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卒業や入学‥巣立ちの春 若者の力を信じたい【となりのあの子Web版 Vol.25】

親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

新年度になりました。トナリビトでも、つながっている若者たちの多くが入学、卒業、入社と、いろんな人生の節目を迎えました。

私も先月、ある若者の卒業式に出席しました。実の親が卒業式に出席できない事情があるその子から、「実は卒業式に来てほしいんだ」と言われたのは卒業式前日。「もちろん、行くよ!」と返事をすると、ほっとした笑顔を浮かべていました。

当日は他の保護者に交じり、どこに座っているか分からない若者を探してキョロキョロしたり、写真撮影スポットを争奪する保護者にもまれながらどうにか若者をカメラに収めたり。若者と目が合って保護者席から大きく手を振ると、照れくさそうな笑顔で手を振り返してくれました。

「あぁ、来てよかった。今日この子が一人じゃなくてよかった」と私もほっとしました。ここ数年、コロナ禍で参加ができなかったケースも多い中、無事に人生の節目に立ち会えてとてもうれしかったです。

同時に、「大丈夫かな」「うまくやっていけるかな」と、新しいステージに進んでいくその子のこれからを心配する気持ちもありました。でも自分が20歳だったときを思い返してみると、「私自身はすっかり大人のつもりだったなぁ」と思います。「未熟なりにいろんなことをやらかし、そこから学び、成長してきたなぁ」と。そしてそこには、自分のことを信じてくれる人の存在が常にありました。

子どもと大人のはざまにいる若者たちを見ていると、つい先回りして心配をしたり、道をそれないようにと手を出したくなります。

特に親を頼れない若者たちの場合、一度の失敗や挫折が彼らの人生を大きく変えてしまうこともしばしば。「ちょっとの失敗はいいけど、頼むから取り返しのつかないことにならないようにうまくやってほしい」というのが大人の正直な気持ちかもしれません。

そんな心配する気持ちや不安が先立ち、どうにか若者たちを失敗させないようにと、彼らの行く道を石橋のようにたたいてたたいて…。気が付けばガチガチに固めてしまうこともあります。

でも若者たちに必要なのは、自分の持っている力を信じてくれる大人がいること。そしてその「信じる」とは、「失敗しないこと」を信じるのではなくて、「失敗してもまた立ち上がれること」を信じてくれる、ということです。新しい1年も、若者たちの持つ力を信じて、必要な支えになっていけたらと思います。


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

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この記事を書いた人

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。

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