いやカビを見つけたら、その部分だけをすぐに取り除きましょう。
Q. お店で購入した生き物の扱いで気を付けることは?
A.
ペットショップなどで購入した生き物はどこで生まれ育ったかが分からないので、安易に野外に放すことはやめましょう。最後まで責任を持ってお世話してください。